散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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文体練習おまけ   (2007/01/14)
文体練習』自注

       と

本家『文体練習』との比較

      です。

 いずれも本編脱稿後に書いてそのままお蔵入りにしていましたが、今さらながら掲載します。





 奇書として名高いレーモン・クノー著『文体練習』をヨシヒコ・ワダ(オマージュ)した拙作『文体練習』。各文体の製作秘話をここに書き留めておきます。

(1)礎
 当初は「メモ」という題名でしたが、「(4)目次」の折り句(*)に対応させるために改題しました。
 「(2)まえがき」「(3)凡例」「(4)目次」の順は崩したくない──折り句の冒頭4音は「○まはも」とせざるを得ない。ならば『今昔物語』の出だし(「今は昔」)しかないなと思い、「い」音から始まる題名として「いしずえ」を選びました。また、建物を築く際の「定礎」の意味も込めました。
* 「(99)あとがき」に詳しい

(2)まえがき
 6月10日から書き始めたのは本当ですが、「オックスフォードにて」っていうのはウソです。

(3)凡例
 辞書や古典書籍の冒頭に配される「凡例」のパロディ。「編集には以下の基準を採用する」とありますが、相当違反しています。
<その他特記事項>
・道行く御老体が話掛て來た→「体」の正字は「體」。「來」の新字は「来」
・ポコペン→中国語「不彀本」。意味は「ダメだこりゃ」
・イカラメチョニをバレミヌホピした→ハナモゲラ言語

(4)目次
 「(99)あとがき」にも記した通り、折り句の技法を採用してあります。
 この「目次」こそが拙作『文体練習』の絶対的な基準。プリントアウトして手元に置き、書き終えた文体にチェックを入れながら執筆作業は進められました。
 一時「ポルノ」「ポエム」を「官能小説」「詩」に改める計画をするなど、制作の進捗度と併行して何度も書き換えられました。この文体には途方もないほどの労力が注がれています。

(5)お嬢様
 明治大正ごろ、上流階級のご令嬢が用いた特殊な言葉づかい。直接的な批判・悪口などを避ける婉曲表現が特徴。

(6)武者
 武者言葉の特徴は、受け身表現を使役表現にすること(例:見舞われた→見舞わせた)。
<語義解説>
・鷹狩り→武士の間で流行したスポーツ。鷹匠の文化として今も残る
・固より→もとより
・鷹場(たかば)→鷹狩りの催される原っぱ
・鷹揚(おうよう)→小さなことにはくよくよせずおおらかなさま
・みつとせ→三年
・彼の爺→「かれのじじい」ではなく、「あのじじい」

(7)管理職
・部下を「チミ」と呼ぶ
・相手の同意を強要する→「な。な。」
・自分のダジャレに笑う

(8)小学生
・「それから」「思う」の頻用
・会話文でいちいち改行
・習っていない漢字を使ってはいけない(自分の名前は例外)
・教師から美談を強制させられる

(9)日記
 端的な記述、体言止めの頻用。

(10)いなかっぺ
・発音がなまっている(「し」を「す」と発音)
・ベーベー言葉(新撰組近藤勇が有名)

(11)浪花節
 フシ(メロディー)部分とタンカ(セリフ)部分の混在する話芸。五七調で進行。内容はお涙ちょうだい。
<語義解説>
・ホトヽギス→「結核」の比喩表現
・コウモリ→「こうもり傘」をこう呼ぶこともあります
・わっち→江戸弁
・刺青→読みは「ほりもの」。入れ墨

(12)関西弁
 一口に関西弁と言っても、大阪弁京都弁奈良弁などなど実に幅が広い。ここに掲げた文体は一部の地域を限定して書いたものではありません。

(13)DJ
<語義解説>
・チェックィア→Check it out(注目しろ)
・ドゥダハッソ→Do the hustle(張り切っていけ)
・シェイクユアヘッドアッダン→Shake your head up down(首を上下しろ)
・ジョンドウ→John Doe(実名不祥)。日本語の「名無しのゴンベエ」に相当

(14)スパイ
 スパイの通信は暗合を交えて行ないます。主人公のコードネーム『亀公』は、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』から命名しました。
<語義解説>
・いの字→田舎。文字言葉(シャクシをシャ文字と呼んだりする隠語)から着想
・WR→天気。Weather Reportから
・R→雨。Rainから
・トータス→この諜報部で使われている通信の合図らしい。意味は「陸亀」
・ブランカ→傘。映画「カサブランカ」から
・EE→風邪。由来は…忘れました(笑)
・OL→老人。OLDから
・M→男。Manから
・プロジェクトR→Return計画
・タートル→2年の間に暗合が変更されたらしい。意味は「海亀」
・ブランケット→傘泥棒。ブランカぬすっとの略か
・シンニョウ→通信(警察スラングとは無関係です)
・ニンベン→傍受(警察スラングとは無関係です)
・ユミヘン→強盗(警察スラングでは「ユミヘン」は強姦のことです)

(15)現代純文学
 雨を「天使の涙のようにきらきらと光る水滴」などと表現するキザな文体。

(16)SF
 タイムマシンによる倒時法。

(17)赤ちゃんことば
 擬音の多用。

(18)メタフィクション
 メタフィクションとは、“小説を批評する小説”のこと。従来の物語形式が改造・揶揄・破壊されます。

(19)新聞
 他の99篇は7月4日までに仕上がっていたのですが、この文体は7月9日に書きました。「ニュース」の文体と重ならないように工夫した──という事情もありますが、完成間近で気が抜けていたというのが真相です。
 なお、ここに挙げられた人物名は他の文体でも登場します。山木五十三は「(65)ビジネス文書」、永野光政は「(47)冗説法」と「(65)ビジネス文書」、菊西和孝は「(63)手紙」にそれぞれ再登場。

(20)ブリッコ
 いわゆるギャル文字。「あ・い・う・え・お・つ・や・ゆ・よ」を小文字で書いたり、「ん」を「ω」と表記したり、可能な限り文字の表記を異化するのが特徴。全部読めますかね…。

(21)教師
・諭すような口調(語尾が「ね」)
・一人称は「先生」(自分を先生呼ばわり)

(22)ポルノ
 官能小説・耽美小説で使われる語をちりばめましたが、内容自体は別にやらしくないのでご注意を。
<その他特記事項>
・主人公・麗紋は、職場結婚で久能姓となり、クノウ・レイモンとなります
・「張り方」とは、いわゆる「バイブ」「電動こけし」のことです
・「アンブレラを挿した」は「アンブレラを差した」の誤変換(わざと)

(23)中国人
 促音・濁音の欠落。「し」を「ち」と発音。語尾が「アル」。
 「唉呀」の読みは「アイヤー」です。

(24)ポエム
<難語の読み>
・古里の馨り→ふるさとのかおり
・叢雨→むらさめ
・高天原→たかまがはら。日本神話の天国
・枝垂るる→しだるる
・満艦飾→まんかんしょく
・邂逅→かいこう
・逆さ喇叭→さかさラッパ(我ながら陳腐な比喩表現です)
・腐し→くたし
・纏う→まとう

(25)注釈
 書籍の巻末近くにある「注釈」のパロディ。
<語義解説>
・pH→ペーハー。水素イオン指数。5.6以下が酸性雨
・民明書房→漫画『魁!男塾』において度々引用される架空の書肆
・笹池薬麻呂→「(100)解説」にも登場

(26)ダイジェスト
 「これまでのあらすじ」→「あらすじ」を経て、「ダイジェスト」という題名に落ち着きました。「(4)目次」のせいです。

(27)憲法
 日本国憲法のパロディ。意味不明な指示語「これ」が特徴
<以下、ネタ元の列記>
・第1章第1条→第1条「天皇の地位・国民主権」
・第1章第2条→第1条「天皇の地位・国民主権」
・第1章第3条→第4条「天皇の権能の限界」&「前文」&第36条「拷問及び残虐刑の禁止」
・第1章第4条→第9条「軍備及び交戦権の否認」
・第2章第1条→第15条「公務員の本質」
・第2章第2条→第20条「信教の自由」
・第2章第3条→第24条「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」
・第3章第1条→第100条「憲法施行期日」
・第3章第2条→第79条「最高裁判所の報酬」
・第3章第3条→第30条「納税の義務」
・第3章第4条→第9条「戦争の放棄」

(28)童話
 「むかしむかし」で始まり「めでたしめでたし」で終わるのは、厳密には昔話の文法です。すみません。

(29)モンタージュ
 文豪の文章から短文を適宜抜き出し、恣意的に繋ぎ合わせました。素材はそのまま使用し、一字一句たりとて改変していません。(旧字旧かな遣いの直しは除く)

(30)緒実
 「(99)あとがき」参照のこと。

(31)あいうえお作文
 あめが…。いなか…。うかつ…。ええい…。おれは…。と、各文が五十音順に並んでいます。
 「ルーデサック」とはコンドームのことです。

(32)吾輩
 夏目漱石『吾輩は猫である』の文体。「幾條の銀箭が斜めに走る」は『草枕』から。「泥棒隠士」は『吾輩は猫である』での泥棒に対する尊称。

(33)宣伝
 元々は「広告」という題名でしたが、「(4)目次」のせいでこの題に。
 今読み返すとこの文体の冒頭は謎ですね。必要あったんだろうか。リードコピーか何かのつもりだったのかな…(失念)。ただ単に各種社会の名前を列挙したかっただけかも知れません。

(34)年表
 「(99)あとがき」にも書きましたが、世界史と対応しています。以下、そのネタ元。
518 レオ朝、滅ぶ (ビザンツ帝国)
656 アリー即位 (イスラム帝国)
452 フン族の侵攻 (西ローマ帝国)
755 ピピンの寄進 (ローマ教会) 
806 白居易『長恨歌』を著す (唐)
812 アーヘン条約締結 (フランク王国)
816 検非違使の設置 (日本)
838 遣唐使の派遣 (日本)
901 菅原道真左遷 (日本)
907 延喜の治 (日本)
935 承平・天慶の乱 (日本)
951 オットー1世第一次イタリア遠征 (ザクセン家)
957 菅原文時、「封事三箇条」を提出 (日本)
958 乾元大宝鋳造 (日本)
1077 カノッサの屈辱事件 (神聖ローマ帝国)
1549 キリスト教伝来 (日本)
1800 ナポレオン第二次イタリア遠征 (フランス王国)
1801 キリスト教大迫害 (李氏朝鮮)
1804 ロシア・ペルシャ戦争
 ※ 755の「肅白臺」は宿泊代の意味です。
 ※ カノッサの屈辱事件、「10時77分」だと時刻にならないので77分を1時間17分にして「1117」と表記しました。

(35)演説
 軍国主義の熱に浮かされた党大会。乃公の読みは、「だいこう」とも読みますが、ここでは「おれ」。

(36)歌詞
 ポップミュージックのチンケな歌詞のパロディです。1番2番3番それぞれ同じ小節で韻を踏むのが特徴。(例:メロディー部分3小節目はそれぞれ「Suddenly」「Oh Baby」「Memory」)

(37)ラップ
 ダジャレとも言えるほどの過剰な脚韻が特徴。
<その他特記事項>
 この文体における主人公・「魚座(さかなざ)あがた」は、「(41)恋文」「(42)ライナーノート」にも登場。なお、ミュージシャンのあがた森魚さんとは一切関係ございません。
 RATには「ねずみ」という意味のほか、「密告者」という意味もあります。「告げ口ねずみ」というフレーズは、単に「くちづけ小僧」と対応させただけではありません。
 脚韻の他にも、「ねずみ」「寝ずに」「盗み」など、似た響きを持つ語同士が散りばめられています。

(38)コギャル
 長音の頻用。マジ、チョー、ムカツク、しぃ~。漢字はあまり知らない。

(39)後輩
 「です」を「っス」と言う。促音便の多用による歯切れの良い文句。

(40)反復型
 「反復型」とは、ほぼ同じ内容を二度繰り返す文章形式のこと。前段と後段に切れる。
 「天気雨」と「霖雨(長々と何日も降る雨)」との印象の違いを書き綴っていますが、これはいわゆる「二者対照型」(前者と後者を比較する文章形式)であり、厳密には「反復型」ではありません。
 この文章もまた、「(4)目次」の犠牲者です。黙祷。

(41)恋文
 このラヴレターの差出人「マー」は、「(42)ライナーノート」に登場する浜坂真綾と同一人物。受取人「あがちゃん」は、「(37)ラップ」「(42)ライナーノート」に登場する魚座あがたと同一人物。

(42)ライナーノート
 音楽レコードに付属してくる解説文のパロディーです。
<その他特記事項>
 ぱわーばらだ、はまさかまあや、さかなざあがた。これを一旦バラバラにしてから整列させると、「ああかかがささざただなはばぱままやらわ」。全部ア段の音です。
 1.Umbrella & Rainy Dayは「(36)歌詞」です。
 8.ラヴ・イズ・ラット・ラッド(恋の鼠小僧)は洋楽の邦題で乱用される「恋のナニナニ」をヒントに思い付いたバカタイトルであり、このタイトルにインスピレーションを受けて出来上がったのが「(37)ラップ」です。
 10.君が好きっ(ボーナス・トラック)は「(41)恋文」の追伸と呼応しています。

(43)英漢字
 「(1)礎」と完全に対応。
 以下原文。
IN A CAR。 TOT THEN NO ARMEN。KEY NIECES A ROOK。
MEETING LOADING
「OH WHAT KIND HIT。
CURSE WAR HE KEY MASS YO」
CASHIER WAR CURLY RUE。
SO LET COLOR SUE NAME GO。
HEM CAP THROUGH TA MANY SIPHON。
CASHIER DRAW BOW TOE SICK A LA RAIL。

(44)ローマ字
 「(1)礎」と完全に対応。表記については石川啄木のローマ字日記に準拠しました。
 その昔、明治から昭和にかけて、「ローマ字運動」とかいうものが起こりました。日本語から漢字やカナを排除し、すべてアルファベットで記そうとする運動です。「タイプライターでは漢字やカナを打つことができない。文化面で欧米列強に遅れを取る」というのが彼らの主張でした。
 そのような事情ですから、このローマ字表記も立派に日本語の文体のひとつです。見て見ぬふりをしたい暗い歴史です。
(注意:以上の情報は、資料に当たらず、思い出しながら書いてるので確実性は保証しません)

(45)翻訳
 もはや「翻訳」とは呼べないほどの直訳ぶり。単なる単語の置き換えです。「old man」を「古い男」と訳しているあたりが我ながら最高。
 『新約聖書』日本語版のいくつかは、ここまで酷くないですが、これに近い文体です。

(46)黙説法
 物語論(ナラトロジー)の用語であり、物語を特殊な視点で表現する技法です。
 本来事前に報告しなければならない情報をわざと隠して物語を進めるやり方です。推理小説における「主人公=犯人」などがそれです。最後の最後で「今まで黙ってきたが、実は私が犯人だったんだ…」と告白するような手法です。この手を使った作品としては、アガサクリスティ『アクロイド殺人事件』やファミコンソフト『ポートピア連続殺人事件』が有名。

(47)冗説法
 「黙説法」と対を成す、変調叙法の一種。書かなくても良い、いらない情報を長々と書き連ねていく手法です。
 この手法で有名なのが、脱線に脱線を重ねる世界最高峰の奇書、ロレンス・スターン『紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見』です。全9巻の小説ですが、3巻の終わりになるまで主人公が生まれません(アホや)。
 なお、「(67)濃縮小説」「(99)あとがき」「(100)解説」も実はこのタイプです。

(48)実況
 スポーツの実況中継のパロディ。

(49)インタビュー
 記者会見のパロディ。テポドン発射直後の会見を観て着想しました。
 本来この位置には「井戸端会議」があったのですが、それを「マダム」と改題。それに伴って「Mash Up」を「モンタージュ」と改題。「ものづくし」を「擬古文」の中に併合しました。「(4)目次」の影響が、ここにも。

(50)ニュース
 ニュース番組のパロディ。逮捕された上道容疑者は「(13)DJ」でファックスを送ってきたラジオネーム「ジョンドウ」と同一人物。
 実況・インタビュー・ニュース・カメラアイ・リポートが近い位置に集まったのは幸いでした。

(51)回文
 上から読んでも下から読んでも同じ文章を「回文」といいます。

(52)三段論法
 「A=B。B=C。ゆえにA=C」という展開の文章形式。

(53)カメラアイ
 「外的焦点化」と呼ばれる手法。目に見える外面だけを活写し、登場人物の心の動き・経歴などの内面は描かない技法です。

(54)リポート
 テレビのリポート番組のパロディ。本来は「琉球語」を書くはずでしたが、面倒なので「TVリポート」を改題してこの位置に持ってきました。

(55)テスト
 国語試験のパロディ。

(56)西洋人
 日本語に不自由な外国人の口調。ひらがなをカタカナに、カタカナをひらがなにして書くのが常道。
 文中の「ぶらっく」とは「部落」のこと。誰だ、この外国人に変な言葉を吹き込んだのは。

(57)セクシー
 元は「女性」という題名で97番(現在は「重複」が収まっている)に座を占めていました。
 小説などでは往々にして女性の会話の語尾が「よ」「わ」「ね」になりますが、現実世界でこんなしゃべり方をしている女性は滅多にいません。おかまくらいです。

(58)落語
 オチのつまらないダメ落語を目指して書いたやっつけ仕事。本物の落語の滑稽な調子は出ていません。
 なお、登場人物の佐々木源三は「(63)手紙」にも登場。同様に中田権蔵も「(59)戯曲」に登場。

(59)戯曲
 小説よりはるかに昔から存在する由緒ある文学形式。芝居の台本です。ここではシェイクスピア時代の豪奢な文体を、少しバカバカしく誇張して書いています。

(60)兵語調
 谷崎潤一郎『文章読本』において、雅俗折衷体として定義されている四つの文体「講義体」「兵語体」「口上体」「会話体」のうちのひとつ。語尾が「であります」「でありました」となるのが特徴。

(61)双括型
 まとめ→本文→まとめの順に論旨が並ぶ文章の型。本文がサンドイッチされる。

(62)箴言
 短い文章で真理を端的に言い切る表現方法。ここに挙げられている文章は性善説についての隠喩です。

(63)手紙
 差出人・佐々木源三は「(58)落語」にも登場。受取人・菊西和孝は「(19)新聞」にも登場。

(64)批評
 これは作者の本音ですね。我ながら馬鹿馬鹿しい作品です。でも、好き。

(65)ビジネス文書
 手紙よりもさらに味気ない通信書がこのビジネス文書です。形骸化されたあいさつを盛り込んでおけばオッケーです。
 主人公の氏名・肩書きは、豊田商事事件の永野一男をモデルにしました。この永野光政の学生時代の姿が「(47)冗説法」の光政であり、成れの果てが「(19)新聞」の永野容疑者です。

(66)候文
 文語調の正式な手紙文。言文一致体が広まってからは徐々に廃れましたが、明治うまれの老人が改まって書く書簡はやはりこの形式でした。句読点がなく、ソーローソーローやたらとうるさい、いかめしい文体です。
──以下、読みやすく書き改めてみます──
 私は人跡稀(じんせき・まれ)な地で突発的な豪雨に襲われました。雨けむりの泡沫に身を湿らせながら歩きました。
 通りがかった老人が申しますには、「若い人。かぜを予防したいならばこの傘を使うといいですよ」と、みずからの傘を私に授けました。こうして私は雨具をたまわりまして無事ですのでご安心くださいませ。
 数年経ちました。私は傘返却の為、かの地を再訪しましたところ、老人より盗賊の嫌疑をこうむりました。
 →→ 大事是無候御休神被下度候(だいじこれなくそろあいだごきゅうしんくだされたくそうろう)の「被下度候」は漢文の書き下しです。

(67)濃縮小説
 「(99)あとがき」に書いた通り、J・G・バラードが創始した形式。作者にはそれ以上説明する資格がありません。
 第9章は葬式ですが、亡くなったのは溺れていた小林くんではなく泳ぎ達者の相手だったという、意味不明な展開。

(68)マダム
 元々は「井戸端会議」という題名だった文体。ザーマス言葉が耳につく、PTAのイヤなおばさん風な口調。発言の責任をうやむやにしつつ、噂話をどんどん悪い方へと巧みに導いていくのは実にあっぱれな技量です。ナイショ話なのにベラベラ吹聴しているのもいい。

(69)万葉仮名
 「(1)礎」と完全に対応。万葉集などに使われている、漢字によって音を表す表記法。数種類存在する万葉仮名のうち、のちに崩れてひらがなとなる字を選びました。

(70)2ちゃん語
 インターネット最大の掲示板サイト「2ちゃんねる」内で使用されるスラングです。2ちゃんねるでは日々新しい造語が産み出されているので、現在ではこれらの言葉は使われていないかも知れません。

(71)相撲取り
 取り組み後の力士は息が上がっていてまともにコメントが出来ないことがあります。
 かつて、こんな力士がいました。「今の相撲、いかがでしたか」「ハァーッ、ハァーッ…。そうっスねー」「うまく自分の体勢に持っていけましたか」「ハァーッ、ハァーッ…。そうっスねー」「次に向けて何かひとこと」「ハァーッ、ハァーッ…。そうっスねー」
 この会話は笑えます。しかし、激しい相撲を取った直後であり仕方がないのです。しかもそればかりでなく、取り組み後の関取はテレビカメラの前まで大急ぎで駆けつけなければならないからなおさら呼吸が荒くなります。全力疾走らしいですよ。
 そういった事情を鑑みても、この文体はあきらかに偏見ですね。失礼すぎるので今のうちに謝罪しておきます。
<その他特記事項>
 「地方巡業」「待ったなし」「どすこい」「すり足」「取的」「手刀」「金星」「ごっつぁん」「入幕」「仕切り直し」「ノコッタノコッタ」などの相撲用語のほか、「他人のフンドシで相撲を取る」をモジッた「他人の憤怒してカサを盗った」などが相撲らしさを演出。

(72)擬古文
 森鴎外『舞姫』で有名なニセ古文。その擬古文に、『枕草子』の名高い「ものづくし」をミックス。「汚名挽回・名誉返上」の語の「わろさ」には、清少納言もビックリだ。

(73)漢文
 日本人の大多数は「漢文って中国語じゃないの?」と思っているはずです。日本語ではないと思っています。そうして漢文が大嫌いです。私も同様です。
 しかし、悲しいかなこの「漢文」も日本語の一形式に組み込まれています。細々とではありますが、「日本漢文」なんていうジャンルもあるくらいです。なのでこれもやはり日本語の一部です。
 「こいつ、すらすら漢文が書けるのだな」と誤解されるかも知れませんが、そんなことはありません。書けません。代表的な文法や固有名詞などの“漢文らしさ”を適当に施しただけです。見る人が見れば噴飯物の漢文でしょうね。
<語義解説>
・楚=春秋戦国時代の大国
・會稽山=浙江省紹興市の南にある山
・沛然=雨が盛んに降る様子
・小子=若い人
・汝=おまえ
・疾=病気
・狗盗=こそどろ
 <書き下し文>
 楚人、會稽山に入る。雨は機を知らずしてたちまち降る。沛然の雨をもってすら、かつ惜しむを得ずして行く。
 老翁、道より来たりていわく、
「小子、汝、疾をうべし」 と。
 もって己の傘をあたう。
 明年、楚人、傘を返さむと欲し再び山をおとなう。翁は狂せり。すなわちこれを狗盗と呼ぶ。

(74)江戸弁
 江戸時代、おもに町人階級が使っていた方言。(のちに標準語として採用されたのは山の手のお上品な方言=東京弁でした)
 「(39)後輩」同様に促音が多く、俗に「べらんめぇ調」と称される気っぷのいい乱暴な言葉づかいが第一番の特徴ですが、他にも「ひ」を「し」と発音するのが有名です。「東」が「しがし」、「左」が「しだり」になります。一人称は「おれ」「おれっち」「あっし」「あっち」「わっち」など多彩。

(75)しりとり
 定められたルールに則って言葉を挙げていく言語遊戯。たとえば──「言葉A」→「言葉Aの末尾の音から始まる言葉B」→「言葉Bの末尾の音から始まる言葉C」……この作業を延々と繰り返していく。
<語義解説>
・雲堤(うんてい)→雲の下面
・雲霞(うんか)→雲とかすみ
・群青(ぐんじょう)→グンジョー色。鮮やかな青色

(76)二人称
 「一人称(私=語り手が主人公)の小説、三人称(彼=第三者が主人公)の小説があるならば、二人称(あなた=読者が主人公)の小説があったってよい」という、極めておバカな論理から着想された文体。

(77)切支丹
 日本に初めてキリスト教が伝来し、布教されたころ。世には「切支丹文献」という物が生まれ、そこには珍妙な日本語が綴られました。伝道師たちが『イソップ物語』をポルトガル式ローマ字表記の日本語に翻訳した『伊曾保物語』などは「おぢゃるvogiaru」口調のすばらしい逸品。
 この切支丹文献に目をつけたのが、かの芥川龍之介です。数えたことはありませんが、おそらく二十編近い切支丹物を書いているのではないでしょうか。そんな芥川の切支丹物の文体を換骨奪胎して書いたのがこの文体です。非常にうまく文体模倣できましたし、内容自体も非常に悲惨。この完成度には自分自身満足しています。若い人たちは読めないでしょうけど。
 なお、「かるたひるす」は、芥川の切支丹物『さまよへる猶太人』で触れられる「カルタフィルス」から。

(78)対立総合型
 弁証法による文章形式で、二つの対立する概念を最後に統一します。段落は、正・反・合の三段に切れます。

(79)ヤナセ語
 「(99)あとがき」でも少し触れました。が、あんなちょっとの説明では全然足りない。この文体はかなりの解説を必要とします。頑張ります。
 ジェイムス・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』は、英語を基盤とし、そこに世界中のあらゆる言語(当然、日本語も「大根」「雷」など、いくつかミックスされています)をぶちこんだ言語遊戯の迷宮です。
 たとえば、「voise」は「voice(声)」と「noise(騒音)」の融合、「satisfiction」は「satisfaction(満足)」と「so 'tis fiction(ありゃウソだ)」の融合といった具合。
 その恐るべきダジャレ造語は「ジョイス語」と呼ばれ、『フィネガンズ・ウェイク』専用の辞書が何冊も存在するくらいなのです。
 誰もが「他国語には翻訳できない」と信じていたのですが、英文学者の柳瀬尚紀氏が漢語を駆使して完訳を達成。その異常な日本語を、柳瀬氏ご自身は「ヤナセ語」と呼んでいます。そう、この文体は「ヤナセ語」の模倣なのです。──やっと前置きを書き終えました。
 まず、冒頭の「殺め好き」は柳瀬氏の訳文から拝借。…これ説明するの大変だな。えーと。六月の異称「あやめづき」と掛けてあるんです(かなり省略)。「勝負続き」は「菖蒲月」を音読みにしました。
 「寝コん出田」、を、解説する前に──
 『フィネガンズ・ウェイク』の主人公の名は、通称HCE。こいつが作中ではHere Comes EverybodyだったりHircups Emptybollyだったり、HとCとEの順序が入れ替わったり、様々な扮装をして現れます。
 柳瀬氏は漢字で「エッチ・シイ・イイ」の当て字をしていますが、私は字面でHCEを表現してみました。すなわち、寝コん出田は、「コ」が逆を向いた「C」、「ん」が「h」、「出」は転倒した「E」の連なり、そして「田」は「H」「C」「E」の合成です。そして、「HCE」の倒れ伏している姿を現したのが「工冂巾」です。
 「異内中」には「工冂巾」が溶け込んでおり、HCEが異空間としての田舎の内部に踏み込んだことを表しています。「雨居遷早」は「蛙鳴蝉噪」の掛詞(かけことば)で、降りしきる雨のうるささ。
 「痩せ翁な負けるな百合雫これニヤリ」は、小林一茶の俳句「やせ蛙負けるな一茶これにあり」のパロディー。最初の六文字「やせおきなな」には、アナグラム(綴り替え)の達人・柳瀬氏の名前「やなせなおき」が織り込まれています。「百合雫(ゆりしずく)」は、氏が目下翻訳中の『ユリシーズ』を指します。脱稿予定期日を過ぎてもいまだ未完成なので「な負けるな。怠けるな」とエールを送っています。
 ホモ老人の「おかまヨ。キスとか卑猥をぜひ」というセリフもアナグラムです。例のセリフ「おわかいひと。かぜをひきますよ」の各音の順番が入れ替わっています。
 「つれこみはかねになる」は、老人が主人公を拉致した情景描写であり、かつまた、大正時代の待合女中(売春婦)が使っていた数の符牒でもあります。それぞれ「つ→1」「れ→2」「こ→3」「み→4」「は→5」「か→6」「ね→7」「に→8」「な→9」「る→0」です。たとえば、待合い女中が「る、ね、れ、つ」と言えば、「0721」を表します。
 「皮膚見よ忌むなや茲(ここ)と」は、和語における数の数え方「ひい・ふう・みい・よ・いつ・むう・なな・や・ここ・とお」による、老人の醜悪な裸体の描写。
 「胃に刺しごろし吐く汁」は漢語における数の数え方「いち・に・さん・し・ご・ろく・しち・はち・く・じゅう」による、主人公の老人に対する嫌悪感・および老人の暴力行為を示唆。
 「ワシツ43。テエハナセ」は、「和室のシミ。手ぇ離せ」という主人公の叫びを、英語における数の数え方「ワン・ツー・スリー」で表したもの。直後の「16243。X8597」と対応しており、「ワン・シックス・ツー・4・3。テン(X=ギリシア数字の10)・エイト・ファイヴ・ナイン・セヴン」の頭文字略語です。
 「シミの数オカズえて痛ら尾割った」は、脳内に浮かぶあらゆる数字を駆使して天井のシミを数えていた主人公の感慨。みごと、老人にオカズにされ、おしりの穴を掘られてしまいました。尾を割られ、痛い。
 「穴が血慰安でも中った」は、まあ、詳しくは言いませんけど、目醒めですよね。痔と引き替えに、男色への道を歩み始めた主人公です。
 「傘お貸されて割かれた」は、「犯されて」との掛詞(かけことば)。
 「趨勢気分」は何となくの気分であり、「数世紀分」でもあります。
 数世紀の数パーセントの年月=数年が経過しました。「ヨしキ=HCE」が、「ft4(カタカナの「カサ」を上下逆さまにしてみました。ヨしキはカサをぶらさげて歩いていたのです)」
 「音ズレータ」は…。柳瀬氏は訳文中に知人の名前を忍ばせることがあります。いわゆる「隠し題」です。ここでは野球選手のズレータ選手をろくに隠しもせず入れました。(別にファンじゃないですし、単なるダジャレの感は否めません)
 「貸さ奴魯坊」→「カサドロボウ」と「かさぬ。アホ野郎」の掛詞。
 「敷かられる」→「叱られる」だけではなく、またヤラれちゃいました。
──以上のように、「徹底的に研究しなければ」、もしくは、「膨大な解説をしなければ」その神髄が見えてこない文体、それがヤナセ語です。

(80)サイケ
 LSDやマリファナ、コカイン、ヘロインなど、麻薬の幻覚作用を音で表現しようと試みた音楽、それがサイケデリック・ミュージックです(The Beatlesの『Sgt.Pepper's Lonley Hearts Club Band』などが有名)。その幻覚的なトリップ感を、文章で試みたのがこの文体です。

(81)キュビズム
 ピカソとその友人ブラックが発明した絵画技法Cubism。「立体派」などと翻訳されますが、その言葉通り、平面である画板の上に立体を描いてしまおうとする実験的技法であり、画家の目からは見えないはずの部分、たとえば物体の側面や裏側まで同一平面上に描き出してしまいます。ピカソの代表的な筆致──顔の側面と顔の前面が混在している絵画、あれがそうです。
 そんなキュビズムの手法を文学に取り込んだのがこの文体です。過剰な情報が大小さまざまのカッコによって次から次へと展開されていく様子は、まさにグロテスクのひとこと。

(82)毒舌
 下品な言葉で物語の世界全体を罵倒し尽くす文体。この文体を構築するにあたっては、筒井康隆さんの小説に大変お世話になりました。

(83)老人
 文体の特徴:わし、じゃ、のう、わい
 老人側の視点です。老人が主人公を「傘泥棒」と叱った理由は定かではありませんが、これも真相のひとつでしょうか。
<語義解説>
・呵々(かか)→笑い声

(84)暴走族
 トンネルの壁面などにスプレーされているラクガキの文体で、都会のベッドタウンにてしばしば見かけられます。読みづらい漢字を並べておけばナンカカッコイージャンという精神構造で、戦時中の大日本帝國が罹ったのと同じビョーキです。漢字には得体の知れない士気発奮の魔力があるようです。(敗戦後、日本を占領下に置いたGHQが、「漢字の使用禁止」を真剣に検討した歴史もありました)

(85)宇宙人
<語義解説>
・*→助詞の「を」「に」に相当
・/→句点
・↑→上
・~→から
・-→助詞の「が」「は」に相当
・×→無い
・&→助詞の「の」に相当
・※→地球人の音声はよく聞き取れなかった

(86)取扱説明書
 携帯電話の取り扱い説明書を参考にしました。
<難語の読み>
霙→みぞれ
霰→あられ
雹→ひょう
霞→かすみ
靄→もや
霹靂→へきれき

(87)誤植
 ワープロソフトの誤変換および誤入力。
<おもな誤り>
出来心出会る→できごとである
タワシ→わたし
息也→いきなり
気偽ず→気にせず
未知育魯迅との遭難→道行く老人との遭遇
漏示n箱憂いた→老人はこう言った
お馬鹿化と→おわかイヒと
枷(かせ)→かぜ
31→引
私鋸Too→私のことを
それ烏烏年後→それカラス・う・年後
蓋旅→ふたたび
駄菓子菓子→だがしかし
禍サドロボ烏年刈られろ→カサドロボウとしかられる

(88)書きとり
 国語科の授業でやらされる漢字の書き取り練習。

(89)遺書
 ここでの「遺書」は、相続などに関する法的な遺言状ではなく、自死する前の述懐。

(90)俳句
 「村時雨(むらしぐれ)」はひとしきり降る雨のことです。突然の雨を表現しているうえ、田舎を表す「村」を含んでいるのでピッタリ。また、「傘を借りたのに着物が濡れた」というあたりに俳味があります。自画自賛になってしまいますが、なかなかの句です。だと思います。
 俳句なんてキライです。

(91)言論統制
 ふつう、「言論統制」といえば政治思想や社会思想の弾圧を指しますが、ここでは放送禁止用語や差別語に対する言葉狩り。
 使用を禁止された「田舎」という語の代わりに「産業廃棄物不法投棄場」と書いてみたり、「泥棒」の言い換えに「税務署」を使ってるのが強烈。
<その他特記事項>
・「桶屋の商機」とは、「風」のことを指す。「風が吹けば桶屋が儲かる」の故事から。
・決して、決して、税務署を泥棒あつかいしているわけではございません。すみません。どうしてもお気に障るようでしたら、「社会保険庁」に改めさせていただきますが?

(92)早口言葉
 できるだけ早く、声に出して読んでみてください。おそらくプロのアナウンサーでもスムースに読めないと思います。「返す傘ピョコ2ピョプビュポ」なんて、日本語の音ではありません。我ながらひどい出来です。
(難しい漢字も多いので、かなバージョンを掲載しておきます)
 なかなかひややかないなか。しょうしょうそうちょうにちょうとうとつのしょううがそうとうすうふった。しかしすがすがしいしゅううがしゅうごうすうふんごすぐにしゅうりょうしようとすいそくするよ。
 じゅうじゅんなじょうじんそうなろうじんがおあわれみくださりじょうひんにちゅうこくつうたつちゅう
「ろうにゃくなんにょちゅうのにゃくのちゃくなんよ。どうのうどうのどのうろをにゅうねんにぬうてもぬれる」
 からかさはいしゃくかさねがさねかんしゃさんしょうあたたかかった。
 しゅんじしゅんかんいちじつせんしゅうすうねんすぎた。かえすかさピョコにピョプビュポ。
ろうにゃくなんにょちゅうのろうのちょうなんけんちょとうなんとにゅうわにゆうゆうゆうようなにおう。

(93)ゲームブック
 2人のイギリス人、スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンによって発明され、1980年代に隆盛を極めた小説ジャンルです。無数のパラグラフ(段落)がゴチャマゼに並んでおり、選択肢を選ぶことで読者が物語の進行に介入できるのが特徴。
 通常のゲームブックのパラグラフ数は300~500くらいだと思いますが、ここではコンパクトにまとめてみました。──コンパクトすぎてさっぱり面白くありません。ストーリーはファミコンソフト『ドラゴンクエスト』のパロディです。ひどいパロディです。
 ちなみに、パラグラフ6は『オズの魔法使い』のエンディングです。これもひどい。

(94)クイズ
 クイズの問題を解けば「(1)礎」の内容が浮かび上がる仕組みですが、これはもはや文体とは呼べません。失敗作です。キライです。
 第1問のヒントは「(2)まえがき」にあります。第4問のヒントは「(29)モンタージュ」にあります。第10問は「(96)辞書」からの出題です。第12問のヒントは「(59)戯曲」にあります。第13問は「(69)万葉仮名」からの出題です。第15問は「(61)双括型」と関連性があります。第16問のヒントは「(96)辞書」にあり、「(91)言論統制」でも触れられています。第19問のヒントは「(96)辞書」にあります。
 どうせなら、すべての問題を関連づけたかった。出来映えに満足できません。

(95)尊大
 自分には尊敬語を使い、他人の動作には謙譲語を使うという、主客転倒もいいところな文体。
<語義解説>
・朕(ちん)→天皇や帝王が用いる一人称
・行幸(ぎょうこう)→「みゆき」とも読む。天皇が出かけること
・竜顔→天皇の顔
・穢土(えど)→汚れた土地。不浄の地

(96)辞書
 「(1)礎」に書かれている全ての語と、そこに「文体」「練習」「晩霜」「芋」の四語を加えて収録。各単語の意味を、時には常識的に、時にはふざけて定義してみました。
 助詞については、厳密に定義するのが面倒だったうえ、厳密に定義してもちっとも面白くないので手を抜きました。「よ」から順に辿っていくと「よ・に・を・と・ず・れ・る」世に訪れるです。

(97)重複
 「頭が痛い」もしくは「頭痛がする」と書くべきところを「頭痛が痛い」と書くのは意味の重複であり、表現上あまり好ましくありません。そんな重複文を徹底的に追及した文体がこれです。
 97番目の文体であり、フィナーレが目前であるため、楽屋話のようなことが書いてあります。
 また、「『文体練習』という本からして全体がすべて重文となっており、その無用で不必要な無駄さ加減においては重文だ」という部分の、初めの「重文」は複文のことで、後の「重文」は重要文化財のことです。おそれ多い暴言です。

(98)晩霜
 大塚晩霜、ヤツに文体はない。

(99)あとがき
 ここに書かれている通り、1ヶ月で100種類の文体を仕上げました。6月10日から7月9日までの、全30日間。「(19)新聞」を除くと25日間。1日4文体のペースですね。作業に費やした時間はおそらくのべ100時間近いと思います。どれだけヒマなんでしょうか。正気を疑います。
<その他特記事項> 
 ・「文章力の達者な人ならばおそらく三百篇はいける」→清水義範氏など
 ・「起承転結型・(中略)・マンガなどの文体をボツにしたりもした」→ボツというか、採用を見送りました
 ・「2005年7月4日」→日付が去年になっているのはうっかりミスではなく、『去年マリエンバードで』というマニアックな映画に引っ掛けたわかりにくいボケ。

(100)解説
 文庫本の巻末に掲載される「解説」のパロディ。外づらの良い評論家になりきり、こそばゆい想いをしながら作家と作品をおだてあげました。演技であり、本心ではありません。保身のために弁明しておきます(笑)。
 後半部分は破綻しています。これは、笹池薬麻呂(虚構内存在。「(25)注釈」にも名前が出ている)の解説文に対して、作者本人が乱入して不快感を噴出させているからです。──この文体の語り手は一人ではなく、実は二人なのです。

 拙作『文体練習』は、30字以内に要約できる内容をむやみに100回も繰り返し、60000字の文量に膨れ上がってしまった。そしてこの自注には、実に16000字を費やした。自分でやらかしておいてなんだが、どうしようもない電子ゴミを作ったものだと思う。めでたしめでたし。








 その後、時は流れ、7月20日。ついに買いました。巨大書店に立ち寄り、買いました。実際に現物を手に取ってみてから買いました。「やっぱ、高っ!」と思いつつ、買いました。レーモン・クノー『文体練習』(朝比奈弘治 訳)、買いました。
 「本家『文体練習』と拙作『文体練習』には、どれくらいの差があるのか?」
 当然ながらこれが1番の関心事。私が手がけた100種類の文体のうち、いくつが本家と同じなのか。かぶっているのか。
 ネット検索で事前調査したところ、本家には「女子校生」「いんちき関西弁」などの文体があるとのことでした。これは拙作「コギャル」「関西弁」と同じ文体でしょう。
 それ以外にも、本家と拙作で重なってしまっている文体はあるのか。あまり重なっていませんように…! なぜなら、ほとんど差がなければヨシヒコ・ワダだからです。「(2)まえがき」の「現物を知らないまま本家『文体練習』を複製する試み」という宣言がウソになってしまうからです。仮に100種類とも同一だったら言い逃れはできません。
 そんなほのかな不安のなか、1番目の文体「メモ」に軽く目を通してからページをめくりました。しょっぱなの「複式記述」でブッとび。拙作「(97)重複」とみごとに「重複」しているではありませんか。そればかりか、「複式記述」の隣を占める文体「控え目に」は、拙作の実質的第1文体「(5)お嬢様 」と酷似しています。正直ゲンナリしました。
 「こりゃ、そうとう似通ってるぞ…。」
 絶望的な気分でページをはぐる私。次の文体は、「隠喩を用いて」。お。今度は違う。こんな文体は拙作にはない。
 一喜一憂しながら、とりあえず最後までザッと目を通してみました。ひとつひとつの文体を精読してはいませんが、どうも類似している文体は多くはなさそうです。一安心。
 重複した文体もいくつかありましたが、大半は私の思いもよらない文体であり、さすがはクノー先生だと思いました。敗・北。


【本家と拙作の類似一覧】

 ◆完全にアウト(そっくり)
「1.メモ」 「(1)礎」
「2.複式記述」 「(97)重複」
「23.あらたまった手紙」 「(63)手紙」
「44.コメディー」 「(59)戯曲」
「47.白日夢」 「(6)武者」
「63.古典的」 「(72)擬古文」
「73.女子校生」 「(38)コギャル」
「81.ちんぷん漢文」 「(73)漢文」
「82.聞き違い」 「(87)誤植」
「83.いんちき関西弁」 「(12)関西弁」
「84.イギリス人のために」 「(43)英漢字」
「88.罵倒体」 「(82)毒舌」
「96.疑似農民ことば」 「(10)いなかっぺ」
「98.気取り」 「(15)現代純文学」
「付録2.俳諧」 「(90)俳句」
「付録3.女性の視点」 「(57)セクシー」

 ◆グレーゾーン(あやしい)
「3.控え目に」 「(5)お嬢様」
「8.予言」 「(76)二人称」
「15.別の主観性」 「(83)老人」
「22.語尾の類似」 「(37)ラップ」
「26.厳密に」 「(25)注釈」
「29.ぼく」 「(8)小学生」
「46.音の反復」 「(92)早口言葉」
「49.頓呼法」 「(24)ポエム」
「54.嗅覚」 「(31)あいうえお作文」
「60.歌の調べ」 「(36)歌詞」


 「1.メモ」と「(1)礎」の酷似。もちろん、これは本家を参考にしました。「(1)礎」の原題は「(1)メモ」だったくらいですから。逆に言えば、これだけをヨシヒコ・ワダして拙作『文体練習』を執筆しました。執筆しましたというか、置き換え作業を行ないました。
 「23.あらたまった手紙」と「(63)手紙」の相似、「44.コメディー」と「(59)戯曲」の相似は、仕方がないとあきらめます。どちらも古来から存在する文章形態だからです。他にも「25.擬音」や「59.電報」は拙作にて「オノマトペ」「電報」として書こうと思っていました。書かなくてよかったです。
 「47.白日夢」と「(6)武者」、「73.女子校生」と「(38)コギャル」、「81.ちんぷん漢文」と「(73)漢文」、「83.いんちき関西弁」と「(12)関西弁」、このあたりはクノーの文体と重なったと言うより訳者の朝比奈さんの文体とかぶったと言うべきで、あまり残念には思いません。
 残念だったのが、「84.イギリス人のために」と「(43)英漢字」の相似。この文体がまさか同じだとは…。非常にショックです。

 グレーゾーンも含め、本家と拙作で重複した文体は僅々26。予想ではもっと重複していると思っていましたし、「1.メモ」「2.複式記述」「3.控え目に」の連続攻撃にさらされた時は最悪の結果も覚悟しましたが、フタを開けてみれば四分の一の重複で済みました。別の考え方をすると、本家『文体練習』を文体模倣すれば、さらに73の文体を拙作に加えることができますね(無意味だからやりませんけど)。拙作「(99)あとがき」にて予測した「もっと文章力の達者な人ならばおそらく三百篇はいけるはず」説は、あながち的外れな数字でもないことがこれで証明されました。
 いずれにせよ、本家を読む前に拙作を仕上げて正解でした。作業中に「84.イギリス人のために」の存在を知ったら死にたくなっただろうと思います。
 それと、各文体の詳細な解説を本文並みの文章量で書いた「訳者あとがき」も、拙作の長大な「自注」と奇妙な符合があり、「おまえ、まねしただろ」と言われても反論できないほどの酷似だ。へこむ。
 はっきり言って、自分の書いた『文体練習』、無駄だった。非常に無駄でした。でも、書くの楽しかったから、いっか。
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この記事に対するコメント

相互リンクのお願い
記事と無関係の書き込み失礼します。
「新人賞をとって作家になる!」というブログを作っております、ハンドルネームかつきと申します。

P助様 大塚晩霜様 ナチュレ様 仁札小一郎様 こさめ様 イシカワマキ様が書かれている「散文ブログ『ちりぶみ』」を拝見し、ぜひ相互リンクをお願いしたく、書き込みをさせていただきました。

こちらは新人賞を目指す方々への新人賞情報、原稿用紙の書き方、応募原稿の送り方、作品の書評などの情報提供を行っております。

相互リンクは、はてなアンテナを利用した「新人賞をとって作家になる人たち」というページにリンクさせていただきます。
「新人賞をとって作家になる人たち」 http://a.hatena.ne.jp/katsukix/
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もしもご了承いただけるのでしたら、「相互リンクのお願い 4」という記事のコメント欄にハンドルネームとURLをご記入ください。後ほど、リンク終了のご連絡をさせていただきます。
「相互リンクのお願い 4」 http://shinjinsho.seesaa.net/article/31280864.html

こちらのブログのリンクは貴ブログのどこでもかまいません。
ブログ名 新人賞をとって作家になる!
ブログURL http://shinjinsho.seesaa.net/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
突然の書き込みで恐れ入りますが、ご検討いただきますよう、よろしくお願いいたします。
また、ご迷惑でしたらお手数ですが、削除ください。

【2007/01/17 13:26】 URL | かつき #nG0hTmY.

申し訳ございません
わたしたちの旧友には実際
新人賞をとって作家になった人もいますが、

どうもわたしたちそれ自体は
新人賞をとって作家になる人たち
ではなさそうですので

相互リンクの件につきましては
慎重に検討させていただきます。
【2007/01/19 02:04】 URL | 大塚晩霜 #-


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