散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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野菜の山【年末連日掲載祭作品!】   (2005/12/29)
 毎年、そして毎日。情熱ある生産者によって野菜が出荷されていく。
 丸々と肥ったレタス・宝飾品のようなピーマン・可もなく不可もないホウレンソウ・ぶかっこうなキャベツ・もげたダイコン・青いまま収穫されたトマト──さまざまな野菜が収穫され、うずたかく積み上げられていく。
 私はこの野菜の山までやって来て、自分が精魂込めて作ったカボチャを置いた。そっと、優しく、ていねいに。誰かが拾い上げてくれる事を祈念しながら。
 自分の作物を納品したのち、私は他の生産者が育てた野菜を品定めした。上の方にある新鮮な物からひとつひとつを手に取ってまじまじと観察し、うまそうだと思えば一口かじる。味が気に入れば、一個持って帰る。今日はナスが出色の出来だ。持ち帰ってゆっくり賞味しよう。
 私は代価を支払い、ナスを買った。買ったはいいが、まあ、すぐに腐るだろう。そう安々と逸品には出会えない。心を打つほどの、恒久に鮮度を保つような逸品には。
 私はナスにかぶりつきながら、野菜の山を眺めた。毎年、そして毎日、野菜は生産される。獲れ立ての野菜が次々と運ばれてくる。すさまじい量がものすごい勢いで出荷されてくる。ついさっきまで山の頂上を占めていた野菜の上に別の新しい野菜が上乗せされていく。覆い被さってくる新作に圧され、真新しかったはずの野菜はじゃっかん鮮度が落ちた。
 いやな気分になった。たちまちのうちに私のカボチャも埋もれていく。たいへん甘い、歯ざわりの良い、カボチャ。誰からも見向きもされないまま、姿を見えなくしていく。口に運ばれさえすれば気に入ってもらえる自信があったのに、それすら叶わなかった。
 ああ、野菜が堆積していく。うずたかく積み上がっていく。
 下の方に沈澱した野菜はもはや腐り果て、ドロドロに混ざり合っている。キュウリとレンコンの見分けもつかない。幾重にも重なったこれら腐乱野菜の層は、新たに敷かれていく層の肥料となる。腐葉土である。かつては、つやつやと表面を輝かせていた野菜だったろうに。生産者の情熱の凝縮した結晶だったろうに。
 腐らずに残っている物も多からず在る。しかし、それら不朽の名品とて、家庭の食卓に上る機会は少ない。誰だって、最も新鮮な野菜を玩味したいと願うものだ。
 ジャガイモ(*1)は、いちおう野菜の形をとどめてはいるが、もはやほとんどの人が食べないだろう。葱(*2)? 滋養分に乏しいくせに、「ブランド品だから」と嗜む人は多い。ブランド品ならば、多少味が悪くても腐らずに済むということか。美味と名高いニンジン(*3)は、外国産なので食べたことのある人は存外少ない。ガラス製のタマネギ(*4)だって、あいつらが作ったから今も食されているだけであって、本来ならばとっくに腐っていてもおかしくはない。
 我々の創作は、言ってみりゃゴミだ。人々はこの山から自分の気に入った野菜を選り分けて取る。腐葉土の堆積から成る、この大量の野菜の山から。掘り起こすのは面倒だから取るに足らないような物を山肌からつまみ取る。腐葉土に埋もれた名品には気づかず手近の野菜を飲み下す。我々が一生のうちに食べる野菜の量などたかが知れているのだ。
 選り取り緑。しかし全部は消化できない。そんな状況で、いったい誰が私のカボチャを食べてくれるだろう。私は急に悲しくなって、げんなりしてしまった。
 しばらく愕然と立ちすくんだのち、キッと顔を上げ、唇を噛み締め、私は野菜の山に向かって突進した。山の中腹に頭から突っ込んで、泥を掻き分け掻き分け掘り進む。何のため、汚臭まみれになるのか、自分でもよくわからなかった。発作的にそういう行動を起こしていた。もしかしたら、何かを探していたのかも知れない。何か。私のカボチャが腐らなくても済むような,理由か言い訳か何かを。
 ふと、手に当たる物があった。
 無名の農家が作った黄金のリンゴが埋まっていた。


*1: 國木田獨歩「牛肉と馬鈴薯」
*2: 芥川龍之介「葱」
*3: Jules Renard「Poil de Carotte」
*4: The Beatles「Glass Onion」




 忠臣蔵がらみの小説を書こうと思っておりました。が、師走の目まぐるしさに忙殺されて成せず。この作品もしめきりギリギリでの公開となりました。
 いかがでしたでしょうか。宜しければ下のバナーをクリックしてほしいっス。(体育会系の口調でお願いしてみたっス)
 来年もヨロシクっス。



大塚晩霜敬白(軽薄)
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