散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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    某サークル六代目総長

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    長野市在住。



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春の雨垂れ   (2006/04/24)
 時計は午前一時を回っていた。
 家族の寝息と共に、静かな雨脚の音が微かに聞こえてくる。今夜は無性に目が冴えてなかなか寝付けない。しとしとと降る雨脚の音を聞きながら、この調子だと明日も一日雨だろうかと考えた。
 寝付けない体を起こし、足音を忍ばせて階下の居間へ降りる。窓から庭先をのぞくと、昼間吊るした照る照る坊主が暗がりの中で虚しく雨に濡れている。窓に反射する自分の顔は昼間の顔よりも老けて見え、目尻のしわが無くなればいいのにと指で伸ばしてみる。

 そういえば娘が生まれた日も、今夜のような静かな雨の降る夜だった。仕事から全速力で駆けつけた夫の顔は真っ赤に蒸気していて、生まれたての娘の赤い顔のようで、周りは笑いを噛み殺していたのよ、と後で母から聞いた。
 娘の小学校の入学式も、中学校の修学旅行も、高校の卒業式も、雨が降っていた。初めての海外旅行の出発日も、入社式の日もやはり雨で、その度に娘は「つくづく自分は雨女だ」と苦笑い交じりに呟いていた。
 ソファに腰を下ろし、先日から時折目を通している厚いアルバムを手に取った。少し薄茶けてしまった古いアルバムには、娘の生まれたばかりの写真から始まって、小学校から大学時代まで、成長の軌跡が綴られている。
 まだ若い夫と幼い娘の写った写真を見ながら、遠い日の記憶が蘇る。

 雨の降る夜。雨垂れが滴る赤いフェアレディZのフロントウィンドウ。緊張した車内の恋人の表情。
 ―幸せにする自信はあります。
 突然差し出された白いバラの花束。
 ―幸せにします。この花の花言葉は「約束を守る」だそうです。
 緊張で声にも力がこもっている。
 しっとりと降る雨、凛と咲く白いバラと不釣合いな、強張った恋人の表情がおかしくて、思わず吹き出してしまったのだった。遠い日の美しい記憶に、自然と頬も緩む。その恋人も、同じ屋根の下で共に年を重ね、今は隣室で静かな寝息をたてているのだ。

 そうだ、今年は庭のバラが咲いたら、娘に贈ろう。真っ白なバラの花を、父と母から娘に届けよう。先日の夕刊の園芸欄で、偶然バラの葉にも花言葉があることを知った。

「あなたは私の希望です。」

 春の雨は雨脚の音さえも暖かく、穏やかな眠気に誘われる。記憶の糸と夢想の糸が絡まり合い、幼い娘と手をつないで歩いた公園通りや、バラを届ける夫と私の姿が脳裏をよぎる。うとうととまどろみかけた頃、ほんのりとバラの香りに包まれた。

             ***

 目覚ましのアラームで目が覚め、特別な一日が始まる。深緑色のカーテンの隙間から予想外の日差しが細く差し込んでいる。いつもより少し思い切りよくカーテンを開けると、瞬時に眩しい光に包まれた。
 思わず声をあげた。
 ―お父さん、晴れたわよ!
 自然と口元がほころび、すがすがしい空気が体中に染み渡る気がした。窓の外に目をやると、夕べの雨をたっぷりと吸い込んだ照る照る坊主から、ぽたりぽたりと水滴が滴っている。その水滴が朝の日差しに照らされて輝き、まるで娘の門出を祝ってくれているようで、自然と、ありがとうという言葉が声に出た。
 昔仕立てたきりずっと着なかった黒留袖に袖を通す時、娘と共に過ごした時間の重みがじわりと心にしみて、熱いものが込みあげてくるのを抑えることができなかった。
                                                       了



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リスキー・リング   (2006/04/15)
俺は扉を開けた。
 ギィという音が店内に響く。黒と白に身を包んだメガネの男が、少しだけ頭を下げる。口元がいらっしゃいませ、と動いていたが、声は聞こえない。適当に席を探す。カウンターの一番端に座る。店内は思いのほか暑く、背広を脱ぎたかったがネクタイを緩めるだけで我慢した。
 ブラックルシアンを。
 さっきのメガネの男に声をかける。メガネは事務的な声でかしこまりましたと言い、機械的な動きでグラスを扱う。よく見たらメガネは伊達だ。しかもその面は不細工ときている。このバーテンのルックスだけで女性客の足が遠のくなと思う。この男は好きになれそうにない。
 音楽のことなど分からないが、流れているのはジャズだろう。でかいピアノが置いてあるところを見ると、週末には生演奏でもしているのか。店内を見定めるようにぐるりと一周眺めた所で、店の扉が開く気配がした。おもむろに視線を動かす。
 女が一人入ってくる。知らない女だ。年齢は……二十後半。長い髪。赤いロングドレス。同じ色のルージュ。店内の視線を一瞬奪う。女と目が合う。慌てて視線を逸らす。ピンヒールの固い音が近づいてくる。
「お隣、よろしい?」
 驚いたことに、声をかけて来た。俺は動揺を必死に隠しながら、どうぞ、と応える。回転式の丸い椅子に座る。長いスカートのスリットから見えた肌の白さに驚く。見ると、顔も異常に白く、唇は異常に赤い。あまりに明白な赤と白。歴然とした差が、いらぬ妖艶さを掻き立てる。女はブラッディマリーを頼んだ。不細工の伊達メガネは先ほどよりも遥かに愛想のいい声で返事をする。分かりやすい男だ。
「どうして隣に座るのかって顔しているわね」
 その通りだ。俺は特に容姿に自信があるわけでもない(むしろ、ない)。なぜこの女はこんな男に声をかけたのだろう。
「お邪魔だったかしら? どなたかいらっしゃるの?」
 いや、誰も来ないよ、僕一人だ。
 やっぱりという顔で女は微笑む。伊達メガネが、お待たせいたしましたと女の前に丁寧にグラスを置く。俺の時は確か無言だった。女はありがとう、と言い、グラスを手に取る。
 グラスを傾けたその綺麗な指の先も、真っ赤に色がついている。その指は細く、白く。女性の指をこんな間近で見るのは初めてで、指に官能を感じたのも初めてだ。 
 ああ、聞いてもいいだろう? なぜ僕なんかに声をかけたんだ?
「あなた、誰かと話をしたそうな雰囲気だったもの。一人で静かに飲みに来た男性とは違うって思ったから。ハズレかしら?」
 誰かと話をしたければ一人でこんな所に来るものか。だが、それは彼女が現れる前の話。
 アタリだよ。最近、誰とも話らしい話をしていないからね。
「ふふ、でしょう? それに、私に興味あるんじゃないかな、って思ったのよ、なんて」
 まさにそっちがアタリだ。もし話しかけてきたのが伊達メガネの双子の妹だったりしたら、俺は間違いなく席を立っている。
 アタリ。男はいつだっていい女に惹かれるんだ。
「それ、最高の褒め言葉ね」
 褒めたつもりはないが、彼女にはそう聞こえたらしい。普段女性と話す機会がほとんどない俺は、話し方がわからない。もともと、人と話すことは得意じゃない。しかも、たった十分前に会った美女を目の前にして、何を話せばいいのか、さっぱり分からない。
 申し訳ないけど、僕は話すのが苦手なんだ。
「いいわ。じゃあ、私が聞くからそれに答えて。ここにはよく来るの?」
 そうは見えないだろう。今日が初めてだよ。
「どうしてここに来ようと?」
 たまたま、気まぐれ。
「御自宅は近いの?」
 ここから歩いて十五分ほど。会社の方が遥かに遠い。
「お仕事は何を?」
 別に、普通のサラリーマン。
「恋人は?」
 いたら一人でなんか飲んでないよ。
「一人暮らしなの?」
 安いアパートに独り住まい。
「この指輪の話、聞きたい?」
 はた、と俺の動きが止まる。ずっと、彼女とは目を合わせないで飲んでいる。ただ、グラスの中で揺れるアルコールを見つめてしゃべっていた。しかし、その一言で思わず彼女に向き合う。目が合うよりも先に、彼女の細い指にある指輪に視線がぶつかる。左手の人差し指。美しい指輪だった。ただ、柄も飾りもない、シンプルな指輪だ。女性にはシンプルすぎてつまらないのではないか、と思うくらい飾り気がない。まさに輪っかだ。しかし、そのシルバーの目映いほどの輝きは、目を見張るものがある。もとから、かなり良い素材のものなのか、それとも余程手入れがいいのか。とにかく、その指輪の美しさに驚いた。
 その指輪は?
「聞きたい?」
 意味ありげにもったいぶり、目の前でその人差し指をちらつかせる彼女に少しいらつきながら、俺は応える。
 話してくれるのなら、ぜひ。
「いいわ。あなたが後悔しないならね」
 ……後悔だって?
 俺が聞き返すのも当然だろう。指輪の話を聞くのに、後悔するか否かが関わってくるなんてどういう話だ。
「後悔するのが怖いなら、やめておいたほうがいいわ。そんなおもしろい話でもないと思うし」
 ここまで言われて引き下がる人間は、よほど好奇心が貧困なのだろう。そう言われて、じゃあ聞かないよ、とは俺には言えない。
 いや、聞かせてくれよ。後悔はしない。
「そお?じゃあ話すわ」
 瞬間、さっきより少しだけ幼くなった表情にどきりとし、俺はグラスをあおった。
「この指輪はね」
 一呼吸、置く。
「血を吸っているの」
 え? と目で聞くと、微笑で答えた。左の人差し指にはまった、その細い輪っかを目の前でちらつかせながら、唇だけで彼女が笑う。きっと予想通りなんだろう、俺の反応を楽しそうに見つめ、話を続ける。
「この指輪ね。一度はめたら外すまで、血を吸い続けるのよ。ほら、今こうしてしゃべっている間にも吸っているわ。私の血をね。信じる、信じないはあなたの勝手だけど。でも、思わなかった? この女異常に肌が白いなって。思ったでしょう? それも健康的な白さじゃないのよね。なんていうか……不自然な青白さっていうか。もともと肌が白すぎる人ってあまり健康的とは思えないけれど。私のこの色はね、まさに不健康。当たり前よね、血を吸われているんだもの。あ、もちろんこの指輪によ。つまり、私の体は血が全然足りないの。そうね、もう、ひと月になるわ。最初はね、分からなかった、血を吸われているなんて。聞いてはいたけど、そんなの信じられるわけないじゃない? ああ、最初は今みたいにこんなピカピカじゃなかったのよ。むしろかなり曇っていて、全く見栄えがしなかった。それが私の血を吸収し始めて、だんだんと輝きを増すようになったの。ほら、綺麗でしょう? これ、私の血のおかげよ。指輪が生きているの。呼吸しているのよ。指に指輪の鼓動を感じる。熱いわ。でもね、もうそろそろ限界が近づいているような気がするの。ずっと私の血を吸い続けているけど、私の血液もさすがに限りがあるものね。まったく貧血もいいところよ……」
 ま、待ってくれ。
 このまま話を聞いていると、こっちがおかしくなってしまいそうだ。当然ながら、完全には信じられない。しかし、彼女がこれほど凝った作り話を、今日会ったばかりの俺にする理由もわからない。何より、信じられないほどの指輪の輝きと、彼女の青白さが真実を物語っている気がしてならない。
 ちょっと待ってくれ。僕からも質問させてもらってもいいかい?
「いいわよ。なに?」
 君は自殺志願者なのか?
「違うわよ。長生きしたいもの」
 だったら、もしその話が本当だとして、どうして指輪を外さないんだ? このままだと全ての血液を吸われてしまうんじゃないのか?
「外れないのよ。この指輪はね、一度はめたら決して自分の力では外せない。力づくでも絶対に無理」
 でも……まさか産まれた時からつけているわけではないだろう? どうやってそれを手に入れたんだ?
「もちろん、好きでつけているわけじゃないわ。これは、ひと月前に恋人からもらったの。もう別れたけれど」
 その男は指輪のことを知っていたのか?
「知っていたから、私にくれたのよ。思えば、あの男の肌の白さも異常だった。彼も、ギリギリだったのかもしれない」
 じゃあ、その男は外れたんじゃないか。どうやって外したんだ?
「知らないわ。もらった時は血を吸う指輪とは聞かされていないもの」
 と、いうことはその男は自分の血が全て吸い取られるのを恐れて、代わりに君を犠牲にしたということ?
「そうなるわね。私が指輪をつけた瞬間に、『別れて欲しいんだ』、ですもの」
 ひどいな。
「そうね、最低よ。私、本気で彼のこと愛していたのに」
 なぜだか、心臓がきゅっとなる。こんな美人の口から「愛している」などという言葉を聞いたのは初めてで、それがすごく艶かしく感じた。なんだか情けないが、下手に動揺してしまう。
 ふと、思う。(聞いた指輪の話がすべて本当ならば)今、彼女は生死のギリギリの位置に立っているわけで、本来ならばこんなところでアルコールなんか飲んでいる場合じゃないだろう。すぐさま警察なり病院なりに行って事情を話すべきだ。しかし、特に慌てている様な素振りも見せず、彼女は釈然と酒を飲みながら僕とこんな話をしている。
「あれから他にいい男もできないし。散々よ」 
 言葉を含ませてため息をつき、カラン、とグラスの氷を滑らせる。目が合い、笑う。映える唇の赤さ。
「あなた、名前も歳も聞いていないけど、三十前後ってところよね? 思ったより落ち着いていて素敵じゃない」
 もの好きだね。
「なぜ? 私これでも男の趣味は良い方よ」
 もしかしたら、そんな馬鹿げた指輪の話なんかすべてでっちあげで、こうして僕と話すための口実なのか? 一瞬、脳裏をよぎったそんな仮説を、自嘲するように打ち消す。
 もう一杯、いくかい?
「そうね、お願いしようかしら」
 さっきと同じ、ブラッディマリー。関心のないふりをしてちらちらと彼女をうかがっていた伊達メガネが、待ってましたとばかりに近寄ってくる。俺の方は完全に視界に入ってないらしい。つくづく嫌な奴だ。
「あなたは?」
 僕はいいよ。もともと強くないし。
 しばらくして、グラスが置かれた。赤と、少しの黒。そんな色をしている。
「血の色よね。少しは補充できるかしら」
 トマトの栄養分と、色だけはね。
 俺の言葉に、彼女がくすくすと楽しそうに笑う。とても、美しく魅力的な笑顔。命をも奪われるかもしれない今の状況で、強く、一生懸命生きているという気がする。彼女の、連絡先が知りたい。──そう思った瞬間。
 するり、と。
 彼女がおもむろに指輪を外す。
 ぎょっ、と。
 俺は驚いて目を見開く。
 二本の白い指と、赤い爪に挟まれた一つの指輪。
 なんだ。外れるじゃないか、やっぱり作り話だったんだろう? すごいな、良く考えたものだ。
 彼女は答えず。
「あなたの手に、触れてもいい?」
 安心していた。彼女の指からなんのためらいもなく指輪が外れるのを見て、すっかり作り話だと信じきった俺は、彼女の手が指に触れ、指輪を俺の薬指にはめるのを、黙ってみていた。洗練された、だが機械みたいな動き。白く細い彼女の指の感覚が、俺の肌に伝わる。手や指の間は敏感、というけど本当だと思う。誰かにこうして手に触れられるのは初めてだ。彼女の肌の温かさが直に分かる。もっと、いつまでもその温度に触れていたかった。
 ──しかし。
「……これで、やっと助かったわ」
 え?
「ごめんなさい、悪く思わないでね。お話できて楽しかった」
 何を言っているんだ?
「心配はいらないわ。最低でもひと月以内に、あなたに本気で、心から興味を持ってくれる女性を捜せばいいの。そうね、愛してるって言わせられたら完璧ね」
 待ってくれ。
「ふふ、まさかあなたがここまで私に惹かれるとは思わなかったわ。隠していたつもりみたいだったけど、君のことがもっと知りたいって、顔にはっきり書いてあったわよ?それほど邪(よこしま)な気持ちからじゃなかったみたいだけど。割と純粋なのね。でもそのおかげで指輪が外れたんだもの、感謝するわ」
 ……君が話したことは全て本当だって言うのか?
「それはこれからあなたが自分で確認することよ。もしかしたら嘘かもしれない。私も最初は、絶対に嘘だと思ったもの」
 まさか。
 まさか。
 まさか。
 ──外れない。指輪は外れなかった。きついわけでもない。それは、俺の指のサイズぴったりに仕立てたように、見事なまでにフィットしている。たった今、彼女がすんなりと俺の指にはめてくれたのを、俺はこの目で見ている。あれほどゆるやかにはまったのに、今は少し動かそうとしても揺らぎもしない。びくともしない。自分の顔がだんだん青ざめていくのが分かる。血の気が引いていくとはこういうことを言うのだろう。彼女がほんの数分前までつけていた指輪が、今は俺の薬指に在る(・・)。
 僕は……これから血を吸われていくのか?
「それもあと一、二週間もしたら嫌でも分かるわよ。よほどの鈍感じゃなければね」
 どうしたらいいんだ。
「言ったでしょう。女をおとせたら外れる。でも、遊びじゃなくて本気であなたに惹かれなきゃダメ」
 僕は、君に本気で……?
「あら、分かっているんじゃなくて? 指輪が外れたのが何よりの証拠」
 女は、グラスの残りを一気に飲み干すと、ゆっくりと席を立った。ふわりと空気が動き、強めなフレグランスが鼻につく。
「ごちそうさま。本当に感謝するわ」
 俺の頬に唇を寄せ、わざとらしいキスの音をたてる。
「とりあえず、口説き文句の一つでもマスターすることね」
 そう言い残し、女は歩き出す。俺は右手でグラスを握り締め、左手の指輪を痛いほど見つめながら、女の背中に呼びかける。
 一つ、教えてくれ。
 なぜ、次のターゲットを僕に?
「さあ? たまたま、気まぐれよ」

 
 ゆっくりと扉が閉まる。
 暑かった店内が、今は真冬のように寒い。
 



Hard Luck Japanese Man   (2006/04/04)
             -1-

 どうしてこんなことになっちゃったんだろう。パニックになってグルグルぐるぐる回る頭の中で思い出してみる。そう、あの日ボクは秋葉原でアイツに会ったんだ。そして全てが始まった…。
 

 秋葉原の某楽器店で、ボクが暇つぶしにギターの試奏をしていると、後ろからいきなり外人に話しかけられた。
「ハーイ!」
 陽気な声に驚いて後ろを振り向いてみると、声とは対照的に何やら陰のあるやつれた外人がそこに居た。
 ボクは自慢じゃないけど、留学経験もあって英語には堪能だ。だから外人相手にも物怖じなんてしない。「何か用かい?」とボクは英語で返事をした。
 ボクが流暢な英語で返事をしたもんだから、その外人は驚いて、そして何故か笑顔になりこう言ったんだ。

「実はキミに折り入って相談があるんだ。いきなりこんなこと言うのもなんだけど、一緒に来て話を聞いてくれないかい?」
 そりゃボクだってその外人を疑ったよ。でも、何だかすごく困ってるみたいだったし、何より不思議と気があったっていうのかな。だからボクは思い切って話だけでも聞きに行くことにしたんだ。

 ボクが連れて行かれた場所は、楽器店から10分ほど歩いたホテルだった。その部屋の中でボクは、驚くべきことを依頼されたんだ。

 その外人の名前はマークといった。マークはギタリストで、トーキョーにもツアーで来たらしい。ボクがマークにお願いされたこと、何だと思う? びっくりしたよ、だって「オレの代わりにライブでギターを弾いてくれないか?」って言われたんだから。
 それまで気付かなかったけど、マークは左手に怪我をしているみたいだった。包帯を巻いていて、それをポケットに突っ込んで隠してるんだ。そう、マークはその怪我のせいで、ギターを弾くことが出来なくなってしまったらしい。

「キミがギターを弾いているのを偶然見てね、なんて良いギターを弾くんだって思ったんだ。それでキミこそオレの代役に相応しいと思ってね。突然だけど話しかけたんだよ。それに英語まで話せるなんて。パーフェクトさ」
 他人に褒められて悪い気なんてしない。ボクは少し嬉しくなって、気をよくしながらマークに尋ねた。
「で、ボクは何をすればいいんだい?」

「キミ、KISSってバンドを知ってるだろう? キミにはそのライブでギターを弾いて欲しいんだ」
「KISSだって!?」
 あまりのことに、ボクは驚きを隠せなかった。


             -2-

「KISSって…、あのKISSかい?」
「そう、あのKISSさ」
「確かにKISSは今ツアーで日本に来てるけど…。あ、来日を記念したKISSのコピーバンドとか?」
「いや、本物のKISSだよ。キミは武道館でギターを弾くんだ。あのKISSのメンバーとしてね」
 マークはニヤリと笑った。けれどボクには何が何だかわからなかった。だって、ボクがあのKISSの中で演奏するなんて考えられるかい?

「馬鹿げてるよ! それにそんなの無理さ。だってボクはただの一般人だよ? しかも日本人だ。第一、ボクはKISSのことそんなに知らないんだよ?」
「大丈夫さ、キミの腕があればプレイは全く問題はない。曲はオレが責任持ってみっちり教えるさ。だから演奏に関しては何の問題もないんだ。あとはキミにやる気があるかどうかさ」
「でも…。やっぱりボクなんかには無理だよ…。あまりに突然過ぎるし。他の人を当たってくれないか。プロミュージシャンなんて探せばいくらでもいるじゃないか」
「どうしてだい? キミだって、いつかは武道館のような大きな舞台で思いっきりギターを弾きたいと夢見てるだろ? その夢が叶うんだ、素晴らしいじゃないか!」
マークはどうしてもボクにこだわるみたいだ。そこがボクにはどうしても気に掛かる。
「ねぇ、どうしてボクなんだい? ボクよりギターの上手い人なんて探せばいくらでも居るだろう? そりゃ英語は喋る自信あるけれど…」

 するとマークは何故かボクの目の前に立って、いきなりボクの両肩を掴んで、力強くこう言ったんだ。
「キミにしか頼めないんだよ」
 そして続けて、今度は囁くようにボクに言った。
「今その理由は言えない。もしキミが引き受けるんだったら話せるけどね。これは極秘事項なんだよ。もしキミが引き受ければ、日本人で知っているのはキミだけってことになるね」

 このマークの囁きは、ボクの頭の中をグルグルと駆け回って、きっとボクを何かに酔わせたんだ。日本人でボク一人だけ…。夢の武道館でのライブ…。そして何より、KISSがボクを必要としてくれている…。何だか夢の中に居るような心持ちだったんだ。
 気付いたらボクはマークに引き受けることを承諾していたよ。マークの嬉しそうな顔ったらなかったね。

 こうしてボクは、一週間後の武道館ライブに向けて厳しい練習をこなすことになったんだ。
 でもおかしいな、KISSにマークなんて名前のギタリスト居たっけ…?


             -3-

 ライブまでの一週間、ボクはマークとマンツーマンで練習に明け暮れていたよ。何しろやることは山程あったんだ。始めボクは曲さえ覚えてしまえば何とかなると思っていたし、それならまぁ3日もあれば大丈夫なんじゃないかなって思ってた。けどそれは大きな間違いだったんだ。そう、KISSはただのロックバンドじゃなかったんだよ。

 ボクはKISSのCDを聴くよりもよりも映像を見ることに重点を置いて練習させられた。マークは「曲と思って覚えるよりも、ショウだと思って覚えてくれ。それが一番早いんだ」とボクに言っていて、数日でギタープレイをある程度仕上げた後は動きの練習ばかりさせられたんだ。「ここではこう動いてソロを弾いて、この曲はステージ中央のマイクでコーラスするんだ。そしてここでは…」ってこんな風に、まるでお芝居でもするかのように、一つ一つの動きが完璧に決まっていて、ボクはギターを演奏しているというよりも、ギタリストを演じているように感じるようになっていったんだ。

 こうして一週間の厳しい特訓を終え、いよいよ武道館でリハーサルをすることになった。ここでようやくKISSの他のメンバーに会えるはずだ。何せボクはこの一週間、マーク以外の誰にも会っていないんだからね。
 マークが「武道館に向かおうか」って言ってくれるまで、ボクの心のどこかにはまだマークのことを完全に信じ切れない部分があったんだと思う。だから武道館に行く時は嬉しかったよ。でもね、ここで一番重要で、一番信じられない話を聞かされることになるんだ。

 武道館に向かう車の中で、マークはボクの方を向き、真剣な面持ちでこう言った。
「シンジ、これまでの特訓をよく頑張ったな。やはりオレの目に狂いは無かった、キミは最高の代役さ」
「なんだいマーク、いきなり改まって。ボクが頑張れたのもマークの指導のお陰じゃないか」
「シンジ、今から話すことをよく聞いてくれ。極秘事項を話すから…」
 ボクは遂に来たかと思って黙って頷いた。
「今日シンジはシンジでは無く全く別の人間として演奏してもらう。オレが身振り手振りからコーラスの仕方まで細かく指示していたのはその為さ」
「というと…ボクはマークに成りすますってことかい?」
「いや、キミが成りすますのはエースの代役を務めるトミー・セイヤーさ!」
「トミー・セイヤー!?」
「キミは今日から三代目トミー・セイヤーになるんだ!」


             -4-

 マークが初めてトミーの代わりにステージに立ったのは、数年も前のことらしい。親友だったトミーがKISSのギターを弾くことになった時、最も応援していたのがマークだった。しかしある時、トミーは心労からステージに立つことが苦痛になっていって、遂には耐えられなくなってしまったんだ。そしてそのことを唯一相談したのが、一番信頼していたマークだったんだ。「このままではトミーは心労で精神的にも身体的にもダメになってしまう」、そう考えたマークは一計を案じることにした。そう、それはマークが何喰わぬ顔でトミーになりきり、ステージに立つというものだったんだ。こうしてこれまでの数年間、二人は代わる代わるにステージに上がった。観客にも、メンバーにも、誰にも気付かれずに…。

 そんなマークとトミーの関係だったんだけど、負担が大きいツアーはもっぱらマークの担当だった。しかし今回、マークは日本で手に怪我を負ってしまった。ギタリストの命とも言うべき指をね。
 もしもここがアメリカだったら、すぐにトミーと入れ替わっただろうけど、日本じゃどうしようもない。怪我のことをメンバーに話せば病院に連れて行かれ、正体がばれてしまう。そこでマークは考え抜いた末に自分の代役を立てることに決め、ボクに白羽の矢を立てたってことだったんだ。

 確かに凄い秘密だ。この話を聞いてボクはビックリしたよ。考えてみるとマークと会ってからというものずっと驚いてばかりだ。そしてそれと同時に、自分の責任の大きさに唖然としてしまったんだ。だって、お客さんにはまだしも、他のメンバーにだって正体は秘密なんだから…。
 それでももうボクは後戻り出来ない。この秘密を知ってしまった以上、ボクは三代目として自分の役割を果たさなければいけないんだ。ボクの心には、既に強い使命感で溢れていた。そうさ、ボクはやってやる…。
 
 
リハというのにメイクをしてきたボクに、ジーンが愉快そうに話しかけてきた。
「ヘイトミー、どうしたんだ? もうメイクしちゃって。キアイ入ってんのか?」
「そうさ、日本はオレの大好きな国だからな。明日の本番が今から楽しみだよ」
「HA HA HA。それならいいが、あんまり気負いすぎるなよ。何だか声の調子がおかしいぜ? 本番に影響が出ないようにな」
「あぁ、わかったよジーン」

 リハを何とか終え、遂に本番を迎えた。ボクの本当の試練はここからだった。


             -5-

 本番前、ボクはスタッフからライブのセッティングリストを貰った。そしてボクはそのリストを完全に暗記したんだ。舞台の台本みたいにね。
 リストの中身はスゴイ量だったよ。普通セッティングリストなんて、曲順と演出が少し書かれているくらいだけど、全く違うんだ。見た目から分厚くて、そして演奏中のことが事細かに書かれてるんだ。例として、冒頭部分を見せてあげようか。

-----------------------------------------
SEの曲が終わり、会場の照明が落とされる。スタッフの開始合図で控え室を出発。ステージまで4人で練り歩く。その際、カメラマンからの映像が客席に中継されているので、各自気を抜かないこと。(カメラ目線も可)
ステージに到着し、各自が持ち場について準備完了後、幕が落とされる。そこで台詞。
ポール「Alright Tokyo! You wanted the best, you got the best! The hottest band in the world, KISS!!」
爆発などの演出と共に、一曲目「King of Night Time World」スタート。
-----------------------------------------

 とまぁこんな感じで、曲から曲の間まで全て記されているんだ。それどころか、曲中でも「ここはジーンにスポットライト。ギターソロでトミーは左のお立ち台の上に行くこと。そこにライト」なんて風にかなり細かく決められているんだ。ほんとに舞台の台本みたいだよ。
 だからボクは、演奏をこなすよりもライブでの流れや決められた動きを忘れないようにこなす方が何倍も大変だったし気を遣ったんだ。

 でも一週間の急ごしらえではミスも生じたよ。突然の爆発にはビクッてしてしまったし、炎が上がったときには熱くて暑くて、焼けちゃうんじゃないかと思った。ジーンが天井から吊されたステージの上で演奏してる時は、落ちてきやしないか心配でたまらなかった。ボクのソロの時はライトが集中して眩しいし観客の視線は恥ずかしいし、逆にポールが客席の中で歌った時なんて誰もボクの方を見てやしないから少しふてくされもした。
 でもジーンと二人で1つのマイクにコーラスした時、ジーンから「緊張せずに気楽にやれよ」って話しかけられたのはスゴイ嬉しかったよ。

 こうして初日を終えその後の公演も無事こなし、ボクは満足感で一杯だった。けどそれが気の緩みを生み、そして遂にボクの正体が遂にばれてしまったんだ…。


             -6-

 最終日の公演を終えたボクは、程良い疲労感と大きな充実感に酔っていたんだ。もちろんビールも飲んでいてお酒にも酔っていたけどね。
 そして控え室で、何を思ったか衣裳を脱ぎながら濡れタオルで顔をゴシゴシやっちゃったんだ。メイクをしてるなんてこと忘れていたよ。ましてやボク自信が秘密の代役だったことなんて、完全に忘れてしまっていたんだ。

 そこに、エリックがやって来た。エリックはオリジナルメンバーではないけれど、これまで何度もKISSのライブに出演してきたメンバーの一人だ。そしてそのエリックが、メイクのはげ落ちたボクの顔を見てこう言ったんだ。

「フー・アー・ユー!?」(あんた誰?)

 ボクは焦ったよ。死ぬ程焦ったよ。どうしていいかわからなかったよ。頭が混乱して、何が何だかわからないまま、事の始まりを思い出していたよ。
 そう、全てはマークの提案から始まったんだ。マークの名前を出せば理解して貰えるんじゃないか。いや、マークの事も秘密なんだっけ…??

 そう考えている内に、徐々にだけど冷静になってきた。そしてエリックの顔を凝視してみて気付いたんだ。そしてボクはこう言った。

「フー・アー・オールソー・ユー?」(あんたも誰?)

そ う、エリックの顔も、ボクが知っているエリックではなかったんだ。リハで一緒だったエリックに。こうしてボクとエリックらしき人はお互い見合ったまま、暫くその場を動けなかったよ。そんな中、先に口を開いたのはエリックらしき人だった。

「キミ、もしかしてトミーの代役かい?」
 ボクは答えに窮した。ここで代役であることを認めてもいいものかどうか、なかなか判断が出来なかったからだ。でも、正体がばれてしまった以上ヘタな言い逃れは出来そうにない。だからボクは、正直に白状することにしたんだ。
「あぁ、そうだ。ボクはトミーの代役さ。日本人でシンジっていうんだ」
 するとエリックらしき人は驚きながらボクにこう言った。
「キミ、日本人なのかい? 全然気付かなかったよ。いやぁ上手く化けたもんだ。オレより上手いんじゃないかな?」
「えっ!? オレよりって…? まさかキミも代役なのかい?」
「実を言うとそうさ…。オレはエリックの代役のジョージってんだ。本物のエリックは今頃銀座さ。今日はオレの出番だったんだよ」
 ボクはその答えにホッとした。しかし、その瞬間に控え室のドアが開いたんだ…。


             -7-

 ボクはギョッとして開くドアの方を見た。ジョージも突然のことに驚いているみたいだ。ドアが開き、入ってきたのはジーンとポールの二人だったんだ。

「ヘイ、キミタチ。代役なんだって? ビックリしたよ」
「気付かないもんだなー。ステージ一緒だったってのに」
 何故かジーンとポールは笑いながらボク達に語りかけてきた。ボク達は偽物だよね、なんでそれを気にしないんだ? みんなを騙してステージに立っていたようなもんなのに…。

「キミ、日本人なんだろ? 英語上手いもんだ。それにギターもいい音出してたぜ」
「確かに良いギターだったな。トミー以上なんじゃないか? HAHAHA」
「はぁ…、ありがとうございます」
 フレンドリーに話しかけてくる二人にどう接すればいいんだか、ボクは困ってしまった。騙したことを怒ってないのだろうか。それより何より、ボクはこの後どうなってしまうんだろうか…。
 すると、後ろからマネージャーと、その後に続いて二人の男が入ってきた。その二人は、ジーンとポールの二人と全く同じ格好をしていたんだ。

「じゃあ私から説明しようかな」マネージャーが口を開いた。
「実はね、ジーンとポールも替え玉を使っていたんだよ。ライブ中に隙を見てはステージ脇で入れ替わっていたんだ。何せ二人も年だろう? 2時間近くのライブをこなすのには無理があるんだよ。だからボーカルが無い部分は替え玉の出番ってことなのさ」

 つまり、KISSは4人が4人とも代役を立ててライブをこなしていたんだ。トミーとエリックがそれぞれ隠れて代役を立てていたように、ジーンとポールも代役を立てていた。もちろんボーカルとかのこともあるから、マネージャーや専属スタッフに秘密って訳にはいかなかったけれど。
 代役の代役であるボク達について、マネージャーは薄々気付いて居たみたいで色々と調べていたらしい。既にトミーやエリック、そしてマークにも連絡を取っているんだって。だからボク達がバレるのは時間の問題だったってことだ。

「キミタチには感謝してるんだよ。既にKISSのメンバーと言ってもいい。だから私としては、この後のツアーにもキミタチに参加して欲しいんだけど、どうかな?」
 マネージャーはボク達にこう提案した。
「一緒に行こうぜジャパニーズ・ブラザー! キミのギターは最高だからな」
 ジーンもこう言ってくれた。

 そしてボクはその提案を受諾したんだ。


             -8-

「ワタシ、ジーンの代役のレイモンドです。どうぞヨロシク」
 ボクは、ジーンの代役のレイモンドと握手をした。そしてこの後も、KISSの一員としてツアーを回ることに決めたんだ。

 こうしてボクは日本を離れ、次のツアーにも参加することになった。世界中を回るツアーは半年以上も続いて、ボクはその間にKISSとして完全に馴染んでいったんだ。途中からトミーやエリック、それにマークも合流して、気付けばKISSは代役や代役の代役を含めると総勢10人のビッグバンドになっていたよ。もちろんステージで同時に立つのは4人なんだけどね。
 
 
 そしてツアー終了後、メンバー全員でニューアルバムを作ったんだ。タイトルは『Who are you?』。そのタイトルに隠された意味は、メンバーにしかわからないだろうけど。(笑)
 『Who are you?』が手元にある人は、クレジットを見てみてよ。ボクの名前が入っているはずだから。もちろんマークやジョージの名前と共にね。

 こうしてボクはKISSの隠れメンバーとなり、現在も世界を飛び回っている。今じゃ舞台演出の炎や爆発で驚くことも無くなったし、台本とも言うべきセッティングリストは身体で覚えているよ。それだけボクのトミー・セイヤーっぷりは様になってきたってことかな。

 考えてみると、トミー自体もオリジナルメンバーであるエース・フレイリーの模倣なんだよね。するとエースの代役のトミー、そのトミーの代役のマーク、そのマークの代役のボクってことになるのかな。何だか複雑だなぁ。
 でもこれが案外うまく行ってるんだ。やっぱり一人一人の負担が小さいってことが一番のメリットだよ。それに何だかみんなで旅行をしている気分だしね。大人数のバンドもいいもんだよ。

 そうそう、今次のアルバムの制作に取りかかってるんだけど、初めてボクの曲が収録されることになったよ。もちろんクレジットではジーンの曲ってことになるんだけど。
 曲名は『Hard Luck Japanese Man』。もちろんこれはボク自身のことさ。何だか分からない内にKISSの中へと飲み込まれた体験を歌にしたんだ。他のメンバーも気に入ってくれてるみたいだよ。

 今考えてみるとボクは決して不幸なんかじゃない。むしろ幸運だよ。ボクがKISSの一員になれるなんて、今でも夢みたいだもの。だからボクは、ライブで目一杯『Hard Luck Japanese Man』を歌うんだ。いつまでもこの夢が覚めないようにね。

(おわり)




 今回、予定では「Lucy in the spy wiht Dinamite」という作品を書き上げる予定でしたが、残念ながら完成しませんでしたので、また過去作から引っ張ってきました。昨年の6月に書いた作品です。

 今回の作品、いかがでしたでしょうか。気に入って頂ければ下のバナーをクリックして貰えればと思います。



仁礼小一郎(花押)

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学



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