散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
プロフィール

  • 執筆陣紹介

    P助
    主宰。企画/発案担当。
    え、それって口だけってこと!?(笑)


    大塚晩霜
    デザイン担当。ブログのレイアウトが悪いとすればコイツのせいなんだ。
    週刊とりぶみ


    ナチュレ
    [プロフィール作成中...]


    仁礼小一郎
    沖縄出身ゴールデンルーキー

    某サークル六代目総長

    しがないサラリーマン
    ~順調にジョブチェンジ中!~
    (HP:気分は下克城!!
    See-Saa Night Fever!!


    こさめ
    万緑ソー中、紅一点!? 
    ココロに移りゆく何ごとか


    イシカワ マキ
    長野市在住。



カテゴリー



月別アーカイブ



ブログ内検索



リンク

このブログをリンクに追加する



スポンサーサイト   (--/--/--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



Hard Luck Japanese Man   (2006/04/04)
             -1-

 どうしてこんなことになっちゃったんだろう。パニックになってグルグルぐるぐる回る頭の中で思い出してみる。そう、あの日ボクは秋葉原でアイツに会ったんだ。そして全てが始まった…。
 

 秋葉原の某楽器店で、ボクが暇つぶしにギターの試奏をしていると、後ろからいきなり外人に話しかけられた。
「ハーイ!」
 陽気な声に驚いて後ろを振り向いてみると、声とは対照的に何やら陰のあるやつれた外人がそこに居た。
 ボクは自慢じゃないけど、留学経験もあって英語には堪能だ。だから外人相手にも物怖じなんてしない。「何か用かい?」とボクは英語で返事をした。
 ボクが流暢な英語で返事をしたもんだから、その外人は驚いて、そして何故か笑顔になりこう言ったんだ。

「実はキミに折り入って相談があるんだ。いきなりこんなこと言うのもなんだけど、一緒に来て話を聞いてくれないかい?」
 そりゃボクだってその外人を疑ったよ。でも、何だかすごく困ってるみたいだったし、何より不思議と気があったっていうのかな。だからボクは思い切って話だけでも聞きに行くことにしたんだ。

 ボクが連れて行かれた場所は、楽器店から10分ほど歩いたホテルだった。その部屋の中でボクは、驚くべきことを依頼されたんだ。

 その外人の名前はマークといった。マークはギタリストで、トーキョーにもツアーで来たらしい。ボクがマークにお願いされたこと、何だと思う? びっくりしたよ、だって「オレの代わりにライブでギターを弾いてくれないか?」って言われたんだから。
 それまで気付かなかったけど、マークは左手に怪我をしているみたいだった。包帯を巻いていて、それをポケットに突っ込んで隠してるんだ。そう、マークはその怪我のせいで、ギターを弾くことが出来なくなってしまったらしい。

「キミがギターを弾いているのを偶然見てね、なんて良いギターを弾くんだって思ったんだ。それでキミこそオレの代役に相応しいと思ってね。突然だけど話しかけたんだよ。それに英語まで話せるなんて。パーフェクトさ」
 他人に褒められて悪い気なんてしない。ボクは少し嬉しくなって、気をよくしながらマークに尋ねた。
「で、ボクは何をすればいいんだい?」

「キミ、KISSってバンドを知ってるだろう? キミにはそのライブでギターを弾いて欲しいんだ」
「KISSだって!?」
 あまりのことに、ボクは驚きを隠せなかった。


             -2-

「KISSって…、あのKISSかい?」
「そう、あのKISSさ」
「確かにKISSは今ツアーで日本に来てるけど…。あ、来日を記念したKISSのコピーバンドとか?」
「いや、本物のKISSだよ。キミは武道館でギターを弾くんだ。あのKISSのメンバーとしてね」
 マークはニヤリと笑った。けれどボクには何が何だかわからなかった。だって、ボクがあのKISSの中で演奏するなんて考えられるかい?

「馬鹿げてるよ! それにそんなの無理さ。だってボクはただの一般人だよ? しかも日本人だ。第一、ボクはKISSのことそんなに知らないんだよ?」
「大丈夫さ、キミの腕があればプレイは全く問題はない。曲はオレが責任持ってみっちり教えるさ。だから演奏に関しては何の問題もないんだ。あとはキミにやる気があるかどうかさ」
「でも…。やっぱりボクなんかには無理だよ…。あまりに突然過ぎるし。他の人を当たってくれないか。プロミュージシャンなんて探せばいくらでもいるじゃないか」
「どうしてだい? キミだって、いつかは武道館のような大きな舞台で思いっきりギターを弾きたいと夢見てるだろ? その夢が叶うんだ、素晴らしいじゃないか!」
マークはどうしてもボクにこだわるみたいだ。そこがボクにはどうしても気に掛かる。
「ねぇ、どうしてボクなんだい? ボクよりギターの上手い人なんて探せばいくらでも居るだろう? そりゃ英語は喋る自信あるけれど…」

 するとマークは何故かボクの目の前に立って、いきなりボクの両肩を掴んで、力強くこう言ったんだ。
「キミにしか頼めないんだよ」
 そして続けて、今度は囁くようにボクに言った。
「今その理由は言えない。もしキミが引き受けるんだったら話せるけどね。これは極秘事項なんだよ。もしキミが引き受ければ、日本人で知っているのはキミだけってことになるね」

 このマークの囁きは、ボクの頭の中をグルグルと駆け回って、きっとボクを何かに酔わせたんだ。日本人でボク一人だけ…。夢の武道館でのライブ…。そして何より、KISSがボクを必要としてくれている…。何だか夢の中に居るような心持ちだったんだ。
 気付いたらボクはマークに引き受けることを承諾していたよ。マークの嬉しそうな顔ったらなかったね。

 こうしてボクは、一週間後の武道館ライブに向けて厳しい練習をこなすことになったんだ。
 でもおかしいな、KISSにマークなんて名前のギタリスト居たっけ…?


             -3-

 ライブまでの一週間、ボクはマークとマンツーマンで練習に明け暮れていたよ。何しろやることは山程あったんだ。始めボクは曲さえ覚えてしまえば何とかなると思っていたし、それならまぁ3日もあれば大丈夫なんじゃないかなって思ってた。けどそれは大きな間違いだったんだ。そう、KISSはただのロックバンドじゃなかったんだよ。

 ボクはKISSのCDを聴くよりもよりも映像を見ることに重点を置いて練習させられた。マークは「曲と思って覚えるよりも、ショウだと思って覚えてくれ。それが一番早いんだ」とボクに言っていて、数日でギタープレイをある程度仕上げた後は動きの練習ばかりさせられたんだ。「ここではこう動いてソロを弾いて、この曲はステージ中央のマイクでコーラスするんだ。そしてここでは…」ってこんな風に、まるでお芝居でもするかのように、一つ一つの動きが完璧に決まっていて、ボクはギターを演奏しているというよりも、ギタリストを演じているように感じるようになっていったんだ。

 こうして一週間の厳しい特訓を終え、いよいよ武道館でリハーサルをすることになった。ここでようやくKISSの他のメンバーに会えるはずだ。何せボクはこの一週間、マーク以外の誰にも会っていないんだからね。
 マークが「武道館に向かおうか」って言ってくれるまで、ボクの心のどこかにはまだマークのことを完全に信じ切れない部分があったんだと思う。だから武道館に行く時は嬉しかったよ。でもね、ここで一番重要で、一番信じられない話を聞かされることになるんだ。

 武道館に向かう車の中で、マークはボクの方を向き、真剣な面持ちでこう言った。
「シンジ、これまでの特訓をよく頑張ったな。やはりオレの目に狂いは無かった、キミは最高の代役さ」
「なんだいマーク、いきなり改まって。ボクが頑張れたのもマークの指導のお陰じゃないか」
「シンジ、今から話すことをよく聞いてくれ。極秘事項を話すから…」
 ボクは遂に来たかと思って黙って頷いた。
「今日シンジはシンジでは無く全く別の人間として演奏してもらう。オレが身振り手振りからコーラスの仕方まで細かく指示していたのはその為さ」
「というと…ボクはマークに成りすますってことかい?」
「いや、キミが成りすますのはエースの代役を務めるトミー・セイヤーさ!」
「トミー・セイヤー!?」
「キミは今日から三代目トミー・セイヤーになるんだ!」


             -4-

 マークが初めてトミーの代わりにステージに立ったのは、数年も前のことらしい。親友だったトミーがKISSのギターを弾くことになった時、最も応援していたのがマークだった。しかしある時、トミーは心労からステージに立つことが苦痛になっていって、遂には耐えられなくなってしまったんだ。そしてそのことを唯一相談したのが、一番信頼していたマークだったんだ。「このままではトミーは心労で精神的にも身体的にもダメになってしまう」、そう考えたマークは一計を案じることにした。そう、それはマークが何喰わぬ顔でトミーになりきり、ステージに立つというものだったんだ。こうしてこれまでの数年間、二人は代わる代わるにステージに上がった。観客にも、メンバーにも、誰にも気付かれずに…。

 そんなマークとトミーの関係だったんだけど、負担が大きいツアーはもっぱらマークの担当だった。しかし今回、マークは日本で手に怪我を負ってしまった。ギタリストの命とも言うべき指をね。
 もしもここがアメリカだったら、すぐにトミーと入れ替わっただろうけど、日本じゃどうしようもない。怪我のことをメンバーに話せば病院に連れて行かれ、正体がばれてしまう。そこでマークは考え抜いた末に自分の代役を立てることに決め、ボクに白羽の矢を立てたってことだったんだ。

 確かに凄い秘密だ。この話を聞いてボクはビックリしたよ。考えてみるとマークと会ってからというものずっと驚いてばかりだ。そしてそれと同時に、自分の責任の大きさに唖然としてしまったんだ。だって、お客さんにはまだしも、他のメンバーにだって正体は秘密なんだから…。
 それでももうボクは後戻り出来ない。この秘密を知ってしまった以上、ボクは三代目として自分の役割を果たさなければいけないんだ。ボクの心には、既に強い使命感で溢れていた。そうさ、ボクはやってやる…。
 
 
リハというのにメイクをしてきたボクに、ジーンが愉快そうに話しかけてきた。
「ヘイトミー、どうしたんだ? もうメイクしちゃって。キアイ入ってんのか?」
「そうさ、日本はオレの大好きな国だからな。明日の本番が今から楽しみだよ」
「HA HA HA。それならいいが、あんまり気負いすぎるなよ。何だか声の調子がおかしいぜ? 本番に影響が出ないようにな」
「あぁ、わかったよジーン」

 リハを何とか終え、遂に本番を迎えた。ボクの本当の試練はここからだった。


             -5-

 本番前、ボクはスタッフからライブのセッティングリストを貰った。そしてボクはそのリストを完全に暗記したんだ。舞台の台本みたいにね。
 リストの中身はスゴイ量だったよ。普通セッティングリストなんて、曲順と演出が少し書かれているくらいだけど、全く違うんだ。見た目から分厚くて、そして演奏中のことが事細かに書かれてるんだ。例として、冒頭部分を見せてあげようか。

-----------------------------------------
SEの曲が終わり、会場の照明が落とされる。スタッフの開始合図で控え室を出発。ステージまで4人で練り歩く。その際、カメラマンからの映像が客席に中継されているので、各自気を抜かないこと。(カメラ目線も可)
ステージに到着し、各自が持ち場について準備完了後、幕が落とされる。そこで台詞。
ポール「Alright Tokyo! You wanted the best, you got the best! The hottest band in the world, KISS!!」
爆発などの演出と共に、一曲目「King of Night Time World」スタート。
-----------------------------------------

 とまぁこんな感じで、曲から曲の間まで全て記されているんだ。それどころか、曲中でも「ここはジーンにスポットライト。ギターソロでトミーは左のお立ち台の上に行くこと。そこにライト」なんて風にかなり細かく決められているんだ。ほんとに舞台の台本みたいだよ。
 だからボクは、演奏をこなすよりもライブでの流れや決められた動きを忘れないようにこなす方が何倍も大変だったし気を遣ったんだ。

 でも一週間の急ごしらえではミスも生じたよ。突然の爆発にはビクッてしてしまったし、炎が上がったときには熱くて暑くて、焼けちゃうんじゃないかと思った。ジーンが天井から吊されたステージの上で演奏してる時は、落ちてきやしないか心配でたまらなかった。ボクのソロの時はライトが集中して眩しいし観客の視線は恥ずかしいし、逆にポールが客席の中で歌った時なんて誰もボクの方を見てやしないから少しふてくされもした。
 でもジーンと二人で1つのマイクにコーラスした時、ジーンから「緊張せずに気楽にやれよ」って話しかけられたのはスゴイ嬉しかったよ。

 こうして初日を終えその後の公演も無事こなし、ボクは満足感で一杯だった。けどそれが気の緩みを生み、そして遂にボクの正体が遂にばれてしまったんだ…。


             -6-

 最終日の公演を終えたボクは、程良い疲労感と大きな充実感に酔っていたんだ。もちろんビールも飲んでいてお酒にも酔っていたけどね。
 そして控え室で、何を思ったか衣裳を脱ぎながら濡れタオルで顔をゴシゴシやっちゃったんだ。メイクをしてるなんてこと忘れていたよ。ましてやボク自信が秘密の代役だったことなんて、完全に忘れてしまっていたんだ。

 そこに、エリックがやって来た。エリックはオリジナルメンバーではないけれど、これまで何度もKISSのライブに出演してきたメンバーの一人だ。そしてそのエリックが、メイクのはげ落ちたボクの顔を見てこう言ったんだ。

「フー・アー・ユー!?」(あんた誰?)

 ボクは焦ったよ。死ぬ程焦ったよ。どうしていいかわからなかったよ。頭が混乱して、何が何だかわからないまま、事の始まりを思い出していたよ。
 そう、全てはマークの提案から始まったんだ。マークの名前を出せば理解して貰えるんじゃないか。いや、マークの事も秘密なんだっけ…??

 そう考えている内に、徐々にだけど冷静になってきた。そしてエリックの顔を凝視してみて気付いたんだ。そしてボクはこう言った。

「フー・アー・オールソー・ユー?」(あんたも誰?)

そ う、エリックの顔も、ボクが知っているエリックではなかったんだ。リハで一緒だったエリックに。こうしてボクとエリックらしき人はお互い見合ったまま、暫くその場を動けなかったよ。そんな中、先に口を開いたのはエリックらしき人だった。

「キミ、もしかしてトミーの代役かい?」
 ボクは答えに窮した。ここで代役であることを認めてもいいものかどうか、なかなか判断が出来なかったからだ。でも、正体がばれてしまった以上ヘタな言い逃れは出来そうにない。だからボクは、正直に白状することにしたんだ。
「あぁ、そうだ。ボクはトミーの代役さ。日本人でシンジっていうんだ」
 するとエリックらしき人は驚きながらボクにこう言った。
「キミ、日本人なのかい? 全然気付かなかったよ。いやぁ上手く化けたもんだ。オレより上手いんじゃないかな?」
「えっ!? オレよりって…? まさかキミも代役なのかい?」
「実を言うとそうさ…。オレはエリックの代役のジョージってんだ。本物のエリックは今頃銀座さ。今日はオレの出番だったんだよ」
 ボクはその答えにホッとした。しかし、その瞬間に控え室のドアが開いたんだ…。


             -7-

 ボクはギョッとして開くドアの方を見た。ジョージも突然のことに驚いているみたいだ。ドアが開き、入ってきたのはジーンとポールの二人だったんだ。

「ヘイ、キミタチ。代役なんだって? ビックリしたよ」
「気付かないもんだなー。ステージ一緒だったってのに」
 何故かジーンとポールは笑いながらボク達に語りかけてきた。ボク達は偽物だよね、なんでそれを気にしないんだ? みんなを騙してステージに立っていたようなもんなのに…。

「キミ、日本人なんだろ? 英語上手いもんだ。それにギターもいい音出してたぜ」
「確かに良いギターだったな。トミー以上なんじゃないか? HAHAHA」
「はぁ…、ありがとうございます」
 フレンドリーに話しかけてくる二人にどう接すればいいんだか、ボクは困ってしまった。騙したことを怒ってないのだろうか。それより何より、ボクはこの後どうなってしまうんだろうか…。
 すると、後ろからマネージャーと、その後に続いて二人の男が入ってきた。その二人は、ジーンとポールの二人と全く同じ格好をしていたんだ。

「じゃあ私から説明しようかな」マネージャーが口を開いた。
「実はね、ジーンとポールも替え玉を使っていたんだよ。ライブ中に隙を見てはステージ脇で入れ替わっていたんだ。何せ二人も年だろう? 2時間近くのライブをこなすのには無理があるんだよ。だからボーカルが無い部分は替え玉の出番ってことなのさ」

 つまり、KISSは4人が4人とも代役を立ててライブをこなしていたんだ。トミーとエリックがそれぞれ隠れて代役を立てていたように、ジーンとポールも代役を立てていた。もちろんボーカルとかのこともあるから、マネージャーや専属スタッフに秘密って訳にはいかなかったけれど。
 代役の代役であるボク達について、マネージャーは薄々気付いて居たみたいで色々と調べていたらしい。既にトミーやエリック、そしてマークにも連絡を取っているんだって。だからボク達がバレるのは時間の問題だったってことだ。

「キミタチには感謝してるんだよ。既にKISSのメンバーと言ってもいい。だから私としては、この後のツアーにもキミタチに参加して欲しいんだけど、どうかな?」
 マネージャーはボク達にこう提案した。
「一緒に行こうぜジャパニーズ・ブラザー! キミのギターは最高だからな」
 ジーンもこう言ってくれた。

 そしてボクはその提案を受諾したんだ。


             -8-

「ワタシ、ジーンの代役のレイモンドです。どうぞヨロシク」
 ボクは、ジーンの代役のレイモンドと握手をした。そしてこの後も、KISSの一員としてツアーを回ることに決めたんだ。

 こうしてボクは日本を離れ、次のツアーにも参加することになった。世界中を回るツアーは半年以上も続いて、ボクはその間にKISSとして完全に馴染んでいったんだ。途中からトミーやエリック、それにマークも合流して、気付けばKISSは代役や代役の代役を含めると総勢10人のビッグバンドになっていたよ。もちろんステージで同時に立つのは4人なんだけどね。
 
 
 そしてツアー終了後、メンバー全員でニューアルバムを作ったんだ。タイトルは『Who are you?』。そのタイトルに隠された意味は、メンバーにしかわからないだろうけど。(笑)
 『Who are you?』が手元にある人は、クレジットを見てみてよ。ボクの名前が入っているはずだから。もちろんマークやジョージの名前と共にね。

 こうしてボクはKISSの隠れメンバーとなり、現在も世界を飛び回っている。今じゃ舞台演出の炎や爆発で驚くことも無くなったし、台本とも言うべきセッティングリストは身体で覚えているよ。それだけボクのトミー・セイヤーっぷりは様になってきたってことかな。

 考えてみると、トミー自体もオリジナルメンバーであるエース・フレイリーの模倣なんだよね。するとエースの代役のトミー、そのトミーの代役のマーク、そのマークの代役のボクってことになるのかな。何だか複雑だなぁ。
 でもこれが案外うまく行ってるんだ。やっぱり一人一人の負担が小さいってことが一番のメリットだよ。それに何だかみんなで旅行をしている気分だしね。大人数のバンドもいいもんだよ。

 そうそう、今次のアルバムの制作に取りかかってるんだけど、初めてボクの曲が収録されることになったよ。もちろんクレジットではジーンの曲ってことになるんだけど。
 曲名は『Hard Luck Japanese Man』。もちろんこれはボク自身のことさ。何だか分からない内にKISSの中へと飲み込まれた体験を歌にしたんだ。他のメンバーも気に入ってくれてるみたいだよ。

 今考えてみるとボクは決して不幸なんかじゃない。むしろ幸運だよ。ボクがKISSの一員になれるなんて、今でも夢みたいだもの。だからボクは、ライブで目一杯『Hard Luck Japanese Man』を歌うんだ。いつまでもこの夢が覚めないようにね。

(おわり)




 今回、予定では「Lucy in the spy wiht Dinamite」という作品を書き上げる予定でしたが、残念ながら完成しませんでしたので、また過去作から引っ張ってきました。昨年の6月に書いた作品です。

 今回の作品、いかがでしたでしょうか。気に入って頂ければ下のバナーをクリックして貰えればと思います。



仁礼小一郎(花押)
スポンサーサイト


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学




この記事に対するコメント


お気軽にコメントをお書き下さい











«  | ホーム |  »


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。