散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
プロフィール

  • 執筆陣紹介

    P助
    主宰。企画/発案担当。
    え、それって口だけってこと!?(笑)


    大塚晩霜
    デザイン担当。ブログのレイアウトが悪いとすればコイツのせいなんだ。
    週刊とりぶみ


    ナチュレ
    [プロフィール作成中...]


    仁礼小一郎
    沖縄出身ゴールデンルーキー

    某サークル六代目総長

    しがないサラリーマン
    ~順調にジョブチェンジ中!~
    (HP:気分は下克城!!
    See-Saa Night Fever!!


    こさめ
    万緑ソー中、紅一点!? 
    ココロに移りゆく何ごとか


    イシカワ マキ
    長野市在住。



カテゴリー



月別アーカイブ



ブログ内検索



リンク

このブログをリンクに追加する



スポンサーサイト   (--/--/--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



夏のはじまりに   (2006/07/24)
 会社からの帰り、何の前触れもない夕立。急いでビルの軒下に入る。
 「この時期の予報はあてにならねえ」
 ひとつ呟く。降りはかなり強く、道路脇があっという間に川のようになった。僕はずぶ濡れになったワイシャツをみて、昔のことを思い出していた。
 「そういやあの時も、こんな風にシャツをずぶ濡れにして帰ったんだよな」
 それは中学一年の夏、ある放課後のことだった。


 授業が終わり、僕はいつものように理科室へと向かった。僕の所属する「アマチュア無線部」の活動場所だ。アマチュア無線部というのは、無線機を使って電波を出して、どこかの知らない誰かと会話して、無線交信した証になるカードみたいな物を相手に郵送して、そんなことをやったりやらなかったりする部活だ。
 この日は30人くらいが理科室にいて、ずいぶんと賑やかだった。ちなみに無線部の部員数は全部で20人もいない。ここにいるほとんどが部外者だ。部活に出てくる人数はまちまちで、少ない時だと5人といないこともある。そうかと思うと今日のように、やたらと人が集まったりする。なんとも不思議な所だ。
 「なんか人がいっぱいいますね、なんかあるんですか?」
 「いや何も、そういや何でこんなにいるんだ?」
 いつもこんな調子である。これでは真面目に無線交信などできる雰囲気ではない。さっき「やったりやらなかったりする」と言ったのはこういうことである。もっとも真面目と不真面目のさかい目もハッキリしないのだが。無線交信はいいとしても、「写ルンです」のフラッシュ部分を改造してスタンガンもどきを作ったりするのはとても真面目とは言えないのだが、作っている先輩たちの表情は真面目そのものである。だから今日も、「無線」はできなくとも「部活」はするのだろう。
 ふと見ると、部外者の連中が何やら理科室のものをゴソゴソとあさっている。ここは理科室だけあって、いろんな物がある。どうやら蒸留水を入れるボトルに興味を引かれたようだ。高さ10センチくらいの塩化ビニール製のボトルで、蓋の部分には先の細い管がついている。水を入れてボトルを押してやると、管の先から勢いよく水が飛ぶ。彼らはさっそく水を入れて、水鉄砲みたいにして遊んでいる。やられた方も負けじとボトルに水を補給し反撃している。それがだんだんとエスカレートして、水鉄砲紛争になってきた。ついには誰かが水の入ったボトルごと投げつけて、
 「てりゅーだーん」
 などと叫んでいた。手榴弾はある先輩のカバンに着弾した。
 「なにしやがんだこのヤロー」
 その先輩は本気で怒っているようだった。
 「あーあ、こんなに濡れてるじゃねえか。くっそ、みてろよ。今から家に帰ってエアガン持って来てやるからな。そんな水鉄砲とはワケが違うぜ」
 先輩は理科室を飛び出していった。僕たちはその先輩を放っておいて、本格的に水鉄砲ごっこをやろうと、椅子を積み上げてバリケードを作り始めた。理科室が南北二つの勢力に別れ、水鉄砲紛争は今や全面衝突へと発展したのである。理科室だけあって水道の蛇口は多く、南北ともに資源は確保されていた。
 外人部隊(部外者)には体育系の部活が多く、両軍ともに士気・能力は高かった。補給が楽なこともあり、機関砲(ボトル)からは絶え間無く弾丸(水道水)が発射された。予想以上に射程は長く、敵陣まで余裕で届く。国境(理科室中央)付近にカバンを置き忘れた奴は、まずカバンが狙われた。教科書の入ったカバンに、容赦なく手榴弾(管のないボトル)が投げつけられるのだ。それを取りに行けば集中砲火(集中放水)が浴びせられる。そうなれば即死(パンツまでずぶ濡れ)だ。また、手榴弾の威力は高かったが、敵陣に投げ込むとすぐに給水され、投げ返されてしまう。なかなか味な反撃だ。両軍の死者(しつこいようだがパンツまでずぶ濡れ)はおびただしい数になった。それでも兵士の士気は依然として高く(だって面白いんだもん)、戦いはいつまでも終わらぬかのように思われた。しかし、それは突然訪れた。
 「お前ら何やってんだあ!」
 射撃が一斉に止む。戦争は終わった(先生に見つかった)のだ。


 僕たちは、ずぶ濡れで職員室前の廊下に並ばされた。そしてこれから裁判(説教)が始まるのだ。
 「お前ら何部だ」
 みんなキョロキョロと顔を見合っている。
 「何部というか・・・」
 「どうした、答えろ」
 「僕は無線部です」
 「僕は科学部です」
 「僕は卓球部で・・・」
 「ちょっと待て!お前ら何なんだ。と、とりあえず、いつもあの教室を使ってるのはどこなんだ」
 「アマチュア無線部です」
 「それじゃ端から所属する部を言ってみろ」
 「アマチュア無線部です」
 「無線部です」
 「科学部です」
 「科学部です」
 「卓球部です」
 「硬式テニス部です」
 「バスケ部です」
 「軟式テニス部です」
 「サッカー部です」
 「バドミントン部です」
 「部外者の方が多いじゃねえか!」
 先生が呆れるのも無理はないと思う。部外者の方が多い部活動って、確かにおかしい、当事者だけど。
 その後、僕たちはこっぴどく叱られた。ずぶ濡れの姿で廊下に立たされて説教されている姿は、さぞかし情けなかっただろう。
 「顧問の先生に言っておくからな! 無線部!お前らは停部だ! とりあえず解散」
 僕たちはトボトボと理科室に戻った。部外者の連中も、言葉も無く帰っていった。水鉄砲で遊んでて活動停止かよ、カッコ悪いよ、理由が。俺たちは「部活」をやっただけじゃんか。もっとも、今日の「部活」はハメをはずし過ぎたかもしれない。教室に会話はほとんど無い。ただ「はあ、何やってんだ俺達は」的な空気が流れる。そんな空気を切り裂くように、例の先輩が戻ってきた。
 「待たせたなクソ野郎共! さっきはよくもやってくれたな! このM-16でテメエら皆殺しにしてやるぜっ!」
 と威勢よく飛び込んできたものの、みんなのリアクションは全く無い。
 「あれ、どうしたの?撃ち合いは?」
 「バーカ! もう終わったんだよ」
 「え、そうなの。何でやめちゃったの?」
 「先生にバレたんだよ! 俺たち停部かもしれねえ」
 先輩はバツが悪そうにして銃を降ろした。弾を撃ち尽くしてやるぜくらいのテンションで来たのだろうが、結局彼のM-16からは一発のBB弾も発射されることはなかった。
 僕は友達とふたり、ずぶ濡れで帰った。部活の方は結局、二週間の活動停止と決まった。あの日以来、部活ができないまま夏休みに突入してしまったのだ。


 ずぶ濡れのワイシャツを見る。あの時は馬鹿なことをしたと思ったけど、今にしてみればいい思い出だ。ついつい顔がにやける。いかんいかん、傍から見たらキモいぞ。あわてて表情を直す。
 雨があがった。今年も夏が来た。そうだ、あの夏も、はじまりはずぶ濡れのワイシャツだったんだ。







今回の作品はいかかでしたか?
面白かったなあと感じたら下のバナーをクリックしてください。
スポンサーサイト





この記事に対するコメント

懐かしい感じ(^^)
楽しく読ませていただきました!
らんららも中学くらいのことを思い出しました。
クラスの女子全員で、体育、ボイコットしました。
なんでかって、寒かったから。
それだけで、体育危惧倉庫に立てこもりました(^^;)
ばかでしたねぇ。
とても、面白かったです。
またきます。
【2006/07/24 12:18】 URL | らんらら #-

カキコありがとうございます^^
らんららさんいつもありがとうございます^^
作者ナチュレがただ今サイトを閲覧できず、レスできないとのことでした。

来週あたりには、閲覧できるようになりそうとのことですので、お待ち下さいませ~><
【2006/07/27 19:05】 URL | P助 #tZDc9YLU

お待たせいたしました。
らんららさん。コメントありがとうございます。
返事が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

中学のころくらいだと、くだらないことで盛り上がったり、
変なところで一致団結してしまったりするものです。
お馬鹿でしたねえ、俺もみんなも。

旅行先で雨に降られて戦死(パンツまでずぶ濡れ)
のナチュレでした。
【2006/07/29 09:54】 URL | ナチュレ #-


お気軽にコメントをお書き下さい











«  | ホーム |  »


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。