散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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テガホン<P助>   (2006/05/04)
あれは幾つのころだったか。
まだ小さかった頃と言うのは覚えてるが、それ以上は忘れちまった。
ただ、その瞬間のことは今でも鮮明に覚えてる。

俺は本の好きな子供だった。
毎日いろんな本を取っ替え引っ替え読んでいたもんさ。

そんなある日。
俺はいつものように図書館にいくと、そこで埃を被った本を見つけたんだ。

タイトルはなく、薄汚れた茶色の外装。
なんともなく気になってその本に手をかけた瞬間。

ばくん!!!!
鈍い音と共に、そいつは俺の左手に噛み付いた。

……歯はなかったので「噛み付いた」という表現は適切ではないかもしれない。
だが、それ以来そいつはどうやっても俺の左手から離れなくなった。

痛みはなかったが、幼い俺は泣き喚き、両親は驚き戸惑った。
医者や学者、牧師、果ては胡散臭い占い師に俺の手を見せたが、誰一人その本を外すことは出来なかった。

ワイドショーや見世物番組に取り上げられたりもしたが、すぐに風化していった。
両親が作ってくれた『本を持っているように見える義手』のお陰もあり、親しい人間以外俺の手のことを知るものはいなくなった。

そんな、俺を不幸にしたかに見える本だが、実はとんでもない力を秘めたものだった。

茶色い装丁には、何も題名は書かれていない。
何気なしに中を開けば、そこには日記でも書きたくなるかの如き白紙が続く。

だが、一度俺が念じれば、その本は古今東西どんな書物にもなるのだ。

小説、雑誌、漫画、医学書、写真集、果ては説明書まで。
こと、「本」と名がつくものであればどんなものにでもなる。

本好きな俺にとってこれほどの道具はあるだろうか、いやない。

移動時間にはもっぱら小説と漫画だ。
車の中、電車の中、船の中、飛行機の中、俺は話題沸騰、人気爆発の新刊を次々と読み漁る。
最近のお気に入りはあれだ、あー、ロボットの刑事が小さな少年ロボットと出会ったり、とんでもなく強いロボットに立ち向かう漫画。
なんでも、かの巨匠の作品のリメイクらしいな。これ以上は諸般の事情で語れない。わかってくれ。

こんなこともあった。通りを歩いていると、突然目の前のおばあさんがブッ倒れちまったんだ。
辺りが騒然とするなか、俺は左手の本をばっと開いて応急処置をしてやった。
もちろんそこに現れていたのは「家庭の医学」。
医学書でもよかったんだがな、ありゃあ俺には難しすぎて理解するのに時間がかかるし、急な時にはやっぱりこれだ。

そうそう、街行くアイドルを見かけて、とっさに左手をそいつの写真集にしてサインをもらったこともあったな。
そのページは破いて額にいれて、ちゃあんと飾ってあるぜ。

そう、この本はいくら破いてもページがなくならない。
いったん閉じれば、元通りだ。

友人たちと、雪山で遭難した時は、これを燃料にして難を逃れたもんさ。

そうしているうちに、だんだんと周りのやつらも俺のことを奇異の目で見なくなっていった。
TVにも、見世物番組ではなく「書籍評論家」として出演するようになった。

いつからか俺は、「テガホン」って呼ばれるようになっていた。

そんな俺だが、そろそろお前らともお別れしなきゃならない。
あの大国の研究者どもが、俺の左手に目をつけたんだ。

詳しい原理はしらないが、なんでも、この小さな箱の中に俺の左手を入れておけば、永久機関になるんだそうだ。
頭のいい奴が考えることは違うねぇ。

おっと、そろそろ眠くなってきやがった……。このまま冷凍冬眠してりゃ、目を覚ましたときには「異星人」が出迎えてくれるんだからよ……。
それじゃ……あば……よ……。


全人類の喝采の中、地球人の代表テガホンを乗せた最新鋭ロケットは宇宙へと旅立っていった。





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この記事に対するコメント

テガホン
手に本がある、どういうことだろう?と思いつつ読み進めてみると「なんて便利なんだろう!」と他にどんな使い道があるのかな、とわくわくしながら読んでました。他の小説も他の方の小説もとてもおもしろかったです。
リンクさせていただきました。よろしくお願いします。
【2006/05/27 09:18】 URL | Mrジンクス #-

ありがとうございます
せっかくコメントを頂いたのに半月も放置ですんません><
拙文お読み頂きありがとうございました。
毎月4の付く日に更新しておりますので、これからも是非是非ご贔屓にお願い致します^^

ちなみにこの「テガホン」は、「テガ」シリーズ三部作の二作目でして、以前別の場所で「テガボン」という作品も書いております。
三作目「テガポン」のリリースは未定ですが、いつか必ず書き上げたいと思っております。

これからもどうぞよろしくお願いします^^
【2006/06/14 21:37】 URL | P助 #tZDc9YLU


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