散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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ミラクル艦長(P助)   (2007/03/04)
「艦長! 残念ながら我が軍の敗北のようです!! 早くこの宙域を脱出せねば!!」
 オペレーターの悲痛な叫び声が響く。
 艦に乗り合わせているもの、いや同盟軍すべての者の顔には悲壮感が浮かんでいることだろう。
「総員退却準備だ。 宇宙ブースター用意!」

「宇宙ブースター用意!!」
「メインエンジン、臨界始動!」
「宇宙エネルギー充填率80……90……100%!!」
 クルー達は、生き延びるために慌ただしく動き始める。

「艦長! いつでもいけます!」
「よし、宇宙ブースター点火!! 2時の方角に向かい全速前進!!!」

 あちこちに傷を負った戦艦は、けたたましい炎を吹き出しながら徐々に加速していく。

「か、艦長!!」
 オペレーターが悲鳴に近い声をあげる。
「どうした。」
 艦長は冷静だった。
 上に立つものとして、非常時こそ冷静さを保つことが重要だということを彼は知っていた。

「2時の方角は敵の大本陣ですが……」




 空気は凍り付いた。
 ここまでだ。
 もうおしまいだ。
 なにやってんだよ。
 こんな大事なとこで間違えんじゃねえよ。
 あの艦長、前からいつかやると思ってたんだよ。
 そんな空気だった。

 艦長は才能があるとは言い難かったが、空気を読む能力はあった。

 うわ……やっちまったよ……。この空気、まじ痛ぇ……。
 まあいいか。どうせもうおしまいだ。この宙域は包囲されている。逃げられっこなかったさ。
 お前らの気持ちは痛いほどわかるが、どうせ死ぬのさ。

 
 1万5000艇の敵本陣の真っ只中に、艦艇は流星のように突っ込んでいく。
 しかし、砲撃を受け灰塵と化すはずの艦艇は、そのまま猛スピードで敵本陣を駆け抜けていく。
 
「艦長……! 敵が……攻撃をしてきません! 攻撃艇も発進する気配がありません!」
 1万5000艇は沈黙を保っていた。
 微動だにせず、艦艇が突っ込んできた先に集中しているようだ。

 敵軍の元帥は優秀だった。
 この艦長よりも数倍。いや数十倍。

「これは罠だ。」
 1隻の艦艇が突っ込んでくるのを察知した瞬間に、全艦隊に対して発せられた言葉がそれだった。
 帝国軍全軍はその元帥を信頼していた。信奉していた。
 その発言に対し意を唱えるものは誰一人居なかった。
 突撃してくる艦艇に、集中砲火を浴びせた瞬間。おそらく同盟軍の最後の抵抗は始まるはずだ。
 有能な元帥の脳裏には、まざまざとその映像が浮かんでいた。
「全軍に告ぐ。敵艦隊が突撃してきた方向に向かい警戒態勢を取れ!」
 しかし、それが元帥の最後の言葉となる。


「艦長……敵本陣を抜けました。」

 艦内には狂気にも近い喜びの声が渦巻いた。

「奇跡だ!! これで生き延びられるぞ!!」
 艦長も喜びに打ち震えていた。
 しかし生を得た次の瞬間、あまり有能ではない艦長の脳裏には欲望が渦巻いていた。

「諸君」
 落ち着きを取り戻した艦長の低く渋い声が響く。
 能力とは裏腹に、彼は説得力のある良い声を持っていた。
 あまり有能でない彼が艦長になれたのは、先述の空気を読む力とその説得力のある声によると言っても過言ではない。

 ブリッジのクルーたちは一瞬にして静まり返り、艦長を見つめた。
「我々は今、敵本陣の背後に居る。そして敵艦隊はこちらに目もくれていない。おそらく高速で通り過ぎた我々に気づかなかったのだろう! これは究極の好機である!! この機会を逃していつ手柄を立てられようか!」
 手を振りかざし独裁者のように檄を飛ばした。

 一瞬の静寂が訪れる。
 その後。
 誰かが、ポツリと「そうだ。」と呟いた。

「兄貴の乗っていた艦は、あいつらに落とされたんだ!」
「……俺の親友もだ!!」
「そうだ! 今俺たちがやらずに誰が敵を討つんだ!!」

 小さな流れがいくつも集まり、やがて大きな流れとなり渦を巻いた。
 艦内には熱い鬨の声が響き渡る。
 そしてそれを満足そうに見つめる艦長の姿がそこにあった。

「主砲! 発射準備! エネルギー充填始めろ!!」
 意気揚々と艦長が指示する。
「はいっ!」
 そして使命感に満ちたクルーたちが答える。

「主砲、エネルギー充填120%! いけます!」
「艦長! ご命令を!!」

「失われた同胞たちのために(というか自分の栄光のために)!! 撃てぇ!!!」
 艦長は掲げた手を敵艦隊に向かって振り下ろした。

 一条の光が敵艦隊の後ろから襲い掛かった。
 艦隊の中央にあったワインレッドの艦艇は直撃を受け、凄まじい爆発と共に砕け散った。
 周りの艦艇数隻も、巻き添えになり爆発していく。

「艦長!!! やりました!! ど、どうやら敵旗艦に命中したようです!」

 なんということだろうか。1隻落とせれば良いと思ってのことが、敵の中枢を撃ちぬいてしまうとは。
 これは2階級、いや3階級特進も夢ではない。
 提督……いやもしかしたら元帥にだって……

『元帥!! 救国の元帥!!』
『キャー! こっちに手を振ってくださったわ!!』
『俺もいつかあの人みたいになるんだ……!』

 さまざまな妄想が彼の頭をよぎっていく。

「艦長……、艦長!!!」
 歓喜の中、一人青ざめた哨戒役のクルーが艦長に呼びかけた。

「ど、どうした。」
 妄想の中で国家元首にまで上り詰めていた艦長は、不意に現実に引き戻され、やや不機嫌そうに答える。

「敵艦隊の残存部隊がこちらへ向け主砲を構えています……。」




 艦内の空気は再び凍りついた。
 砲撃で撃墜された艦隊はせいぜい十数隻。
 1万5000-十数隻は1万4980隻余り。
 元帥を失ったとはいえ、優秀な帝国軍たちだ。
 その瞳は心酔する元帥を殺された憎しみに燃えている。

 考えてなかった……!
 目の前のチャンスに飛びつく余り、その後に訪れる事象を予測しきれていなかった。
 いや、予測しようとすらしていなかった。

「う、宇宙ブースターを起動しろ! は、ははは反転し、じぇんしょくりだちゅしろ!!」
 気が動転し呂律も回らない。

「艦長……宇宙ブースターは先ほど使用してしまったので、後1時間は使えません……」
 オペレーターは力なく艦長の案を否定した。

 そう、死は再び目前に迫っていた。
 彼は救国の英雄として祭られるだろう。しかしそれは死人としてに他ならない。

 そうじゃない、俺はそんなことを望んでいるんじゃないんだ!
 死にたくない!!!

 艦長がブリッジを見渡せば、そこにはやはり淀んだ空気が広がる。
 あの艦長の口車にのったばかりに。
 だからやめておけと言ったのに。
 こんな上手くいくはずがないと思っていた。
 ああ、こんなことなら別の艦にしてもらえば良かった。


 お前らだってあんなに歓喜の声をあげたじゃないか!
 艦長はそう言いたくなるのをじっと堪えて、目を閉じた。
 もうおしまいだ。八方塞りだ。どこからか隕石が飛んできてて、あの艦隊にぶち当たってしまうとかでもない限り、助からない……。



「か、艦長!! 1時の方角より高速飛行物体接近!!!」
 オペレーターが叫んだ。
「え?」
 思わず間抜けな声を出してしまう。

「い、隕石……いやあれは隕石なんてもんじゃない! 小惑星クラスです! このコースを辿ると……敵艦隊に直撃します!!!」
 艦長はもはや声がでなかった。
 恐怖でチビってすらいた。

「ぜ、全速後退……」
 かすかにそれを搾り出すのが精一杯だった……。

 主砲を充填していた敵艦隊に小惑星が突っ込む。
 不意をつかれた敵艦隊は、小惑星の激突を受け次々と粉々になっていく。
 閃光と爆発が入り乱れ、数万、数十万の命の炎が途絶えていく様はどんな光景よりも美しかった。


「奇跡だ……」
「助かった……」
「ミラクル……ミラクル艦長!!!!」
「ミラクル艦長!!! ミラクル艦長!!!!!」

 呆然としていた艦長は、次第にことの重大さと自分の戦果と自分の栄光に意識を取り戻していく。
 しとどに濡れたズボンを隠しながら右手を挙げて答えると、歓喜の声は最高潮に達した。
 両軍通してただ1機、生還することとなった奇跡の艦艇はこうして帰途についた。


「艦長……」
 クルーの一人が甲板に出ているミラクル艦長に声をかけた。
 
 主星まであと少し。
 艦艇は優雅に宇宙空間を航行していた。

「艦長。いくらなんでも宇宙空間でタバコを吸うなんて……。第一宇宙服もつけてないじゃないですか……」
 心配するクルーにミラクル艦長はさわやかに笑って答えた。
「大丈夫だよ。ここには宇宙酸素と宇宙窒素の混合物を絶えず噴出している。」
 余裕のある笑みと発言に、そのクルーは改めてミラクル艦長への忠誠を誓っていた。
「しかしもう一人のお体ではないのです。あなたは同盟軍の至宝なのですよ。もう少し気を使って頂かねば……。」
 信奉するミラクル艦長へ進言することは気が引ける行為だが、彼のため、ひいては同盟軍全体の為を思えば苦ではない。

「わかったよ。これを吸い終えたら戻ろう。」
 熱意に負けたミラクル艦長は、穏やかにそう約束した。
 笑顔ではいっ!と答えたクルーは、足取り軽く艦内へと戻っていった。

 数時間前のあの戦闘が夢のようだ。
 逃げようとした自分、部下に苛立ちを覚えた自分、死の寸前を味わった自分……。
 すべてが遠い昔のことのように感じる。

 ミラクル提督は、もう一口すうっと深くタバコを吸い、軽く目をとじ……

ピピピピーーーッ!!!
 
 歯切れのいい笛の音が響いた。
 はっと眼を向けるとその方向には、白と黒に色分けされた宇宙パトロール艦と宇宙婦人警官がいた。

「ちょっと!! ここは喫煙禁止区域ですよ!!」
 宇宙婦人警官は、笛を片手にミラクル艦長を指差した。

「え……あ……」
 笛の音とは正反対の歯切れの悪い声を上げるミラクル提督。

「宇宙軽犯罪法違反の現行犯で逮捕します! 宇宙刑法第2039条第98項に照らすと……懲役30年です!」
 ミラクル艦長の両手に宇宙手錠をかける宇宙婦人警官。
 だが、彼は今までとは違う。激戦をくぐり抜けたミラクル艦長だ。

 きっと、この場に軍の偉い人が通りがかり、「彼は今回の戦いの第一功労者だ。恩赦を与えたまえ」とか言って許してくれるはず。
 だが、今回の戦に関与した偉い軍人達は、先の戦闘で全員死んでしまっている。

 いや、また隕石が飛んできて、この宇宙婦人警官を直撃して何もなかったことになるはずだ。
 しかし彼方を見回しても隕石が飛んでくる気配はない。

 い、いや何かある。つかまっても優秀な弁護士がついて無罪を立証できるはず。
 現行犯で捕まったものの無罪を果たして立証できるだろうか。

 い、いや……私はミラクル艦長だ。
 きっと……きっと……。

 そうこうしているうちに宇宙レッカーが艦艇を宇宙警察星に向かいレッカー移動していく。
 故郷の星は目の前だ。
 栄光の凱旋帰星まであと数時間なのだ。
 そんな馬鹿なことがあろうか。あってたまるかーーーーーーー。

 艦長の叫び声は、真空の宇宙空間では響くはずもなかった。




 だが、ミラクル艦長はすぐに自分のミラクルに気づかされる。
 3日後、彼の星は異性人の攻撃を受け、数時間で木っ端微塵にされてしまったのだから。




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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学




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はじめまして。みんなde創る物語の管理人ミラノです。このブログは内容が濃くてとてもおもしろいです^^自分のブログもこんな風になれたらいいなぁ(笑)応援よろしくお願いします!

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【2007/03/09 19:51】 URL | #-


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