散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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シンデタマルカ!   (2006/08/04)
 乗客約五百人を乗せた航空機が、上空でトラブルに巻き込まれた。突然の機体の揺れに乗客は驚き、そして恐怖に包まれた。始めの内は、動揺した乗客を必死に落ち着かせようとしていたスチュワーデス達も、このトラブルがただ事で無いことに気付いた後は、床にへなへなと座り込む者もいた。すると、機長からの機内アナウンスが流れた。

「みなさ~ん! この飛行機は落ちますヨ、ひひひっ。上空一万メートルからマッサカサマ! 誰も助からない、み~んな死んじゃいますヨ~! ひひひっ」

 機長は既に頭の回路が吹っ飛んでいた。一番先に機体の状況を知るのは機長であり、一番先に死ぬという現実を突きつけられるのも機長である。並の人間にこの状況が耐えられるわけがない。

 その機長からのアナウンスで、機内はますます騒然となった。そもそもトラブルが解消したとしても、機長があの状態では助かるわけがない。機内には絶望感だけが漂っていた。品の良い紳士は頭を掻きむしって歯ぎしりをし、金髪でタトゥーの入った若者は、歯をガクガクさせながら身体を震わせていた。スチュワーデスも座り込みヒステリックに泣き叫んだ。何も知らない赤ん坊でさえも周りの状況に驚いて大声で泣きだした。しかし、その赤ん坊をなだめるはずの母親はショックで既に気絶していて、失禁したのか座席からは水のようなものが流れだしていた。

 老夫婦は二人して手を合わせ、今更効果のあるわけがないお経を延々と唱え続けた。手帳に熱心に何かを書き殴っている者もいた。その行為が無意味だとも気付かずに。気の狂った者ももちろん居て、意味不明な言葉を喚き散らしていた。その方がある意味幸せなのかもしれない。死の恐怖を感じずにすむのだから。

 若いカップルは、手を握りしめて二人して目を瞑っている。新婚夫婦は抱きしめ合い、死ぬ時は一緒だよ、などとヌカシテイル! 死んだ後に、二人一緒に地獄にでも行くというのか。

 血気盛んな若者二人が、近くの席の女性に襲いかかった。死ぬならいっそ女を犯してやる、目には狂気が滲み出ている。襲われた女性は悲鳴をあげながら助けを求め、必死に逃げようと試みる。しかし周りの客は知らん顔。この状態でヒトダスケして何になるというのだ。

 

 正に機内は阿鼻叫喚、生き地獄と化していた。そして機体は、小刻みに揺れながら徐々に失速していった。機内で流れる一秒一秒は、乗客にとってひたすら長く感じられた。そしてその時がいつまでも続くかのようだった。

…その時である。今までずっと目を閉じて微動だにしなかったサラリーマンが立ち上がり、機内中に響き渡るような大声で叫んだ。

「死んでたまるかっ!」

 機内中の人間が、ビクっとしてその男に注目した。そして男は再び叫んだ。

「死んでたまるかっ!」

 単身赴任からの数年ぶりの帰宅、浮かぶのは妻の顔…、今夜をどれだけ待ち侘びたことか…。

「し、死んでたまるかっ!」

 男に触発され、今度は中年の男性が叫んだ。翌日は娘の結婚式。二十年以上も苦労して育ててきた、娘としての最後の夜、その娘の部屋を天井から覗けないとは。この性癖を引きずって生きてきた意味が無くなるじゃないか…。

「死んでたまるかっっ!」

 続いてサングラスに柄シャツという、バカンス帰りのような格好の男性が叫んだ。何年もかけて計画し実行した、クダラナイ妻の保険金殺人。誰にも気付かれない完全犯罪をやり遂げたというのに。この金を使いまくらないまま死ねねぇよ…。あの世で妻が、不敵な笑みで待っている。

「死んでたまるかぁ!」

 制服を着けた、男子学生が叫んだ。ノート一杯に書き綴った、クラスメイトの娘への鬱屈した愛の賛歌、自宅のパソコンに貯め込んだアダルト画像、近所で盗んでは机の引き出しの奥に貯め込んだ、女性用下着。あんなものを残したままでは、死んでも死にきれない…。

「死んで…たまるか…」

 中学生くらいの女の子が呟いた。一人もカレシを作らないまま死ぬなんて、エンコーのオヤジ以外に男を知らないなんて、女として悲しすぎます…。

「死んでたまるくゎぁっっ!」

 入れ歯を吐き出しながら、金持ちそうな老人が叫んだ。せっかく手にした若くグラマラスな嫁。これまでの苦労を忘れてバイアグラ生活を楽しもうとした矢先というのに。死んでもこの嫁の肉体はワシのもんじゃ~っ!

「死んでたまるか~~!!」

 老人の隣の嫁が、前に突き出た胸を揺らしながら立ち上がり絶叫した。アタシのこの身体で手に入れたカネモチノオクサンと言う地位。隣のエロオヤジが死ぬのを待って、遺産で若い男を買い漁ろうとしていたのに、ここで死んだらアタシはただの笑い者じゃない! ザケンジャナイワヨ!

「死んでたまるか!」

 メガネをかけたイカニモという感じのアニメオタクが叫んだ。今夜はずっと見続けてきたアニメの最終回、ヒロインの×××ちゃんのサイゴノユウシを見ないまま死にたくない…。×××ちゃん萌え~~!

「死んでたまるか!」「死んでたまるかっ!」「死んでたまるかっっ!!」「死んでたまるくゎぁっっ!」

 乗客たちは立ち上がり、皆叫んだ。いつの間にか全員で「シンデタマルカ!」の大合唱になっていた。皆狂ったように叫び続けた。そして次の瞬間、機体は急激に失速し、マッサカサマに下へ下へと落ちていった……。

 

 ソシテ、クソヤロウドモハ、ジゴクヘオチタノデス。



新作で「窓際族の憂鬱」というものを書いていたのですが、間に合わずに数年前に書いた作品を掲載させていただきました。
もしこの週末で書き終えられれば、14日に差し替えさせていただきます。

この作品は如何でしたでしょうか? まだ死にたくない方は↓をクリック!

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