散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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『ボイサー養成マニュアル』   (2006/10/04)
前書き

ボイサー(Voicer:“Voice”&“er”の造語)とは、日本政府が考え出し普及させた在宅ワークのことである。
本書では、そのボイサーについての理解を深めると共に、優れたボイサーとなるための基礎知識を得ることを目的とした、簡易版のボイサー養成マニュアルである。
本書を手にし、一人でも多くのボイサー志望者が、優れたボイサーへと成長していく事を、私は願っている。



目次


1-ボイサーの誕生とその背景
2-ボイサーの役割と仕組み
3-ボイサーの意義




1-ボイサーの誕生とその背景


20××年6月、厚生労働省と経済産業省の特別編成チームが「ボイサー」と呼ばれる政府主導の在宅ワークを発表した。その画期的で独創的なワークスタイルは、すぐさま反響を呼び、日本全国に広がっていった。

その当時、日本は深刻な問題を抱えていた。団塊世代に定年の波が押し寄せた事により、2005年から徐々に進行し始めた就労人口の減少は、被保護の立場である年金受給者など高齢層の増加と合わさり、就労者一人一人への負担度、依存度の高まりを招いてしまった。

結果、企業側は減少する就労者を少しでも効率的に就労させようと、機械化、オートメーション化を推進し、それにより人的パワーの供給先がよりコア業務へと変革と遂げていった。

そのような中で、定年を迎えたものの体力がまだ有り余っている、つまり就労の意志を持つ定年退職者が年々増加していった。しかしながら、コア業務をこなすだけのスキルが無いため、再就職の機会は減少し、多くの定年失業者(定年退職後に再就職を希望するも就職先が無い高齢者のこと)を生み出す結果となった。

この歪み始めた社会構造を改革するために組織されたのが、先述の特別編成チームであり、研究の結果生み出されたのが、「ボイサー」だったのである。




2-ボイサーの役割と仕組み


ボイサーとは、機械化・オートメーション化の走りであった自動音声部分を、全て人間の手による手動化、つまり「退化」させることによって、半ば強制的に労働需要を創出する役割を持っているといえる。

自動音声部分の例としては、最もオーソドックスかつ身近なものとして「自動電話応対機能」が挙げられる。電話番号間違いにおける「お掛けになった電話番号は現在使われておりません」や、混線時の「只今回線が混み合っており大変繋がりにくくなっております」といったNTTアナウンスはもちろん、予約回線の自動音声や、留守番電話アナウンスなどが手動化されていった。その他、カーナビや家電製品の音声お知らせ部分や、駅やバスなど輸送機関でのアナウンスなど、多くの分野で「退化」が行われ、それに合わせて労働力の需要も生み出されていった。

ボイサーの資格を取った有資格者は、政府より認定を受け在宅ワークを行うことになる。その際、業務に必要な機材一式は無料で社団法人ボイサー推進協会(VA:Voicer Assosiation)よりリースされ、その機材を使用して業務をこなす。

ボイサーワークツール(通称:VWT)と呼ばれているこの機材一式は、最新鋭の技術が用いられており、モバイルIPフォンとブロードバンドを活用したリアルタイムな映像の受信システム(通称:ボイサーライブ!)、そしてエリアごとに管理されるコントロールシステム(VICC:Voicer Intensive Control Center:ボイサー集中管理センター)の組み合わせによって構成されている。

このことによって、自宅にいながら受け持ち場所のリアルタイムな状況を把握し、その状況に応じてVICCより指示を受け、その指示通りに、時にはタイムリーな対応も行いながら自らの「声」を使って発声することが可能となり、それこそがボイサーの業務内容である。

ボイサーには階級制度があり、経験を積み試験にパスをすれば階級が上がり、より難度の高い業務を任されることとなり、もちろんその階級に応じて報酬も増減する。

そのボイサーへの報酬は、政府と日本経団連が主導するボイサー推進協会(VA)より支払われ、その供給源となっているのは、年々高まりつつあった「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」 の観点から多くの企業が出資するボイサー基金である。その基金に出資することにより、企業は「経済や社会への貢献」という顧客や消費者に対するブランディングが可能となる仕組みとなっている。

こうした複雑な利害関係と日本政府の特別編成チームの尽力によってボイサーは生み出され、そして現在では法律によってボイサーは社会的に保障されるようになった。




3-ボイサーの意義


労働需要の創出を目的とした政策として、アメリカのケインズ政策が挙げられる。政府が積極的に歳出を行うことで労働需要を高め、労働市場の不均衡を解決しようとするその姿勢は、まさにボイサーにも通じる部分が多いと言える。ただ、ケインズ政策との大きな違いとして、政府だけではなく企業からの出資があるという部分であり、時代のニーズに応えた画期的な政策であることはいうまでもない。

ボイサーの誕生と成長は、当初の目的であった「高齢層の失業問題」の解消だけでなく、社会問題化していた「ニート(Not in Education, Employment or Training:略称NEET)」と呼ばれる若年無業者への対策といった面でも効果を現している。家にいながらにして、そこまで特別な知識も必要とせず、好きな時間に働けるというワークスタイルのフレキシブル性が反響を呼び、ニートの更正といった面で注目を集め、実際にこれまでに多くのニートが社会へと巣立つステップアップとしてボイサーを活用しているという報告もある。

こうして、今やボイサーは日本に無くてはならない存在となり、無業者・失業者が減り国民全体の所得が上がることで市場は活性化され、経済サイクルの潤滑油としての役割も果たすようになったのである。



終わりに

ボイサーは日本経済を活性化させ、多くの人々に労働の機会を与えている。今日では多くの人々がボイサーになるため学んでいると聞く。職業というものは時代によって変遷していくとは言うが、正直ボイサーが誕生した当初に、これだけ成長し、かつ重要な存在になるとは誰が考えられただろうか。

この本を手に取り、ここまで読了していただいた読者の方には、ボイサーの素晴らしさを伝えられたと思うが、その意識を失わずに立派なボイサーとなり、日本のため、社会のため、そしてもちろん自分自身のために、働き続けてくれることを願いながら、このマニュアルを終えることとしたい。





「ボイサー養成学校」の新任講師イトウは、明日の授業に備えマニュアルを再読し、パタンと本を閉じた。若干の目の疲れを心地よく感じながら、明日の授業について思いを馳せる。
彼が持つクラスは生徒数こそ少ないものの、ニートに元ヤン、老人など個性豊かな生徒達がおり、まとめるのに苦労しながらも、イトウはそれなりに充実感を得ていた。
明日はいよいよ実践練習が始まる。その光景を頭に思い浮かべながら、イトウはベッドに横になり、瞳を閉じて意識を遠のけた。




今回の作品は如何だったでしょうか。
新任講師イトウの授業風景をご覧になりたい方は、2006年10月15日(日)、新宿ゴールデン街劇場で行われる、劇団YAX直線の番外公演『原則一乃巻』にお越し下さい。
当日、個性豊かな生徒達と共に、イトウの奮闘ぶりを伺えるかと思います。

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テーマ:これからの日本 - ジャンル:政治・経済




この記事に対するコメント

堅い文章が堅固な世界を作る
 末尾に「テーマ:これからの日本 - ジャンル:政治・経済」と銘打っているように、この作品は文学というよりも公共事業の広報冊子のようです。読んで心があったまる事はなく、興奮を覚えるわけでもありません。カタカナ語やアルファベット略称など、正直、読み進めるのに骨が折れたりもします。
 しかしその<文学的ではない>あたりがこの作品の神髄で、ボイサーという職業が実際にあるかのようなリアリティーを作品世界に寄与しています。公文書としてそつがなく、たいへん完成された文章です。おそらく作者の方は相当な数のビジネス文書をこなして来ている方ではないでしょうか。
 遠慮なく申し上げると、私はこの作品をあまり楽しめませんでした。と言うと失礼なようですが、楽しめてはいけないのです。これはマニュアルであり、マニュアルは楽しんで読むものではないからです。楽しんで読めるとすればそれは純然たるマニュアルではない。マニュアルをからかったパロディー的フィクションに他なりません。
 堅牢な世界観を創り上げることに成功しています。この文章を土台にして築き上げられる芝居は非常に面白くなりそうですね。
【2006/10/06 22:32】 URL | Big Swifty #-


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