散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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    某サークル六代目総長

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    イシカワ マキ
    長野市在住。



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エミリーとカレーライス   (2005/09/14)
このたびは散文ブログ『ちりぶみ』専用作品『エミリーとカレーライス』にアクセスいただき誠にありがとうございます。読みはじめる前にこの取扱説明書をよく理解し、正しい使用法でお楽しみ下さい。
●概要:エミリーはカレーを作り、カレーを食べ始め、カレーを食べ続け、カレーを食べ終える。●特徴:注意書きの多用。●効能:ダイエット。過食症予防。●用法・容量:食後1回服用。食前・食中の観賞はご遠慮ください。●副作用:吐き気、嘔吐、食欲不振。●使用上の注意:用法・用量を守って正しくお読み下さい。閲覧の際は部屋を明るくし、なるべくモニター画面から離れて下さい。この作品にはグロテスクな表現が含まれています。お子様の手の届かない場所に保管して下さい。あなたの健康を損なうおそれがありますので吐きすぎに注意しましょう。読んだ後は紙に包んでクズかごへ。●操作方法:画面右側に表示されているスクロールバーをドラッグし 、下の方に隠れている文字も読んでみましょう。違和感を感じるなどの症状が現れたら即刻使用を中断し、画面右上の×マークをクリックしてブラウザを閉じてしまえ。/キーボードの「↓キー」を押し続けると本文を読まなくても一気にエンディングまでたどり着けます。これは便利!/コメント欄に隠しコマンドを入力すると作者を一発で倒せるぞ。やってみよう。/自転車・自動車・ジェット機などの運転中に読むのは危ないですから絶対におやめ下さい。



【STEP1】エミリーはカレーを作る

<材料>
・カレールウ:適量
・屠殺された牛の死肉(鮮血に染まった細胞):400グラム
・玉ネギの頭部…2名分
・ジャガイモの遺体:3体
・ニンジンの死骸:2分の1(下半身)
・稲の卵:4000粒
・蔓性低木の粉砕された実:少々
・NaCl(塩化ナトリウム):少々
・H2O(浄水場で薬品消毒された水):700~800ミリリットル
・牛乳から抽出した脂肪。または人造バター:10グラム
・肉片や骨の煮出し汁を固形化した物:1個
・古びて赤く変色したぶどうの汁:150ミリリットル(致死量)
・粉砕された小麦:大さじ1.5
・植物の脂肪を工場で圧搾精製した混合油:大さじ3
・蒸し殺しにした大豆から醸成した液:大さじ2

<調理方法>
 玉ネギは頭蓋から真っ二つに断ち割り、遺族が確認しても本人と判別できないほど薄べったく解剖します。ジャガイモは生爪を剥がし皮膚を剥ぎ取り包丁でめった刺しにし、水にさらして充分に溺死させましょう。ニンジン(下半身)も皮膚を削り取り、さらにバラバラにします。屠殺された牛の死肉(鮮血に染まった細胞)は塩化ナトリウムと蔓性低木の粉砕された実でコーティング加工したのち、生前のつぶらな瞳を想起しながら切り刻みます。
 重金属製のフライパンに牛乳から抽出した脂肪(または人造バター)と植物の脂肪を工場で圧搾精製した混合油を敷き、火で熱します。屠殺された牛の死肉(鮮血に染まった細胞)の肉片を痛めつけ、古くなって赤く変色したぶどうの汁を加え、煮立ったら五右衛門風呂に移します。
 同じく玉ネギの頭部を傷め、ぐったりとミイラ色に褪せてきたら釜茹での刑に処します。
 肉片や骨の煮出し汁を固形化した物・浄水場で薬品消毒された水を加え、煮立ったら死体から滲み出た体液をすくい取り、重厚な蓋で監禁して弱火で約20分じわじわと煮込みます。
 地獄の業火で灼熱となったフライパンの上でジャガイモの遺体を悼めたのち、血の池に送還します。
 阿鼻叫喚の地獄絵図となった死の沼の中に、ニンジンの下半身の断片・蒸し殺しにした大豆から醸成した液も加え、蓋を取って食材の苦悶の表情を眺めながらさらに15~20分間苦しめます。
 ジャガイモの遺体が柔らかくなったらカレールウを溶き入れ、1~2分煮て火を止めます。
 稲の卵を皿に盛り、カレーをbukkakeて出来上がり。

 料理とは、結局はそういう行為。しかし彼女は気付いていない。
 エミリーにとってカレーは食べるための物体であり、かつて生命活動を行なっていた動植物ではない。生き物ではなく、食べ物。そこに命の面影はない。噛み砕き、飲み下し、消化吸収して栄養とするための物質なんだ。



【STEP2】エミリーはカレーを食べ始める

 エミリーは無数の死骸がグチャグチャに混ざり合ったカレーライスを食べ始める。多くの命を犠牲にして出来上がったカレーライスを。彼女の体内に溶け込んでいく霊魂。
 ニンジンは自然な甘味で口腔を満たす。かわいらしいおいしさと言っても良いかも知れない。柔らかく煮られた牛肉は噛むごとに肉のうまみが広がる。肉汁とカレーのアンサンブルはホッペが落ちそうになるほどの美味だ。また、ふっくらと炊けたごはんのおいしいこと。口をモグモグ動かせばカレーや具と渾然一体となり、味覚と触覚の両方を喜ばせる。ホクホクとしたジャガイモは歯に優しい感触。咀嚼されて小さくなり、静かに食道を通過しておなかに転がっていく。カレーは甘辛く、うまい。香辛料の効いた深い味わいが食欲をちくちくと刺激し、スプーンを使う手の動きを促進させる。調理中にエミリーを泣かせたタマネギは、今や飴色の風味を彼女の舌の上に運ぶ。砂糖水を染み込ませた天の羽衣が味蕾をおっとりと撫でるような趣きだ。
 エミリーは、カレーライスの味に満足した。が、彼女はやっぱり知らない。口の中で何が起きているのか。
 ニンジンは臭い唾液にまみれ、酵素の塗られた歯ですりつぶされる。すりつぶされる時、歯垢をこすりつけられる。きったなくグジョグジョになる。そんな事は、自分の口の中を覗けないエミリーに知る由もない。
 牛肉はかつて野蛮なウシだった。胃が四つあり、ひどく臭うゲップを吐く動物。蠅の飛ぶ薄暗い小屋で寝起きする卑しいおデブ。そんなウシの死肉にエミリーは接吻している。のみならず口に入れている。ウシさんは残酷に噛み絞められ、悲惨な交通事故に遭ったごとくブチャブチャにねじり潰れる。エミリーはその事実に目をつぶる。
 米は稲科植物の実。新しき生命を宿した卵だ。4000人もの赤ん坊の姿蒸し。岩石剥き出しの岩山のようなエミリーの歯に圧殺され、声にならない叫びをあげる。4000人の赤ちゃんが一斉に泣きわめく断末魔の大合唱。エミリーにはそれが聞こえない。
 ジャガイモは胃の中でドロドロに溶解している。それはまるで、ゲロそのもの。腹をかっさばいて観察してみれば一目瞭然だが、ゲロで胃袋が満たされているのと同じだ。だけどエミリーの考えはそこまで及ばない。清潔な食材は胃腸の中でも清潔なままだと信じている。種種雑多の飢えた細菌が群がり、ウネウネ下品にかじりついているのに。
 カレーのルウは、色つや・軟度・湿り気、どれを取ってもまるで排泄物のような泥濘。たくさんの命の断片が化合されている。これはそのうち、腸内にはびこるおびただしい数の細菌に侵食されて、カレーみたく茶色い大便となって排出されるのだろう。エミリーには想像できない。口の中を豊潤な香りで満たしてくれたこのカレーが、いつか芳醇な匂いで便器を満たすだなんて。
 そして、タマネギ。タマネギにだって、かつて命があった。2個あるうちの片方は、実はエミリーの元カレだ。しかしエミリーはそれを覚えていない。食べ続けるうちに、思い出すだろうか。

<学習の手引き>
 (読解)
1.この文章を読んだ最初の印象をまとめておきましょう。
2.作者が言おうとしている主張は何なのか、クラスで話し合ってみましょう。
3.班ごとに「ポスト構造主義チーム」と「ニュークリティシズムチーム」に分かれ、この文章がノーベル物理学賞を受賞できるかどうか論じてみましょう。
4.きのうの夜、あなたは何を食べましたか。近い過去を思い出すのはボケ防止につながります。
 (表現・言語)
口腔…口蓋と舌の間の空間。
アンサンブル…(音楽などの)調和。一体感。
咀嚼…食べ物を噛み砕く行為。
味蕾…舌の表面近くにある味覚の受容器。直径約50マイクロメートル。
酵素…物質の化学的分解を行なうタンパク質。
泥濘…ぬかるみ。
豊潤…ゆたかでうるおっている。
芳醇…(酒の)かおりが高く、味にコクがある。



【STEP3】エミリーはカレーを食べている

 彼女の経歴について。
 エミリーは22歳。出産時の体重は2700グラムだった。清涼飲料水会社の庶務課に勤め、給料は手取りで20万ちょっと。母親と妹・それから1匹の犬と一緒に暮らしている。犬の名は「ジェフ」で、犬種はシェパード。週末は近くのショッピングモールでお買い物。携帯のメモリーは仕事・友だち含めて300余件。テクノ・ミュージックを好んで聴く。自動車の運転が苦手。勝負下着の色はドぎついワインレッド。
 と、そういった経歴はたいして意味を成さない。彼女の“現在の”経歴はさして問題ではない。もっと話すべき経歴がある。
 彼女の前世はイカだった。サメに食われる最期だった。その前はチューリップだった。その前はキリギリスだった。さらにその前はカバだった。カバの前はカエデだった。これは寿命で枯れた。
 彼女の主な経歴を片っ端から並べると、ヒト・イカ・チューリップ・キリギリス・カバ・カエデ・アブラムシ・スギ・ダンゴムシ・ペンギン・松・サンマ・ニワトリ・レタス・オミナエシ・ウマ・(中略)・スズメ・ナマコ・ネコ・ムカデ・ポプラ・ミカン・ハチ・チョウ・柿・ウミガメ・トマト・ラクダ・カツオ・イヌ・イカ(1回目)・オオカミ・カブトムシ・トンボ・タイ・ゼンマイ・バショウ・タンポポ・カタツムリ・ユリ・タカ・ウニ・ネギ・ブナ・カタクリ・ヒト・ミズナラ・クスノキ・ヒノキ・カイコガ・ショウジョウバエ・藻・ワラビ・ゾウリムシ・ユキノシタ・(中略)・藻・知られていないシダ植物・ゾウリムシ・ミズケムシ・三葉虫・三葉虫・アメーバ・三葉虫・藻・アメーバ・藻・藻・藻・藻・藻・藻…。その他、酵母菌・プルテウス幼生・サルモネラ菌などは何度経験したかわからない。
 エミリーはネコ時代にセミを捕食した。そのセミは現在、ゴムの木に生まれ変わり、エミリーの家のダイニングルームを飾る鉢植えとなっている。そんな事エミリーは知らない。
 柿期のエミリーを育てていた人は、エミリーの果実とカニを一緒に食べて腹痛を起こした(柿とカニは食い合わせが悪いから注意が必要だ。スイカと天ぷらにも気を付けろよ)。その人は歳月を経てサツマイモになった時、未就学児のエミリーに収穫された。そんな事エミリーは知らない。
 スズメだったエミリーを分解したウジ虫は、現在エミリーの直属の上司となっている。少し厳しいが芯は優しい人だ。そんな事エミリーも上司も知らない。
 エミリーは以前にも人間だった時代がある。ヒノキ・クスノキ・ミズナラ、木として生涯を3回繰り返したあとの事だ──
 ──その時の彼女はシャミシュという名の女性だった。
 ある日シャミシュは敵対する部族の戦士・サラギンと情熱的な恋に落ちた。ふたりは他人の目を避けて森に入り、たくさんたくさん話した。
「じゃあね」
 いよいよ帰る段になってサラギンがお別れのあいさつに手を振ると、シャミシュは名ごり惜しそうに近寄ってサラギンの手のひらに自分の手のひらを重ねた。シャミシュはサラギンの目を見つめたまま、相手に合わせて手を動かす。彼女は湿り気のあるシーツのような肌をしていた。ラバーのようにサラギンの手に吸い付く。
「ちっちゃな手だね」
「そうかな。サラギンの手がおっきいんだよ」
 ふたりはそう言いながら、手と手を見つめた。ふたりはしばらく黙った。
 ようやくサラギンが意を決したように、言った。
「くちびるの大きさは、どうかな…」
「え…」
 その意味を問い正す間もなく、サラギンはシャミシュのくちびるに自分のくちびるを重ねた──
 ──忘れがたい甘い記憶は時間の流砂に漂白された。生物の肉体は砂のような原子が無数に固化して出来上がっている。死ねばサラサラと流れ落ちるだけだ。
 遠い過去に関わった生き物の生まれ変わりが、彼女の生活のあらゆるシーンに登場する。そういう事をまったく知らず、エミリーはカレーを食べている。タマネギを食べている。タマネギと化したサラギンを食べている。

<おことわり>
 この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係がございません。
 本作品の著作権は散文ブログ『ちりぶみ』に帰属し、許可無く内容の一部または全部を転載・放送・販売・レンタルする事は法律で禁じられた遊びです。また、個人的に楽しむ場合を除く無断複製・覚醒剤使用・万引きは絶対におやめ下さい。
copyright (C)2005 Prose Blog Chiri-Bumi. All rights reserved.



【STEP4】エミリーはカレーを食べ終わる

 エミリーはカレーを食べ終わった。残った分は寝かせて明日また食べる。
 1メガカロリーのカレーライスは彼女の溶鉱炉で盛んな熱を放出しながら分解されていく。かつて牛肉・ニンジン・ジャガイモ・タマネギ・米だった食物は、原子レベルに細分化される。炭水化物は炭素と水に還元されていく。
 エミリーの肉体は酸素・炭素・水素・窒素・塩素・カルシウム・ナトリウム・マグネシウム・カリウム・リン・硫黄その他の元素から構成されている。エミリーが死ねばエミリーの身体は原子単位に拡散し、エミリーを固形化した母なる自然へと還っていく。ちょうど、今日摂取した食材たちと同じように。
 この世はエミリーの破片、以前エミリーの一部だった破片で満ちている。かつエミリーの肉体は世界のあらゆる生命のおふるで構成されている。太古のエミリーさえ含まれている。輪廻転生はただ観念的なばかりの話ではない。原子単位で実際に起こっているのだ。
 エミリーは普段それを意識せずに暮らしている。満腹感に一息つき、モーツァルトをBGMにして皿の後片づけを始めた。
 今エミリーがホッと吐いた息は、かたわらの観葉植物(元セミ)に吸気される。二酸化炭素(CO2)は光合成によって水(H2O)と化学変化し、炭水化物(CH2O)と酸素(O2)になる。
 植物が排気した酸素は誰かの鼻毛を優しく押し分け、肺腑から取り込まれ、心臓のポンプに押し出された赤血球によって全身を駆けめぐる。かつてエミリーの体内を巡回した酸素原子は赤の他人の体内をくまなく愛撫し、卑猥な場所さえも通過し、やがて炭素ともうひとつの酸素と結びついて二酸化炭素となる。
 呼気された二酸化炭素は再び植物に吸われ、炭素原子1個と酸素原子2個に復元する。そのうちの酸素原子1個、もしくは2個ともが、エミリーの身体の中に戻る。同じ空気を呼吸し、同じ酸素をやりとりしている我々は、命の源を共有している。
 本当に、この世はエミリーの細胞のかけらで満ちている。当のエミリー本人は鼻唄まじりに皿を洗っているので気づく気配はさっぱり無いのだが。
 元来、世界はひとつだった。森羅万象は小さな小さな火の玉に凝縮されていた。途方もなく重たく質量の濃いその火の玉は、ある日突然バラバラに飛散した。その残りカスがこの世界。
 ビッグ・バンの時に撒き散らされたゴミがたまたま丸まって出来たエミリーは、宇宙に浮かぶ無数のチリのうちの一片。エミリーの頭の中で起きている思考・意図・着想・苦悩は単なる電気信号。
 今エミリーが聴いている音楽・モーツァルトの構成した天衣無縫の音楽、あれも脳内電流の産物。『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』は出来るべくして出来た。『魔笛』も宇宙のゴミの一部である。
 エミリーが何か想ってみても、実はそこにエミリーの意志は含まれていない。エミリーの思索はすべて電気信号。電子と陽電子が対消滅して光子が生まれるように、たまたま起きた自然現象に過ぎないのだから。その人生に、意味など無い。

<成分表示>
●名称: ヒト
●商品名: Emily K. Woodser
●原材料名: 水分、ミネラル、脂肪、糖質(砂糖・果糖)、食塩、蛋白質(バリン・アラニン・ロイシン・イソロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・トリプトファン・プロリン・グリシン・アスパラギン・システイン・グルタミン・セリン・スレオニン・チロシン・アスパラギン酸・グルタミン酸・アルギニン・ヒスチジン・リジン)、酸化防止剤(ビタミンC)、香料(エゴイスト)
●寸法: 高さ152cm×外径83・60・87cm
●重量: 44kg
●内容量: 120リットル
●保存方法: 直射日光の当たらない暗所に保管。
●製造年月日 1983年3月14日
●消費期限 2013年3月13日
●生産者 Tom Barleycorn & Anna K. Woodser
●販売者 蛇頭
※ 開帳後は消費期限に関わらずお早めにお召し上がり下さい。
※ 長期保存をする際は、脳と内臓を抜き取り、炭酸ナトリウムまたは炭酸ソーダの粉末をまぶして乾燥させたのち、防腐剤を詰めて乾燥。ホルマリン(0.012%ホルムアルデヒド溶液)を用いる場合は必ず監督者立ち会いの下で行なうこと。
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この記事に対するコメント

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【2005/09/15 16:56】 | #

あんた凄えョ。小説の可能性をケタ違いに感じさせてくれたゼ
大塚さん、こんな凄い作品を書いていたとは。

左メニューの名前の所ばかりクリックして、
作品一覧の所は見なかったから
わからなかったよ。

(少し言うと、実はこの作品に似た
コンセプトの小説を書こうと構想があったんだ。
タイトルは「CO2 1、2、3」ってのね。
ロータス1、2、3をオマージュにした。
でも、大塚さんは俺が構想したそれより
相当に踏み込んだ作品を書いていて驚愕した。
俺と同じ考えを持っている人が居て、
之ほどまでに書き込める人が居る事に。)


そして
「生命活動を続ける事」が一面では、
どーしよーも無く醜い事で
あるのを更に認識したよ。


人間一匹分の生命体が生命現象を
維持するためには、
残虐の限りを尽くして絶望的に多くの
生命現象を絶ち、
生臭い「息」や傍若無人の悪臭を放つ
「ウンコ」「小便」「屁」という
最悪の結果を周囲に撒き散らしていくしかない陳腐な事象。

そして憤怒と醜さの半永久サイクルが
この「悪夢という名の現実世界」
を形作っていく。

生きるという事は周囲の生物や物質全てに
悪鬼の形相で憎まれる事であり、
敵対する事である事。

そして、その悪夢のみを周囲に撒き散らす
生命活動を倍増させる、
恐るべき醜悪行為、交尾。

さらに恐ろしい事には、
動物はこれのみを遂行する為に生き、
獣欲の限りを尽くし、
お互いの性器を貪り擦りつけあうその宿命。

そしてその「交尾」という
一時的な快楽に溺れた後は、
「妊娠」「出産」という厳罰が待っている。

彼女自身のエントロピーが刻々と増大していき、
その生命活動の破綻が
機械的に忍び寄る様子。

そして、
「その人生に、意味など無い」
と言い切るソーカイな思い切りの良さ。

ぶっちゃけ、女性には書けない作品だと思うね。
これは、男のスカトロティズムの性欲があってこそ書けた作品だと思うんだ。

性欲はただ「無用の暴れん坊」のように
思われてるけど、
感性の一つであると思うね。
その感性を十二分に生かした、
恐ろしく凄い作品だよ。


さらにぶっちゃけると、
これは俺が今まで見てきた作品の中で
一番凄い。

俺は小説作品に接したといっても、
大学までの授業でやったのや、
趣味で見たり本屋で様子見に
パラパラッと拝見したもの位
しか無いのだが、
その中で俺がナンバー1と太鼓判を押した
「うわさのズッコケ株式会社」より
ソフィティスケートされている。

本当に、大塚さんが
「出世コース四段跳び」で
ノーベル文学賞を30代で
奪取する程に名声を得る事を、
古い感情脳と新しい理性脳の
両方で願ってます。

大塚さんは夏目漱石さえ
アッサリ凌駕する力がある。

小説家としての、重大な運命を背負った人だと思う。

大塚さんの文章力が大々的に認められ、
俺の目に狂いは無かった事をも証明して欲しいです。

ps
…個人的には、売れる前に
大塚さんのハガキ職人姿を見ておきたい
気もします。
「バカはサイレンで泣く」や「ANN」
辺りに投稿している姿…
ま、それは俺の悪趣味な
興味に過ぎませんが…
【2006/09/26 02:08】 URL | ROM #-

この作品が評価されたのは本当にうれしいです
 まず、謝ります。まさか1年以上前の作品にコメントが寄せられるとは予想だにせず、ROMさんの書き込みに今日まで気が付きませんでした。申し訳ありません。
 ──あいさつもほどほどに、長い返事をさせていただきます。

 私はこれまでに数百に及ぶ作品を書いてきました。しかしその大半はゴミ同然の品であり、私自身が出来映えに心底満足している作品は10足らずです。
 この『エミリーとカレーライス』はそんな10作品のうちのひとつ。散文ブログ『ちりぶみ』の旗揚げに華を添えるべく、また、他の執筆者(特に仁礼くん)を打ちのめすべく、相当気合いを入れて書きました。一見しただけでは知る由もないでしょうが、完成度を高めるために恐るべき手間暇が掛かっています。制作当時の事は思い出したくないくらいです。
 自分では「傑作がでけた」と思って喜んでいましたが、その割には周囲からの反応は薄かった(打ちのめすつもりが逆に打ちのめされました)。いい加減に書いた後続作品の方が評判が良かったりして複雑な心境とってもセンチメンタル。おのれのセンスを疑いました。
 それから一年以上が経過し、ようやく我が意を得るコメントが届きました。自作への好意的な批評に対して普段は必要以上に謙遜する私ですが、今回は「やっとわかってくれる人が現れたよコノヤロー!」という気分でお返事を書きます。他の作品はクソだから誉められるとただただ恥ずかしくてたまらないのですが、今回ばっかりは気分がいいです。(ただし、ノーベル文学賞やら夏目漱石やら重大な運命やらはさすがに過大評価なのでこそばゆいのですが…)

 この作品は量子論と人間性の疎外が二大軸となっています。制作当時に興味関心が高かったアインシュタイン物理学とRadioheadのアルバム『Kid A』からの影響です。──元々のアイディアは「本来は一個とか一本とか数える食べ物を人間に見立てたら気持ち悪いんでないかい?」なんですけどね。ここから徐々に発展していきました。いわゆる“恐るべき手間暇”で。
 作業手順書とも評せる機械的なレシピをこの上なく血腥い表現に改めたり、またその反対に、血の通った人間を無機質な成分表示で表したりすることによって、食物と人間を等価な存在に換えてしまいました。人間なんて偉いようでいて結局は循環する原子の集合に過ぎない。その配列がたまたま高度だっただけ。人間の細胞に含まれる原子はかつて何かのウンコだった経験もある。──ROMさんが「『生命活動を続ける事』が一面では、どーしよーも無く醜い事であるのを更に認識したよ」と書いてくれた通りです。まさにそこにこそこの作品の意図がありました。共感してもらえたのは非常に嬉しいですね。さすが同じアイディアを共有していただけある!


 以下、ROMさんカキコへの個別解答。

■性関連
 こっち方面は今回は意図していませんでした。しかし、性もこの作品で取り扱ったテーマと同じ軌道上にある問題です。首肯すること頻りでありとても参考になりました。特に、性欲による感性うんぬんのくだりは私本人は気付いていなかっただけに教えられる所が多いです。本当にこの作品を深く理解し、言わんとする内容に共感してくれているのだと実感しました。

■「これは俺が今まで見てきた作品の中で一番凄い」
 もっと本読め(←照れ隠し)。
 マジっすかー。変に謙遜せず、そのお言葉ありがたく頂戴させていただきます。ありがとう。

■うわさのズッコケ株式会社
 今度読んでみます。

■ノーベル賞とか夏目漱石とか
 そりゃ言い過ぎです。

■ハガキ職人
 ボツになるとすぐへこたれる性格です。打たれ弱いのでとてもじゃないが無理です。


 えー、と、いずれにせよ、ありがとうございました。最近は完全に筆を置いていましたが、ROMさんのおかげで再び創作意欲が首をもたげ始めました。文名が上がる事はまずないでしょうが、今一度まじめに文学に取り組んでみようと思います。
 あ、次の作品はダメです。来年から(笑)。


(追記)
 作品末尾の<成分表示>からかろうじて読み取れる情報なのですが、このエミリーちゃん、実は片親で、しかもこのあと犯罪組織に拉致されて人身売買されちゃうんです。そういった家庭の問題を敷衍して扱ったのが次作の『F-A-M-I-L-Y』だったのですが、こちらは時間がなかったため消化不良で完全に失敗作でした。晩霜作品のリストから抹消したい(笑)。
【2006/11/06 21:41】 URL | 大塚晩霜 #-


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