散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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カレンダー【年末連日掲載祭作品!】   (2005/12/29)
君が僕を選んでくれたのは去年の年末だった。
僕を買うにはちょっと遅い年の瀬。
居並ぶ売れ残りの中から選ばれたのは僕だった。

白地に四季折々の風景画がクレヨンで柔らかに描かれた、少し大きめのカレンダー。
数字の横には鮮緑のクローバーが、小さくだが一つずつ入っている。
それが僕だ。
仲間の中では少し地味かもしれない。

彼女は店員さんから僕を受け取ると、足早に帰路へと着いていった。

僕が次に日の目を見たのは、年が明けて一週間程してからだった。
ちょっとずぼらなご主人様だなって思ったっけ。
多分、新しい月が始まってもしばらく前の月のままなんだろうな、と思ったのも覚えている。
彼女は真新しい僕を壁に飾り、とても満足そうだった。

彼女は大事な予定の日には、赤いペンでぐりぐりと僕に丸を付けた。
とっても嬉しそうな、幸せそうな笑顔で。
あの笑顔を見るのが、僕はすごく好きだった。

泣きながら帰って来ることもよくあった。
真っ暗な部屋の中うなだれる彼女を見るのは辛かった。
何も出来ない僕自身を、少し恨めしく思った。

でも、そんな日々ももう終わり。
12枚の僕は最後の1枚になった。
そろそろ彼女は新しいカレンダーを買ってくるだろう。
少し寂しい。
願わくば、僕の弟たちを買ってきて欲しいとも思うけど、その願いは叶わないだろうなと思う。

軽やかに階段をあがる音が聞こえる。
この足音で帰って来た日は何か良いことがあった日だ。

部屋に明かりが灯り、写し出された彼女の手には、真新しいカレンダーが握られていた。
開いたそれは彼女が大好きなアーティストのカレンダー。
彼女は時が経つのを待ち切れずに、12月までを丁寧にめくりながら1枚毎に違った笑顔をみせる。

ひとしきり眺めた彼女は、今年もあと2日あるというのに、僕に手をかけ丁寧に画鋲を抜く。
僕を四つ折にしゴミ箱に入れると、彼女は僕のあった場所に真新しいあのカレンダーを飾る。
そしてとても満足そうに二度頷いた。

幸せそうな顔でカレンダーを眺める彼女を、階下から母親が呼んだ。
彼女は電気を消し、少し慌てて部屋をでる。

これで僕の役目はおしまい。
あとのことはあそこに飾られた彼に任せるとしよう。
暗くなった部屋の中、僕はゆっくりと永い眠りについていった。
あの時、僕を選んでくれてありがとう。
一年間、大事にしてくれてありがとう…。




階段を降りていた彼女は、不意に足を止めた。
ほんの少しの間だが、まるで時が止まったように。
彼女は母親の呼ぶ声を余所に、踵を返して階段を駆け上がる。
自室に戻った彼女は、先程ごみ箱に入れたカレンダーを眺めながら再び時を止めた。

不思議な感覚が彼女を支配している。
目に映るのはゴミ箱にすてられたカレンダー。

そして彼女は机からハサミを、ごみ箱からカレンダーを取り出す。
12月一枚きりとなったカレンダー。
四つに折られたカレンダー。

彼女はそれにハサミを入れていく。
端から見ればそれは狂気的なものに見えたかもしれない。
彼女自身考えがあって行っているわけではなかった。
何か脅迫観念、そうしなければいけないという感覚、それに追われているような気さえした。

一心不乱にハサミを動かす。
少し大きなそのカレンダーを切るのは、なかなかに手間がかかる。
5分ほどして、ようやく彼女は12月31日の横にあった小さなクローバーを丸く切り抜いた。
丸と呼ぶにはやや歪んではいたが。

彼女はそれを見つめて軽く微笑んだ。
なぜだろうか。
彼女は少し優しい気持ちと、安堵感に包まれていた。

彼女はそのクローバーを大事そうに手帳に挟むと、部屋を出る。
再び電気の消された部屋の中。
クローバーを一つ切り取られたカレンダーがごみ箱に入っている。

そのカレンダーは、少しだけ、嬉しそうに見えた。








◆お読み頂きましてありがとうございます!
本日より「ちりぶみ年末連日掲載祭」開催です!!
本当は28日中にUPする予定だったのですが、すいません29日になってしまいました。
ごめんなさい><
31日まで連日作品が掲載されます!(僕のを含めて計4作品)
29日大塚晩霜 30日仁礼小一郎 31日こさめとなります。
どうぞお楽しみに!!

ということで「カレンダー」はいかがだったでしょうか?
面白いと感じたら是非下のバナークリックをお願いします^^


P助
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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学




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