散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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ドラいぜん   (2006/01/24)
 ピッチャーの投げたボールは、明らかに僕の方へ向かって来ている。とっさにしゃがみ込む。球すじは思ったよりも低い。ボールは僕のほほにめり込んだ。首が向きたくもない方向へ向く。青い空には星が見えて、すぐに夜みたいに真っ暗になった。
「…太さん、大丈夫? のび太さん」
 しずかちゃんの声だ。
「のび太さん、しっかり」
「しずか…ちゃん」
「よかった、気が付いたのね」
 僕は気を失っていたようだ。視界には晴れわたる秋の空としずかちゃんの顔。女神のようだ。僕の頭はふとももの上に乗っているようだ。ひざまくらをしてくれたのかな。なんて優しいんだ。
「野比君、大丈夫かい?」
 うっ、突然邪魔な物体が現れた。奴の名前は出来杉。僕の恋のライバルだ。
「のび太さん、大丈夫?出来杉さんが介抱してくれたのよ」
 え、よく見ると、僕の頭の下にあるふとももは…。
「出来杉のかよ!」
 僕は思わず飛び上がった。
「わ、びっくりした。そんなに元気なら、大丈夫そうだね」
 夢心地は一瞬で消え失せた。なんだって男にひざまくらなんかされなきゃいけないんだ。
「のび太さん、お礼くらい言いなさいよ」
 ああ、確かに感謝してるよ出来杉君。介抱してくれてありがと。だけどなぜだろう、いま僕はすごく君をぶん殴りたい。
「お、目が覚めたのか、のび太」
 この声はスネ夫だ。
「顔からボールに当たりに行くなんて、のび太らしいや」
 そのイヤミな物言いと、三次元化不可能な髪型は昔から変わらない。
「さっきは何であんなに驚いてたんだよ。さてはしずかちゃんに膝枕してもらってる夢でも見てたんだろ」
 何故こうまで見抜かれるのだろう。この男も本当にうっとおしい。だが、一番やっかいなのは…。
「ぬおぉび太あぁ!」
 地鳴りのような低い声。ジャイアン、その人である。
「何やってんだ!早く一塁に行け!」
 えっ、僕に一塁に行けと? いままで気を失っていたのに?
「早くしろ!早く!」
「わ、わかったよ」
 こんなことってあるんだろうか。顔面にデッドボールを食らって、気を失っていた人間に向かって、一塁に行け、早く、なんて人の子の言うセリフだろうか。僕はメガネをかけ直す。ちょっと歪んでいる。
「のび太さん、しっかり!」
 しずかちゃんが、笑顔で僕を送り出してくれる。でも、ちょっと残酷。本当は、のび太さんは無理だから勘弁してあげて、とか言って欲しかった。
 一塁に立つと、ベンチにしずかちゃんと出来杉が並んで座っているのが見える。僕はケガをおして一塁ランナーとしてここに立っているのに、五体満足な出来杉は、しずかちゃんの隣りで野球観戦だ。憎たらしくて妬ましかった。僕は出来杉のことを、ずっとにらみつけていた。
「アウト! ゲームセット」
 え、何なに? 何があったの? 気がつくとボールは一塁手のグローブの中にある。まさか、僕はタッチアウトになったのか。
「のび太あ!お前なにやってんだ!」
 デッドボールで出塁して、一塁けん制死。こんなみじめな負け方があるだろうか。いや、負けるだけならいい。恐ろしいのはジャイアンの怒りようだ。
「のび太!今日の試合に負けたのは完全にお前のせいだ」
 やっぱりそう来たか。
「そうだそうだ、お前がヘマしなきゃ逆転してたかもしれないのに」
 そういうスネ夫だって、今日は三振ばっかりだったじゃないか。全ての責任を僕におっかぶせようと必死だな。
「のび太、お前はいつもいつもチームの足を引っ張りやがって。今日という今日は、もう我慢できねえ。お前だけ居残りで千本ノックだ」
「えー、やだよそんなの」
「いいからやるんだよ!」
「やーい、ざま見ろのび太」
「スネ夫、お前は球出しをしろ」
「え、いや、僕は早く帰らないとママに怒られ…」
「や・る・よ・な!」
「やりますやります、やらせていただきます」
 こうして僕とスネ夫はジャイアンの特訓に付き合わされることになった。ノックはあたりが暗くなるまで続いた。僕はヘロヘロになって家に帰った。
「ただいま」
「のびちゃん、こんな時間まで何してたの!」
 ママの頭に角が生えてる。わかってたんだよ、こうなるの。いつものパターンだもの。
「服もドロだらけにして! 今日という今日は許しませんからね!」
「ガミガミガミガミ、ガミガミ、ガミガミガミ」
 今日のお説教はいつもの2倍だった。そして晩ご飯抜きのおまけまで付いた。
 神様、教えて下さい。僕はそんなに悪いことをしたでしょうか。怪我にめげずに試合に出たじゃないですか。そりゃ僕のせいで負けたかもしれませんが、目の前で好きな人が別の男と仲良さそうにしていたら、冷静じゃいられないものではないでしょうか。僕はその後、ジャイアンという男に特訓と称したイジメを受けていました。心も体も傷ついて、やっとの思いで帰って来たら、親は事情も聞かずに僕を叱り付けた上、兵糧攻めにするのです。この腫れ上がったほっぺたを、少しも心配すること無くです。
 神様、教えて下さい。世の中に、こんなにかわいそうな小学生がいるでしょうか。今日みたいな日は、決して珍しいことではないのです。いつもだいたいこんな感じなのです。こんな日々がいつまで続くのでしょうか。いつの日か、思い出になって、笑える日は来るのでしょうか。
 神様の声なんて、聞こえるはずも無かった。
 僕は仕方なく、ふとんにもぐる。さんざんな目にあって、お腹も減って、こんな日は眠れるはずも無い。と思いきや、あっというまに意識が消える。そう、僕の得意なことといったら、寝ることくらいだ。


「野比君、宿題はやってきたかね」
「すいません、忘れました」
「君はいつも忘れてくるね。反省というものが無いのかね」
 昨日はノックをしていて、宿題どころじゃありませんでした。なんて言ってもわかってはくれないだろう。
「罰として、廊下に立ってなさい」
 僕はいつものように、掃除用具入れからバケツを二つ取り出し、廊下に出て行く。水を入れる時は、四つの蛇口を同時に使って二つのバケツを一気に満たす。手慣れたものだ。そして、最初に先生が見に来るまでは、真面目にバケツを持つ。先生が教室に戻ったら、音を出さないように慎重にバケツを床に置く。先生が来るタイミングはもうわかっているから、それ以外の時は座っていようが寝転がっていようが、わかりはしない。学校に来て身についているものといえば、このくらいだ。
 僕は何のために生きているんだろう。いつもいつも、こんなみじめな思いをするために生まれて来たんだろうか。僕に何かできる事があるだろうか。ひとつでも僕の願いがかなう事があるだろうか。きっと、ありはしない。
 放課後、僕はジャイアンに呼び出されてこう言われた。
「今日も特訓だからな、覚悟しとけよ!」
 僕は力なく、わかったよ、とだけ言った。ジャイアンの表情は意外そうだった。あまりにも素直だったからかもしれない。僕は学校を出ると、家には向かわず、大通りの方へ歩いた。自然と足が向いた。このままジャイアンの言う通りにすれば、またボロボロになるまで特訓させられて、またママに叱られて、また宿題もできずに次の日が来て、また廊下に立たされて、そしてまたボロボロになるまで特訓を受けるのだろう。
 もういい。もうわかった。僕の人生はこんな毎日が続いていくのだ。きっと一生ジャイアンの言いなりで、スネ夫にからかわれ続けて、しずかちゃんは出来杉と結婚して、きっと僕だけみじめなままなんだ。
 大通り沿いの十階建ての新しいマンションに、僕は吸い込まれるように入っていた。屋上へあがると、すぐさま柵を乗り越えた。
「パパ、ママごめんね。僕はもう耐えられない」
 少し冷たい風が、耳元で寂しい音を鳴らす。
 一歩、二歩と歩みを進める。もう自分の意思かどうかもわからなくなって来た。ぎりぎりの所まで来て、下を覗き込んだ。
 高い。
 無理無理無理、絶対無理!
 僕は慌てて柵にしがみついた。自殺なんて無理。だってこんな高い所から飛び降りたら死んじゃうもの!
 完全にパニックだ。歯がガチガチいっている。体も震えている。あわわあわわと言いながら、柵を乗り越えて戻った。息があがっている。僕はその場に倒れ込んだ。自分の呼吸の音以外には、何も聞こえなし、それ以外のことは、何も判断できなかった。
 しばらくして、少し落ち着いて、なんだか暖かいなと思った。僕の体を太陽がくまなく照らしていた。風も止んでいた。空はさわやかな青で、雲がのんきに流れていた。
「良い天気だな」
 空にママの顔が浮かぶ。
「のびちゃん、おやつよ」やさしく微笑む。
「のび太、今日は臨時のこづかいをやろう」パパが満足げに笑う。
「のび太、お前もウチに来いよ」スネ夫、新しいラジコンを買ってもらったのか。
「のび太さん、一緒に宿題しましょ」しずかちゃんの笑顔は本当にまぶしい。
「のび太!心の友よ」ジャイアンが、そんな事を言ったこともあったな。
 みんなの顔が浮かんできて、勢揃いして、すぐに涙でゆがんでわからなくなった。
 優しくされたことを忘れて、楽しく過ごしたことも忘れて、僕は死のうとしていたのか。情けなかった。本当に情けなかった。情けないと思ったら、また涙が出た。
 気が済むまで泣いて、しばらく空を眺めていた。ひとつあくびをして、僕は目を閉じた。いつもの昼寝のように、すぐに眠ることができた。
 目が覚めた時には、陽はすっかり傾いて、学校の裏山に沈みそうだった。ああ、こんなふうに、嫌なことも眠って忘れて、こうして生きていくのかもしれない。そう思った。


「ただいま」
 学校からの帰りが遅かったから、ママは心配しているだろうか。
「どこに行ってたの、こんな時間まで」
 マンションから飛び降りるのをためらって昼寝してたなんて、言えるわけがない。僕は話をごまかそうとした。
「ねえ、今日の晩ご飯はなに?」
「のびちゃんの好物のハンバーグよ」
 好物のハンバーグ、どうして。こんな遅くまで帰らなかったのに、叱ることもなく、ハンバーグ。もしかしてママは、昨日のことも、今日のことも、僕の気持ちも、ぜんぶ見抜いて…。
 さっきあれほど泣いたのに、また涙がこぼれそうになった。見られたくなかったから、急いで二階に上がろうとしたけど、階段がよく見えなかった。
 部屋に戻ると、いつものように座布団を折って枕にした。
 誰にも言えないけど、僕には夢がある。
 時間を超えて旅をして、白亜紀の恐竜達に遭ってみたい。誰も知らない魔境を、空を飛んで冒険してみたい。地球を脅かす悪の異星人と戦うヒーローになってみたい。遠くの星に、友達を作りたい。どれも子供じみた夢だから誰にも言えないけれど、きっと叶うことはないけれど、なぜだかこの夢はいつまでも心から消えない。いつかきっと…。
「夢は叶うよ」
 僕は飛び起きた。誰だ、今の声は。ロボットみたいな声、いや、おばちゃんの声みたいだった気もする。確かに机の方から…。僕は引き出しを開けてみた。鉛筆がカラカラと転がってくるだけだった。でも、確かに聞こえた…。
「のびちゃん、聞こえてるの?ご飯できたわよ」
 ママの声だったのだろうか。耳をすましてみても、もう何も聞こえない。だけど、なぜだか耳に残る「夢は叶うよ」という言葉を胸にしまい込んで、僕は一歩、踏み出した。




今回の作品「ドラいぜん」はいかがでしたか。あなたの心に残るものがあったなら、下のバナーをクリックしていただきますようお願いいたします。




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阿蘭陀Language   (2006/01/14)
どうかOranda Rangeと発音して下さい。


 小説に説明をしてはならないのだそうだが、うぬぼれは誰にもあるもので、この話でも万一ヨーロッパのどの国かの語に翻訳せられて、世界の文学の仲間入をするような事があった時、よその読者に分からないだろうかと、作者は途方もない考えを出して、行きなり説明を以てこの小説を書きはじめる。阿蘭陀流といえる俳諧は、その姿すぐれてけだかく心ふかく詞新しく、合い言葉はパクろうぜ!です。御存じであろうか? 御存じない。それは大変残念である。つれづれなるままに、日くらし、女もする日記というものを、男もしてみようと思って、するのである。この書き物を私はお前たちにあてて書く。
 岸本君――僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。然し実を言えば何も書く材料は無いのである。黙していて済むことである。こんな手紙を上げるのは、道理(すじみち)から言っても私が間違っている。けれど、私は、まだお前と呼ばずにはいられない。どうぞ此の手紙だけではお前と呼ばしてくれ。またこんな手紙を送ったと知れたなら大変だ。私はもうどうでもいいが、お前が、さぞ迷惑するであろうから申すまでもないが、読んで了ったら、直ぐ焼くなり、どうなりしてくれ。
 恥の多い生涯を送って来ました。僕は、僕の母の胎内にいるとき、お臍の穴から、僕の生れる家の中を、覗いてみて、「こいつは、いけねえ」と、思った。頭の禿げかかった親爺と、それに相当した婆とが、薄暗くって、小汚く、恐ろしく小さい家の中に、坐っているのである。だが、神様から、ここへ生れて出ろと、云われたのだから、「仕方がねえや」と、覚悟をしたが、その時から、貧乏には慣れている。
 私は五十年おふくろとつき合ってみたがまったく女というものはバカでこまるよ。そのバカなおふくろのおなかから生まれた私がどうしてバカでない道理があるものか? ザマア見ろ! てんだ。
 馬鹿な、馬鹿な! 貫一ほどの大馬鹿者が世界中を捜して何処に在る 僕はこれ程自分が大馬鹿とは、二十五歳の今日まで知……知……知らなかった。
 わっと泣き出して母にきつくかじりついた。母はそのまま立って子の顔を見ていたが「可笑しい子やないか、」と呟くと彼女の張り詰めた気力の糸が、ぶつりと切れたように、彼女はぐったりとなってしまった。やがてその手がばたり畳に落ちたと思うと、大いびきをかいて、その顔はさながら死人のようであった。
 これで自分と彼女との関係は一段落を告げた。三十六にもなって、子供も三人あって、あんなことを考えたかと思うと、馬鹿馬鹿しくなる。
 僕はその夕がた、あたまの労れを癒しに、井筒屋へ行った。それも、角の立たないようにわざと裏から行った。しかしそこで乃公(おれ)は人を殺してしまった…それも憎い仇ならまだしもであるが、普段から弟のように親しんでいる源三郎をみごとに殺してしまった。
 本屋の二階だった。二十歳の彼は書棚にかけた西洋風の梯子に登り、新らしい本を探していた。モオパスサン、ボオドレエル、ストリントベリイ、イブセン、ショウ、トルストイ、……今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。
 大きな箱入りの札目録を、こごんで一枚一枚調べてゆくと、いくらめくってもあとから新しい本の名が出てくる。小説が好きで、国に居る時分から軍記物や仇討物は耽読していたが、突然どこから起ったか分らない好奇心に駆られて、すぐその一頁を開いて初めから読み始めた。中には恐るべき話が書いてあった。

 議員がしたことは決して許される種類のものではありませんが、あれだけ真面目な性格でクヨクヨ反省している様子を見ますとちょっと気の毒にも思えてくるそんな心優しいボクCameLieOnですコンバンワ。──いまだに自分の名前が読めません。カメ・ライオンなのかカメラ・イオンなのかケムリー・オンなのかキャメル・イーオンなのかカメリェオンなのかウガンダ・トラなのか皆目見当がつきませんCameLieOnですコンバンワ。
 いいですねー武部幹事長。一体どんな政治家だったのでしょうか。100年前の資料をもとに調べてみますよ。「調べてみますよ」なんて生意気を言ってしまいましたが、ボクの手元にある資料は古本屋で売られていた100円の本。やたら分厚いくせに情報量が不足していますし、信用に足る資料なのかどうか定かではありません。値段も心もとないのですがなにしろ題名が『わくわく21世紀!! 手に取るようにあの日がわかるわい』なので不安は一層濃くなるばかりです。
 この本の「政治家列伝」の章を閲覧してみます。
 ぶぶ、ぶぶ。
 あれ?
 ぶぶ、ぶぶ…。
 無いな。
 ぶぶ、ぶぶ…。
 おかしいな、いないなぁ。
 すみません。武部さんは無名らしく、載っておりません。ああ、まいったな、記事が書けないや…。しょうがないので、竹内平蔵について書いてみればいいんではないでしょうか。いいんでしょう。
 たけうち、たけうち…。
 あ!
 武部、「た」の項にいたよ! なんでだよ、なんだよこの本。やはり、所詮は100円のクズ本であります。



「何? え? カメレオン? え? カメレオンぢゃないか。生きてるの?」
 思い掛けないものの出現に面喰って、私が矢継早やに聞くと、生徒は「ええ」と頷いて、顔を赭らめながら説明した。極めての大胆と全くの無神経とは時によって一致します。
「馬鹿だ、こいつは」
 この言葉を聞くとはっと胸がとどろいた。変にくすぐったい気持が街の上の私を微笑ませた。丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。
 不幸、短命にして病死しても、正岡子規君や清沢満之君のごとく、餓しても伯夷や杜少陵のごとく、凍死しても深草少将のごとく、溺死しても佐久間艇長のごとく、焚死しても快川国師のごとく、震死しても藤田東湖のごとくであれば、不自然の死も、かえって感嘆すべきではないか。
 「ドカン、ドカドカ、ドカーン」といったような不規則なリズムを刻んだ爆音がわずか二三秒間に完了して、そのあとに「ゴー」とちょうど雷鳴の反響のような余韻が二三秒ぐらい続き大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗いろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。争う色彩の尖影が、屈折しながら鏡面で衝撃した。一瞬ニシテ 全市街崩壊
 危険を冒して近寄ってみると、倒れているのは瘠せコケた中年男だが、全身紫色になった血まみれ姿だ。死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。それを見たらおれは口が利けなかった、男が泣くてえのはおかしいではないか、だから横町のじゃがたらに馬鹿にされるのだ。何もかもいやになりゆくこの気持よ。思い出しては煙草を吸うなり。
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。月日は百代の過客にして、行かう年も又旅人也。ポンポンポンポンと木魚の音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、大きな坊主頭がうつって動いていました。あはれなり。人の上に人をおきなというなら、これでよかったのだ。
 ああ俺はもう生きて居られなくなった。友よ俺が書き残そうとした事は以上の事である。どうぞ俺を哀れんでくれ。

 文書はここで終って居た。字体や内容から見ても自分は金子の正気を疑わざるを得なかった。






 かの森鴎外によれば「小説に説明をしてはならないのだそうだ」という事ですが、あまりにも意味不明な小説を突き付けられて面食らった読者も多いでしょうから、少し弁明させて下さい。
 盗作品、もとい当作品『阿蘭陀Language(オランダ・ランゲ)』は、テクノやブレイクビーツなどのクラブミュージックにおいて用いられる音楽方法論「サンプリング」を、文章芸術の世界にも援用してみようと試みた前衛作品です。
 著作権の切れた小説・随筆群から素材となる文を手当たり次第に抜き出して来、素材それ自体は未加工のまま恣意的に繋ぎ合わせて再構成しました。俎上に上った作品総数は実に53作品。『河童』と『土左日記』からの抜粋を少し改変した以外は、私は一字たりとも創作していません。
 私はこの作品を、題名や手法からも察せられる通り、パクリで有名な某アーティストへ捧げようと思います。



(ご託宣)
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<サンプリング元一覧>

 芥川龍之介『河童』
 森鴎外『百物語』/井原西鶴『三鉄輪』/Orange Range(『bounce』のインタビュー記事)/坂口安吾『風博士』/吉田兼好『徒然草』/紀貫之『土左日記』/有島武郎『小さき者へ』
 島崎藤村『新生』(「岸本君」~「黙していて済むことである。」)/近松秋江『別れたる妻に送る手紙』
 太宰治『人間失格』(「恥の多い生涯を送って来ました。」)/直木三十五『貧乏一期、二期、三期 わが落魄の記』
 辻潤『だだをこねる』
 尾崎紅葉『金色夜叉』
 宮本百合子『墓』/横光利一『父』(「母はそのまま立って」~「と呟くと」)/菊池寛『真珠夫人』(「彼女の張り詰めた」~「ぐったりとなってしまった。」)/国木田独歩『疲労』(「やがてその手が」~「死人のようであった。」)
 田山花袋『蒲団』
 岩野 泡鳴『耽溺』/西田幾多郎『絶対矛盾的自己同一』(「しかしそこで」)/海野十三『不思議なる空間断層』/岡本綺堂『鳥辺山心中』(「それも憎い仇」~「源三郎を」)/鈴木三重吉『古事記物語』
 芥川龍之介『或阿呆の一生』(「本屋の二階」~「トルストイ、……」)/岩波茂雄『読書子に寄す』
 夏目漱石『三四郎』/二葉亭四迷『平凡』(「小説が好きで」~「耽読していたが、」)/夏目漱石『彼岸過迄』
 Camelieon『22世紀日記』(「議員が」~「クズ本であります。」)
 中島敦『かめれおん日記』/中里介山『大菩薩峠』「甲源一刀流の巻」(「極めての大胆と」~「馬鹿だ、こいつは」)
 紫式部『源氏物語』与謝野晶子訳(「この言葉を聞くとはっと胸がとどろいた。」)/梶井基次郎『檸檬』
 幸徳秋水『死刑の前』
 寺田寅彦『小爆発二件』(「ドカン、ドカドカ、ドカーン」~「余韻が二三秒ぐらい続き」)/宮沢賢治『銀河鉄道の夜』/横光利一『ナポレオンと田虫』(「争う色彩の尖影が、屈折しながら鏡面で衝撃した。」)/原民喜『原爆被災時のノート』
 夢野久作『爆弾太平記』/堀辰雄『聖家族』(「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。」)/樋口一葉『たけくらべ』(「それを見たらおれは」~「馬鹿にされるのだ。」)/石川啄木『悲しき玩具』
 信濃前司行長『平家物語』/鴨長明『方丈記』/松尾芭蕉『おくのほそ道』/新美南吉『ごんぎつね』(「ポンポン」~「動いていました。」)/清少納言『枕草子』/福沢諭吉『学問のスヽメ』(「人の上に人を」)/作者不詳『竹取物語』(「おきなという」)/幸田露伴『鵞鳥』(「なら、これでよかったのだ。」)
 村山槐多『悪魔の舌』


ペットボトル(P助)   (2006/01/04)
その日、私が買ってきたのは一つのペットボトルだった。
500mlのそのボトルは無色透明で、中味はもとから入っていない。
そう、これから私がそれを詰めていくのだ。

薄暗い部屋のテーブルにそれを置き、私はコートを脱いでラフな部屋着に着替える。エアーコンディショナーから流れる空気は、常にこの部屋を最適な温度に保っていた。

小さなテーブルライトを付け、椅子に座る。
予め購入しておいたボトル詰めの材料を傍らに広げ、ペットボトルの蓋を厳かに開けると、私は静かに作業を始めた。

先ず詰めるべきは土。地面である。
これから家を建てることを考えなくてはならないから、固すぎず柔らかすぎず、適度な保水性を持ったものがいいだろう。
少々値は張ったが、十数キロ先から仕入れてきたこの土はとても満足のいくものだった。やはり全ての基礎は土台である。
封を空け、黒みがかった土をボトルの四分の一まで流し込み、少量の水を垂らして湿り気を持たせてやる。地味なことだがこれが中々に重要だ。土に水分を与えるという意味もあるが、この一滴の水が繋ぎとなって地面が締まり、土台としての強度を持つようになるのだ。

いくつかの種類の草花の種を蒔き、甘い果実が実る木と、丈夫だか加工しやすい木材の取れる木の苗を、長いピンセットで植え込む。数日もすればペットボトルの中は次第に鮮緑で覆われていくことだろう。

続いて水場の作成だ。
地面の一部に窪みを作り、そこに水を流し込む。
もちろんこの水も遠方から取り寄せた自然水だ。滅菌加工も行っていない。
そうして作った小さな池に、いくつかの種類の淡水魚の卵を撒く。
これも数日後には、元気にその池の中を泳ぎ回る稚魚たちの姿を、見ることが出来るようになるだろう。

私は時を忘れてペットボトルに中身を詰めていく。
そう、私はこの小さなボトルの中に、世界を作っているのだ。

ペットボトルはすべてを詰め終わった後、蓋をして密閉しなければならない。その為、この中では全ての生態系サイクルが滞りなくつながる事が必須条件となる。
雨が降り、池となり、土に染みこんだ水が次第に蒸発し、雲となりまた雨を降らせる。
生物もそうだ。草や果実を食した動物が死に、また、成長した木が朽ち果て、それを地中の微生物が分解し、新しい草木を育てる栄養となり、それを生まれてきた動物がまた食する。
全てのものは、この微妙なバランスとサイクルの中で生きている。
この中では上位も下位も強弱もない。どれか一つでも欠けたとしたら、それは一瞬にして崩壊するのだ。

しかし。
私たち人間は違った。

科学と言う名の魔法を手に入れ、神と等しい存在になった。
存在していたサイクルを破壊し、その上に新しいバランスを築き上げた。
もちろんそれは崩れないように科学の力で強引に支えている天秤だ。
地球の環境をどれだけ汚しても、人間は生き残った。

だがその果てはどうだ。
自然の自浄作用では到底追いつかないこの世界。
道端には人工的に光合成を行う造花が並び、全ての湖の傍らには延々と汚れた水を浄化し続ける水草型のポンプがおかれている。
そんな人工的なものの中で生きる事ができない動植物が一つ消え、二つ消え、今や天然種の生物はこの人間以外には、殆ど死滅してしまった。

私は、そんな呪われた世界と決別すべく、忌まわしき科学の力を行使している。

科学の力を借りて作ったミニチュアの樹木とミニチュアの生物たち。
そして科学の力を使い、全ての生態系サイクルが機能するよう計算され尽くしたこの小さな世界。


ここが私の、私だけの、新しい世界となるのだ。


私は生活に必要と思われる道具を中に入れていく。
小さなナイフ、斧、火打ち石、釣り竿、そして一枚の毛布。
そして、極小の人工太陽を中に浮かべ、蓋を閉めれば完成だ。

しかし、私の世界たるこのペットボトルの中に、私が存在しなければもちろん意味をなさない。だが、残念ながら万能であるはずの科学でも、私自身がこの中に入ることは許可してくれない。

この中に入るのは私の分身。
最後に取り出した小さな箱の中には、麻酔で眠らされた私の小さなクローンが入っている。
その箱をそっとペットボトルの中におくと、私は蓋をしめ封印を施した。
これで私のペットボトルは完成だ。

だが、私にはもう一つやらなければならない事がある。
この世の中に二人の私はいらない。
私は、最後に残った小瓶の中から青色の錠剤をとりだし、池を作った残りの水でそれを飲み込んだ。
ゆっくりと睡魔が私を襲う。数刻で私は死の世界への旅路につくだろう。
薬を使い安らかな最後を迎えられることもあるのかもしれないが、それ以上に、私が死んでも楽園に私が存在するという事実が恐怖を和らげる。
 
私の人生はここで終わるが、ここから始まると言っても良い。
私の分身たる彼は、あの中で豊かな緑に囲まれた素晴らしい生活を送るだろう。いや送るに違いない。
草木もなく動物もいない、機械に管理されるだけの外界とは正反対の楽園が、あの中には存在しているのだから。




◆新年あけましておめでとうございます。
ペットボトルいかがでしたでしょうか。面白いと感じたら是非下記バナーのクリックを
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P助

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