散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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パーツショップ   (2006/09/24)
 すこし疲れ気味の体調を理由に、定時で会社をあがった。なんとなく、いつもと違う道で帰る。薄暗い空、慣れない道、コウモリがへろへろと飛んでいる。夕暮れ時は心に不安がさし込む。それでも私は大通りを避け、路地を選んで歩く。ふと目に飛び込んだひとつの看板。「パーツショップ」とある。近所にこんな店があるなんて・・・。とても小さな店だ。大都市の通り沿いにあるような、派手な電飾を使った大手のパーツショップとは違ってあまり繁盛してないように見えるが。私はなぜだか、吸い込まれるように中へと入る。
 店の中は薄暗く、思ったよりも奥行きがある。店の棚には商品が所せましと並べられている。そしてこの店の商品は他とは全く違っていた。
 「長いけど太い足」
 「毛深い腕」
 「ちょっと大きすぎる唇」
 「つり上がった細い目」
 商品の特徴を一言で表わした名前がつけられている。しかし、どうも欠点の多い商品ばかりのような気がする。普通なら俳優やタレントなどの、誰もが憧れるような人物のパーツを複製した物を揃えておくのだが。
 「こんなの売れるのかな」
 「意外と売れてますよ」
 店の奥から突然の返事。振り返ると、店の主人が小さなカウンターの向こうに座っている。あわてて振り返り、わびる。
 「これは失礼。ただ、この店の商品がとても変わっていたので」
 「みなさんそうおっしゃいますよ。たいていの人は有名人だのモデルだののパーツを欲しがりますから」
 だれでも自分を格好よく、美しく見せたいと思うもの。ならばこの店にあるようなパーツは誰も買わないのではと思ってしまう。
 「じゃあ、この店の商品は一体・・・」
 「今ではみな御自分の体を、俳優やモデルの体を複製して量産されたパーツと交換するようになりました。その時に不要になった御自分のパーツは下取りに出してしまいます。うちではそういったものを買い取って、商売をさせていただいてます」
 なるほど、それで欠点の多い商品ばかりなのか。でもそれならこの店にある物は、どれも人工物でない天然物ということか。どうりで、この店には同じ物が二つとない。
 「最近では全身を量産品と交換してしまって、確かに美しいのだけど個性が無い人ばかりでしょう。だから体の一部にわざと欠点を持たせて、アンバランスにして、それを御自分の個性になさっている方が増えているのです。そういう方がうちの商品を買われるのですよ」
 そういうことか、それでもやっぱりどう見ても売れそうにないものもある。
 「偏平足」だとか「しわだらけの手」などは一体だれが買うのかと思ってしまう。
 主人は言う。
 「どんなに醜く思えても、大事なのは個性ですよ。やはり自分のパーツが良いと言って、買い戻しに来るお客様もいらっしゃいますよ。思い入れのある、自分の体ですから。ところで・・・」
 「今日はどういったパーツをお探しで?」
 「あ、いや、ちょっと立ち寄ってみただけで・・・」
 主人はこちらの方をまじまじと見ている。
 「失礼ですが、お客様はパーツ交換を一切なさっていないようで」
 「ええ、まあ」
 会社の同僚はみな人気のパーツで全身を固め、それを時代の流行に合わせてこまめに取り替えている。だからモデルのようにスタイルがよく、俳優のような美しい顔で、且つ極めて無個性だ。私は違う。私は自分の体を気に入っている。妙に白い肌も、不格好なオー脚も、たいしてハンサムでもない顔も、全てが親から授かった自分だけの物だ。他の誰とも違う。
 「どうですか、パーツを変えると気分も変わりますよ」
 パーツ交換など今まで考えたこともなかった。自分の体を量産品と取り替えるなど、想像するだけでも不気味だった。だが、この店のパーツは不格好ながらも、どれも個性にあふれている。この店のパーツなら試してみてもいいかもしれない、そんな気分になった。
 「そうだな、じゃあひとつもらおうかな」
 「ありがとうございます。どれになさいますか」
 実はさっきから気になっている物がある。
 「この“感傷的な瞳”というのは?」
 「それはこの近くに住む高校生が、男のくせにちょっとしたことですぐに泣いてしまう自分が女々しくて嫌だ、と言って売っていった物です」
 感傷的という妙に抽象的な名がどうにも心ひかれるのだ。私はこれに決めた。
 「すぐにお取り付けいたしましょうか。1時間ほどでできますが」
 「ええ、お願いします」
 「では奥でいたしますので、こちらへどうぞ」



 パーツの交換を終え、私は店を出た。陽はもう沈んでいて、東の空から暗くなっている。新しいパーツは意外なほどなじんでいる。もっと大変なものかと思っていたが・・・。
 「俺もとうとう・・・」
 ひとつつぶやいてみる。私もとうとう、自分の体に手を加えた。後悔の気持ちはない。ただ、予想以上にあっさりと交換できたせいか、さほどの新鮮味も無い。本当に、どうってことない。みんなが気軽にあれこれとパーツ交換する気持ちが少し分かった気がする。ただ、この“感傷的な瞳”は、すっかり涼しくなった秋の乾いた風が、枯れ葉を巻き込んでくるくると舞っているのを見ただけで、もろくも涙を流してしまうのだった。












今回の作品はいかかでしたか?
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この記事に対するコメント


ナチュレさんの作品いつも楽しみにしています^^
その発想力と独創的な言葉遣いにはいつも感心させられます。

今回の作品もそのアイディアにわくわくとしながら読み進めておりましたが、感想としては盛り上がり(またはオチ)にひと捻り欲しかったとうのが正直なところです。
秋の木の葉が舞うだけで涙してしまうその瞳が見るいつもの世界はどんなものなのか。
はたまた、始めてパーツを取り替えた彼の心情はいかばかりか。
もう少し書き進めて欲しかったなと思いました。
次回作もまた楽しみに待っています。
【2006/09/25 21:24】 URL | ロビタ #gPxiGQPc


売っているのは何のパーツなのかと思えば人体のパーツ。

そんな奇抜な発想なのに回りくどい説明がなく、
さも“ある日のちょっとした印象”のように
素っ気なく書き流している所に驚きました。

あきらかに非現実の世界なのにわざとらしくない。
したがって不自然でない。

感心する事しきりです。
【2006/09/25 22:46】 URL | 日立 #-

早速のコメントありがとうございます
ロビタ様、いつもご愛読ありがとうございます。
ご指摘のとおり今回の作品は少々ドラマ性に乏しいものになってしまったと思います。
今回描きたかったのは、体のパーツをパソコンのパーツのように気軽に交換してしまう世界の日常のひとコマであるから、さほどのドラマ性は必要あるまい、と考えていました。
しかし、それにしてももう少し読み手を楽しませる要素があってもよかったかと反省しております。
【2006/09/26 10:20】 URL | ナチュレ #-

日立様、コメントありがとうございます
早速コメントを寄せていただきまして、ありがとうございます。
以前、知り合いから
「君の作品は説明が多すぎる」
という指摘をされたことがあったので、今回は説明を必要最低限にしよう、と心がけて書いていました。
なので、まわりくどい説明がなかった、と言っていただけるのは大変嬉しいことです。
今回は日常のひとコマという感じにしたかったので、不自然でない、と感じていただけたのなら、ある程度は成功です。
しかし、「不自然じゃないけど面白くもない」
になってしまっては駄目なので、「読んでいて面白い」作品が書けるよう、これからもがんばります。
【2006/09/26 10:45】 URL | ナチュレ #-


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