散文ブログ『ちりぶみ』
数名による持ち回り創作ブログ。4のつく日(4・14・24)更新。
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    主宰。企画/発案担当。
    え、それって口だけってこと!?(笑)


    大塚晩霜
    デザイン担当。ブログのレイアウトが悪いとすればコイツのせいなんだ。
    週刊とりぶみ


    ナチュレ
    [プロフィール作成中...]


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    沖縄出身ゴールデンルーキー

    某サークル六代目総長

    しがないサラリーマン
    ~順調にジョブチェンジ中!~
    (HP:気分は下克城!!
    See-Saa Night Fever!!


    こさめ
    万緑ソー中、紅一点!? 
    ココロに移りゆく何ごとか


    イシカワ マキ
    長野市在住。



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お前にくれてやる   (2005/11/24)
志米良ケンが交通事故に遭った。コミックバンド「ドリフトキングス」のメンバーとして、お笑い界の頂点に君臨した男だ。意識不明の重体だそうだ。
死ぬはずはない。志米良は最後の最後までギャグをかましてくれる男だから。
戦場へ行っても死ななかった。戦国時代も生き延びた。用をたしている最中にトイレが倒壊しても平気だった。家にパトカーが突っ込んでも笑って済ました。もちろん全部コントの中のことだが、そんな男が事故であっさり逝ってしまうなんて、あってはならない。
ニュースによると、志米良の乗っていた車に居眠り運転のトラックが突っ込んだらしい。志米良は仕事帰りだった。
俺の命をくれてやってもいいと思った。彼が死ねば国中が悲しむ。俺が死ねば、わずかの人間が泣くだけだ。
馬鹿なことを。そんなことできるわけが…。でも、もしできるのなら、俺の命を…。
後ろからクラクションの音。信号は青に変わっている。あわててアクセルを踏み込む。
ひどい事故だったのだろうか。本当に助かるだろうか。俺にできることはないけれど、助かってほしい。頭の中で事故現場を空想する。心配で運転に集中できない。気付いたら周りの景色が流れるのが速い。スピードをだし過ぎたのか? 交差点に近づく、信号が赤じゃないか。必死にブレーキを踏んだけれど、右から巨大なものが近づいてきて、車内は影に覆われて、全身を衝撃が走ったと思ったら、あたりは真っ暗になった。
なんだよ、俺もケンさんと同じ運命か。
死んだのかな。意識を失っただけ? あたりはとても静かだった。暗くて、ところどころに白い灯りが。
体は動くようだ。ここは? 
夜だ。夜の道路の脇で、街路灯をみながら、なんだかぼーっとしている。
交差点だ。俺の事故った…いや違う場所だ。知らない場所。でも、見覚えがある。ここは…。
「志米良ケンが事故を起こした場所だ」
背後からのその声に、びくっとなって、振り返る。
「ここは志米良ケンが事故を起こした交差点だよ」
黒い服のオッサンが立っている。
「オッサン、誰?」
「私か? まあ死神みたいなものだ」
「天本英世?」
「死神博士ではない!」
「じゃあ西村」
「なんだ西村って!」
「俳優の西村ナントカってのに似てるから」
「あんなハゲと一緒にするな!」
「オッサンもハゲてるじゃん」
「デコが広いと言ってもらいたい!」
なかなか、イジリ甲斐のあるオッサンだ。だけど、そんな事より…。
「聞きたいことがいろいろあるんだけど」
「やだ、お前には教えない」
「ケチケチしないでさ。ねえ、俺は事故に遭って、何、死んだわけ? ここ天国?」
「お前が行くのは地獄だろ」
「さっきケンさんが事故った交差点だって言ってたけど、確かに、ニュースで見た場所だよ」
「だからそう言っているだろう」
「つまり、それはその、よくわからないが、俺はとりあえず生きていて、ここはケンさんが事故った交差点なんだな」
「そうだ、正確には志米良ケンが事故に遭う交差点だ」
遭う、とはどういうことだ。
「私の仕事は、死者の魂をあの世に送り届けることだ」
そりゃ、死神だからな。妙に納得する。
「実は、今日一名死亡者が出る予定になっている。私はその魂を迎えに来たのだ」
「え、それって」
「志米良ケンだ」
そんな…。
「だが、助かる方法がある」
「どうするんだよ!」
「お前は志米良ケンの代わりに死んでも良いと思っているな」
「お、おう、大ファンだからな」
「そんなお前が、同じようなタイミングで事故に遭い、同じように死に瀕している。非常に珍しいケースだ。だから、選択の余地を与えてやる。志米良ケンが死ぬか、お前が代わりになるか」
言葉が、出なかった。確かに代わりになってもいいって思ったけど、だけど…。
「お前が決めるのは、志米良ケンが事故に遭うまでの間だ」
「ということは、今はケンさんが事故に遭った夜ということか?」
「そうだ、向こうにかすかに見えるヘッドライト、あれが志米良ケンの運転する車だ」
え、もう来てるのか。遠くにヘッドライトが見える。すぐ後ろをトラックがフラフラ走っている。
「衝突まで3分もない。早く決めろ」
上等だよ。ケンさんはお笑い界の王だよ。すでに神だよ。安いもんだよ俺の命で救えるならさ。
「俺はケンさんの代わりに…」
言葉が続かなかった。
「どうした?」
ケンさんの代わりに、死ぬ? 俺が…。そりゃ俺は、ケンさんみたいに有名人じゃないけどさ。
「どうするんだ?」
ヘッドライトが近づいて来る。早く言えよ。俺の命で助けるんじゃないのかよ。
「ケンさんの代わりに…」
言えない、どうしても。ケンさんは皆の人気者だけど、俺は人気者じゃないけど、俺のこと愛してくれる人も、少しだけどいるんだよ。その人のためにも、生きなきゃいけないんだよ。いや、そんなんじゃなくて、もっと単純に、死ぬのが、怖い。
車の音が聞こえてきた。死にたくねえよ。ケンさんだって死にたくないだろうけどさ、俺だって死にたくねえよ。俺は、俺は…。
だけど、ケンさんは死んじゃダメだ。そうだ。俺は力いっぱいに叫んだ。
「志米良!後ろ!」
声は、ケンさんには届かなかった。
重い衝撃音の後に、鼓膜を引き裂くような金属の摩擦音が続いた。
ケンさん、あんたはいつだってそうだ。セットが崩れてきた時も、いかりがはら長助が忍び寄ってきた時も、あんたの背後で便器から幽霊が出てきた時も、俺達は「志米良!後ろ!」と叫んだのに、あんたは決して振り返らなかった。だから、だから死んじまうんだよバカヤロー。
「身代わりになることはできなかったな。予定通り志米良ケンの魂を連れて行く」
「待ってくれよ。何とかならないのかよ。ケンさんは、皆が必要としてるんだよ」
「チャンスは与えたつもりだ。だが、お前はそれを生かさなかった」
「待ってくれよ西村。お願いだよ。ケンさんの魂持ってかないでくれよ。なあ、西村、助けてくれよ」
西村にすがりついた。
「私は西村じゃない」
そう言い残して、西村は煙のように消えた。
俺はグシャグシャになった車を見た。
「ケンさん、ごめん。ケンさん、ごめん」
ケンさんに申し訳なくて泣いた。自分の無力さに、自分の情け無さに、ただ泣いた。
泣いているうちに街路灯が消えたのか、意識を失ったのか、目の前が真っ暗になった。
悲しくて目が覚めた。病院のベッドだった。傍らで女房がうたた寝をしている。ずっとそばにいてくれたのだろうか。手を伸ばして、彼女の髪に触れると、目を覚ました。
「あなた?あなた?」
少しうなずく。
「あなた、私が分かる?」
笑顔でうなずく。
「よかった。一時はどうなることかと思ったんだよ。だけど本当によかった」
女房はうれし涙を流していた。俺が流している涙は、うれし涙とは違うけど。いや、うれし涙も流れてるかな。
ケンさんを助けることのできなかった俺だけど、ケンさんに捧げることを躊躇したこの命だけど、お前の命と、俺の命、どちらをとるかを言われたら、今度こそ迷いなく俺の命を捧げる方を選択できる。俺の命は、お前にだったらくれてやってもいいと思ってる。ほんとに、そう思ってるんだ。
ケンさん、あなたはもう死んでしまったのだろうけど、あなたのギャグは永遠に生き続ける。生きている俺達は、あなたのギャグを真似し続けるから。女房を喜ばすために、さっそく使わせてもらうよ。
俺はあごの下に手を持っていって、力いっぱいに叫んだ。
「アヰーン」
女房は笑ってくれるかと思ったけど、驚いて目を丸くしていた。そして病室を飛び出して、医者を連れてきてこう言った。
「先生、主人が目を覚ましました。だけど、変なんです。主人が、主人が変なおじさんになっちゃったんです」
それを聞いたらおかしくて、ふき出してしまった。そして、ケンさんのことを思い出して、涙がたくさんこぼれた。



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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学


F-A-M-I-L-Y   (2005/11/14)
Every families have some problems
As nobody don't have any troubles
すべての家庭は何らかの問題をかかえている
悩みの無い人間が居ないように

──ドーヴ・レノメ「ドーヴ・レノメ詩集」より


この作品をモンティ・パイソンに捧ぐ。──大塚晩霜

それから、私の大事な友人たち、P助・ナチュレ・仁礼小一郎・こさめ・イシカワマキ・カーチス・セガール・ラークマイルドに愛をこめて。──大塚晩霜

<一口メモ:モンティ・パイソンとは?>
 1970年前後に活躍したコメディアン集団。イギリス国営放送(BBC)にて伝説のコント番組『Monty Python's Flying Circus』(邦題:空飛ぶモンティ・パイソン)を制作。不謹慎極まりないブラックジョーク・非常識にもほどがあるナンセンスなギャグによってお笑い界に革命を起こす。
 スケッチ(=コント)群を連想形式で連鎖させる独自の手法により、笑いは怒濤のように押し寄せ、息つくヒマを視聴者に与えず、嫌がらせとも言えるほどの圧倒的なスピード感で膀胱に迫ってくる。また、つなげるのが困難なスケッチをシュールかつグロテスクなアニメで飛躍的にリンクさせる強引な手口も見逃せない。──『Completely British』編集長・桜田ミリア

この作品は、モンティ・パイソンのそんな手法を踏襲している。──大塚晩霜

モンティ・パイソンのスケッチのひとつがこちらでご覧いただけます。──スパム業者

【劇場予告】
ナチュレ最新作(タイトル未定)、11月24日、堂々ロードショー!──散文ブログ『ちりぶみ』

本編がなかなか始まらないのもモンティ・パイソンのお家芸である。──大塚晩霜

なお、冒頭の『ドーヴ・レノメ詩集』というのは、まったくのでっちあげ,架空の書物名である。──大塚晩霜

この作品をモンティ・パイソンに捧ぐ。──大塚晩霜

読者「なんでもいいから、早く始めろ!」
読者「そうだそうだ!」


【奥付】
著者   大塚晩霜
英語訳者 大塚晩霜
大根役者 大塚晩霜(ドーヴ・レノメ/桜田ミリア役)
発行者  大塚晩霜





「こりゃひどいな」
「うん。おどろいちゃった」
 古い民家の和室である。砂ぼこりで真っ白に汚れた畳の上に花ビンと鍋が転がっている。障子は破れ、漆喰塗りの壁は剥がれている。黒ずんだ天井には蜘蛛の巣が張っている。しかし巣に蜘蛛はいない。この家に人の棲んでいる気配は無い。
「見て」
 女の指差した先には一本の大黒柱。柱には横線が刻まれ、それに付随する日付が記されていた。「昭和49年ユウイチ5歳」「昭和53年ユウイチ9歳」「昭和57年みちこ12歳」などと彫られている。
「たけくらべだね。わたしはやったことないからどんな気持ちだかわかんない。でも、とってもすてきな事だと思う。子どもは自分がどれくらいグングン成長しているか知らないから。毎年毎年、柱のキズが上の方に移動していくの、うれしい驚きを感じただろうな」
 連れの男は顔をしかめた。
「こんなもん、貧乏人のすることさ」
「どうして?」
「柱が傷ついても構わない、つまり粗末な家だってこった。立派な家だったらキズなんかつけるもんか。ずっと残ってしまうのに」
 女は悲しそうな表情で男を見つめた。
「それに、こういうバカげた行為にしか娯楽を見出せないほど、苦しい生活を送っていたんだろ」


<おわび>
「モンティ・パイソンに捧ぐ」と献辞を掲げておきながら、なんだか湿っぽい話になってしまいました。差別発言をした彼には責任を取って作品から降板してもらいます。
 (銃声)
地上から解雇しました。お星様になあれ。


【昭和49年ユウイチ5歳】
 ぼくの パパは、人には いえない しごとを している。
「パパー。うしろ とおるよー」
「ん? ああ、とおりなさい。だけどね、けっして たちどまっては ダメだよ?」
「わかってるってばー」
 ほしの きれいな よるには。
「パパ、あれが いてざだね」
「そうだ。パパの せいざだ」
「え、パパって ボクと おなじ おとめざだろ?」
「そうだっけ。そうだ、そうだった」
 ぼうえんきょうを のぞく ぼくの となりに パパは しっかり よりそって くれていて、かたときも はなれずに いてくれる。ぼくは パパが 大すきだ。ずっと、ずっとずっと いっしょだい。
「パパー。あのほし、あれ、わかるかな。オレンジいろの ちっちゃいやつ」
「んー? あー、あれかぁ。あれは アルビレオだよ。白ちょうざの 三とうせいだ」
「じゃーあれは?」
「ああ、デネブだ」
「デブ?」
「ちがうよ」
 ぼうえんきょうを のぞく ぼくの となりで、スナイパーライフルの スコープを のぞく パパ。
 ぼくの パパは、人には いえない しごとを している。


【Godfather / Goodfather】(名付け親/よいお父さん)
 私とユウイチは海岸へ遊びに出かけた。電車に乗り、近くの海まで足を伸ばす算段である。
 道すがら、ユウイチは子どもらしい素朴な発想で私を喜ばせた。車内放送を聞けば「パパー、電車がしゃべってるよ」と想像力ゆたかな報告をし、信号を見れば「なんで自動車はあんなライトに良いようにあやつられてるの?」と首をかしげる。そのひとつひとつの率直な感性に対し、私は優しく、夢を壊さないように、心を砕いて受け答えをしてあげた。
 やがて海が見えてきた。波の音が大きくなるに連れてユウイチの笑顔は明るさを増していく。まぶしいくらいだ。そうして、砂浜に着いた時の、彼の喜びようったら! こっちまでウキウキしてしまう。
 私たちは海岸の散策を始めた。打ち寄せる波の他に動く物の無い静かな世界。太陽・雲・灯台・岩礁。ユウイチは好奇心の目をあちこちに注ぐのに夢中で忙しそうだ。無言のまま砂を撫でたり波打ち際を走ったりしている。
 ユウイチがようやくしゃべったのは、岩場に落ちている1円玉を見つけた時だった。そのアルミニウム硬貨はさざ波に洗われ、水泡の吹き出したような傷が表面全体に浮かんでいた。
「落とし物だね。警察に届けなきゃ」
 すなおで正直な意見が私にはうれしかった。けれども私は、こう勧めた。「いいや、これはおまえが持っていなさい。お金を拾ったら本当は届けなきゃいけないんだけどね。ふたりだけのナイショだ」
 ユウイチはキョトンとした。「どうして? こんな汚い1円玉だし、ぼくいらないや」
 私はニッコリとほほえみ、やさしく諭した。「この1円玉、どうしてこんなにボロボロなのか想像してごらん。この海岸で誰かが落としたのかも知れない。でも、もしかしたら、長いあいだ海をただよっていて、つい最近流れ着いたのかも知れない。ひょっとしてひょっとすると、流れ流れて遠い外国までたどりついたかも知れないよ? そうしてまた、流れ流れて戻ってきたんだ。この1円玉は世界を旅してきた1円玉かも知れない。とするとこれは宝物だよ」
 ユウイチは想像力をかきたてられたようだった。「うん! ぼくこれ大事にするね!」
 帰りの電車内、彼は気味の悪い笑いを浮かべながら1円玉をじっと見つめていた。


<ホッと一息豆知識コーナー:土左衛門の語源>
 水死体を「土左衛門」と呼ぶ事があります。これは江戸時代に生まれた言葉です。青白く膨れ上がった水死体の姿を当時の力士「成瀬川土左衛門」になぞらえて表現した語でした。
 人は溺死するとデブになります。そうしてひどく臭います。という事は、「土左衛門」を現代語に置き換えるなら「アキバ系」となりましょうか。
 生前のスタイリッシュな姿を人々の胸にとどめるためには、ホトケが二度と浮かんでこないように工夫しましょう。セメント製の靴を履かせて深海の底にスキューバダイビングさせるのがおすすめ。


The ecosystem consists of the balance of exquisiteness.
Just same about family-tree...
He passed away. R.I.P.



<ホッと一息豆知識コーナー:カブトムシ虫相撲トレーニング法>
 カブトムシには筋肉がつかない。だから、負荷をかけて鍛えるなどというトレーニングは全く効果がありません。人間が行なっているような訓練を実施しても体力・生命力・寿命を消耗させるだけです。
 カブトムシを強くするにはイメージトレーニングが有効です。カブトムシの模型などを用い、練習試合を経験させましょう。そして必ず、模型のカブトムシが負けるようにして下さい。自信をつけさせるため、勝ちに慣れさせるのです。


【昭和53年ユウイチ9歳】
「なるほど。これは我が子のしつけにも応用できるのではないか?」
 父は雑誌を手の甲でパシッと叩き、鼻から息をプスーッと吹いた。
「よーし、相撲だ!」
 なかなか打ち解けてくれない息子とスキンシップをはかるため、和室で相撲を取る事にした。息子の方は相撲なんてしたくなかったが、父が是非にと言うので仕方なく付き合ってやった。
「さー来い! ドンと来い! どすこい!」
 息子は気恥ずかしさを感じながら、父の胸めがけて頭から飛び込んで行った。
「む! なかなかやるな! クッ、強い。力あるなっ!」
 息子は父をグイグイ押しまくる。靴下をはいた父の足は畳の上をすべり、土俵際として定めた床間まで押し出された。床間に飾ってあった花瓶が倒れた。
「すごいじゃないか」
 息子は照れくさそうに、しかし嬉しそうに笑った。
「よっしゃもう1番。今度は本気を出すよ!」
 そう言うなり父は息子に力強くぶちかましを浴びせ、あろうことか子ども相手に大人げない突っ張りをお見舞いする。意表を突くビンタ。ひっぱたかれて発熱するほっぺた。息子はびっくりして一瞬たじろいだが、すぐに闘争心を再燃させ、半ベソでムキになりながら父を押し倒した。
「うわっ、まいったまいった。降参だ」
 それはヘタクソな演技だった。が、涙目の息子は芝居と気づかず達成感に興奮した。
「ぼくは強いんダー」
 すっかり自信をつけた息子は今度は自分から相撲を取りたがった。活き活きとした息子の様子を見て父は満足した。何度試合をしても、すんでの所でわざと負けてやった。
 正午を報知するチャイムが鳴った。
「そろそろおしまいにしてゴハンを食べましょう。──ユウイチくん。きみは強いぞ」


【Kiddy Kid】(ふざけたガキ)
 昼休みの時間。相撲を取ろうと友人たちに持ちかけた。負ける気がしない。自分より身体の大きいお父さんを何度も土俵外まで押しやり、時には投げ倒したほどのパワーだ。腕っぷしの強さをみんなに見せつけて驚かせてやる。ぼくの勇姿、美由ちゃん見ててくれるかな?
 しかし結果は、えがいた青写真とは全く逆の物。競争社会は残酷だ。初戦の相手マサハルくんにボロ負けを喫した。「こんなはずはない、まぐれ勝ちされただけだ。ぼくは強い。本当に強い」お父さんのほめて伸ばす教育の感化をもろに受けたぼくは、納得せず何度も何度も立ち向かった。結果は同じだった。悪い夢を見ているようだった。相手を変えてもほとんど勝てない。顔面蒼白、あまりにも絶望的な顔をして再戦を挑み続けるものだから、同情した友達のひとりがバレバレの八百長試合でわざと負けてくれたぐらいだった。もちろんぼくは、そんな勝ちでは納得できない。もう、何がなんだか、わけがわからなくなって、思わずヒステリックな奇声を発して周囲を驚かせてしまった。やりきれない怒りで頭の中が爆ぜそうだった。美由ちゃんが見ていた。
 ぼくは自信をすっかり喪失した。途方もない挫折感。得意の絶頂から絶望の淵へ転げ落ちてしまった。それだけではない。挫折感だけならまだ良かったが、悪いことに、父を弱者として軽蔑し始めてしまった。
「うちのオヤジは小学生よりも劣ってるのかよ」


この作品はいかがですか?
ここまでの内容で少しでも面白く思って下さったなら、
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これから先が面白いかどうか、保証は出来ませんので…





【Mammal Mamma】(哺乳類ママ)
 母の愛は無限大なり。
「学校の時計はアナログ時計のようですわね。息子はアナログ時計が読めません。デジタル時計に換えていただけませんでしょうか」
「ピーマンが苦手なので給食はうな重にしてもらえないでしょうか」
「クラスのマサハルくんとケンカしたそうです。マサハルくんが全面的にいけないそうです。叱って下さい」
「成績が悪いのは先生のせいだと申しております。辞職して下さい」
 母の愛は無限大なり。


【Fatter Father】(まんまる父さん)
 つい先日リストラされたダメオヤジが、ヒマにかこつけて変な事を妹に吹き込んでいる。
「…まさしくその通りなんだよ」
「えー? 魔法ってホントにあるのぉ?」
「あるよ。美千子ちゃんだって、もっとおっきくなったら使えるかも知れない」
「ウソーッ」
「ウソじゃない、ウソじゃないよ。超能力をごらん。才能さえあれば、訓練次第で不思議な力が使えるようになるのさ。そういう才能が、美千子ちゃんにもあるかもよ?」
「ホントー?」
「ホントホント。いつか突然魔法を使えるようになるかもね。自分の可能性を信じるんだ」
 魔法や超常現象の存在について力説している。子どもはもう信じてないのに。
「インドには不老長寿の秘法を体得した賢者がいっぱい居るって話。俗世間から離れて山の奥深くで瞑想してるんだって。中には生物の常識を超越しちゃって、食事も採らず水も飲まず,そして排泄もしないのに,何十年も元気な老人が暮らしてるんだってさ。お父さんも、不老長寿、目指してみる。神秘的な力っていうのは、この世にきっと存在するんだから」


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 この香水をつければオトコは群がってくる、そりゃもー樹液に集まるムシのようにワラワラ寄って来る( *^-^)(^0^* ) だ・け・ど、前頭葉が発達しているからって頭が良いとは限らないんだってばよオイ( 。・_・。) それにね、頭のよさげな人ゲットできても、それだけでうまくいくとは限らないじゃん?( ̄~ ̄;) ブサイクは論外。将来ノーベル賞受賞まちがいなしの天才クンだとしても、ブサイクだったらコノヤロウ、門前払い! ( -_-)=○)°O°) 頭脳明晰あーんどハンサミングな男子でも、内気な性格じゃ会話が弾まないよね(;´д` ) おーらる・こみゅにけーしょんオラオラできなきゃ恋愛関係は発展しない(>へ<) 発 展 し な い!!(>へ<;) 
 で、なんだかんだゆーてる間にひとりのオトコから声をかけられたんだけど。すげーね、なんていうかね、いや、いいんだけどさ…(´ヘ`;) 一言で言うと、「バカ」そうなんだよね…ヽ(  ̄д ̄;)ノ  テンションまじ高いってゆーか、なんてゆーか、なんかすっげー子どもなの(;´_`;) いや、魔法の香水は前頭葉の発達したオトコをチャーミングする成分配合だから、この人も脳みそデッカイっちゃデッカイんだろうけど。でも、頭がいいか悪いか謎なんだよね…(--; ただ脳みそデカイだけで、中身は腐ってるKAMO!?(≧ロ≦)
 当たりかハズレかわからにゃい…( ̄~ ̄;) お金もちゃんと持ってるのかなぁ? でも、とりあえず顔は良いからオッケーすっかー。うん、そうしようそうしよーヽ(´ー`)ノ


<休憩時間>
 これより15分間を休憩タイムとします。ご自由に席を立って構いません。トイレに行く人は今のうちに。トイレの個室を使う人・人々は、それぞれお早めに済ませて来て下さい。


【Heroin Heroine】(薬物中毒のヒロイン)
 彼女はすばらしく端正な顔立ちをしていた。それは彼女自身も自覚していたし、周りは褒めそやすし、横山やすし、怒るでしかし、ゆるがせに出来ない事実だった。
 彼女はその美貌を生かしてスーパーアイドルに成りたかった。歌って踊れるアイドルに。バラエティー番組に出演したり、CDを発売してメガヒットを飛ばしたり、コンサートを催して5万人を越すファンを動員したり。
 もしくは本格女優に成りたかった。舞台で独壇場に臨んだり、テレビドラマの主役に抜擢されたり、映画での演技が評価されて賞を受賞したり。
 しかし自分から売り込みはしない。誰かが自分の才能を発見してくれるのを待っている。これだけの器量だもの、噂が自動的に芸能プロダクションまで届くはずだ。自分からオーディションに応募するなんて野暮なマネはしない。末は大物女優になるはずなんだから、そんな恥ずかしい事したらキャリアに傷が付く。ガッついてると思われたくない。オファーが来るその時を待つ。
 そんな彼女だが、実は今年でもう35歳。下の子は中学校に入学した。白馬に乗ったスカウトマンは、まだ来ない。


【Chilled Child】(冷酷な子ども)
「家族を殺してやりたい」
 すべての家庭は何らかの問題をかかえている──家庭内暴力・ドメスティックバイオレンス・幼児虐待。子どもの成績不振・受験・浪人・留年、非行・放蕩息子の帰還、ひきこもり・フリーター・ニート。夫婦の不仲・夫婦ゲンカ・セックスレス・不倫・家族計画・近親相姦・中絶・離婚調停・嫁さん実家に帰っちゃったよ・コレがコレでさあ・結婚詐欺・出戻り。洗脳・妄信・出家。徘徊老人・認知症・寝たきり・危篤・介護・葬式・相続争い。事業失敗・失業・無職・借金・夜逃げ・一家心中。自殺、人殺し──すべての家庭は何らかの問題をかかえている。悩みの無い人間が居ないように。
 我が家の問題は三つ。
 まず妹の美千子。中学校に上がった途端にさっそく売春に走り始めやがった。しかもあろう事か、初めて引っかけた男は性格最悪・頭の良い詐欺師だった。散々乱暴されて捨てられて帰ってきた。自業自得だ。
 次におふくろ。いい年こいてまだ夢を見てやがる。白い粉で夢見ごこち。現実と非現実をちゃんと区別しろっての。たまには掃除した方がいいぞ。鏡のよごれを拭き取ったらどうだ。
 そして最後にこの俺。家族を殺してやりたいって思っちゃあ、人間として終わってるよな?
 もうたくさんだ。DNAの鎖が俺を腐らせる。引きちぎれれば自由になれるのに! 持て余す家族の絆。こいつら、自分と血がつながってなきゃ良かったのにな。血縁関係じゃなかったら単なるゴミクズだぜ。精神病。精神病。精神病!


(これからユウイチくんは衣装替えをします。衣装替えが終わるまで録画テープでお楽しみ下さい)


【M⊿D(Mom, Daughter, Dad)】(母娘父のトライアングル)
Diar ダーリン
 (注:「Diar」は正しくは「Dear」)

なんだか、あらたまって手紙を書くなんて、テレくしゃいにぇ…。ミーです☆。
 (注:この「ミー」とは“me”を意味するのではないらしい。
  どうやらこの手紙を書いた女性の愛称か何かのようである)

ダーリン、愛してるヨ。ダーリン、好きだっちゃ。
 (注:うる星やつら?)
これからもよろしくピョン。いっぱいかわいがって~(ラブ・ラブ!だね!)
ステキな思い出たくさん作っていこうね。しあわせにしてね。しあわせになろうね。

ミカタンも好きです。ダーリンそっくりだし。
 (注:ミカタンとは、彼らの子どもの名前。たぶん女の子)
ダーリンを愛してるから、ミカタンもかわいくってしょうがないの~。
ダーリンの子どもだもん。ダーリンの血が流れてるんだもん。
ダーリンとおんなじくらい、ミーはミカタンのこと好きだよ☆

それに、ミカタンにはミーの血も混ざってるしね!
だから…っていうのもあるよねきっと。自分を好きじゃない人なんて、いないもんね。

ダーリンもミーのこと愛してゆ…?
じゃあ、ミカタンもおんなじくらい好きだよね!
ミカタンには、ミーのいでんしが入ってるもん。
ミカタン、パパに愛されて、しあわせもんだなこいつぅ。なんてね、あは♪

ミカタンはミカタンで、パパにも、ママにも、よくなつくね。
だって、ミカタンの中を流れるミーの血はダーリンが好きだし、
ミカタンの中を流れるダーリンの血はミーが好きだもの。当然だよね。

これからもずっと…。ミーはダーリンのこと愛してる。ミカタンも愛してる。
ミーはミーのこと好き。ミーは、家族3人、みんな好き。
ミーは、ダーリンも、ミカタンも、ミーのことも、おんなじくらい好き…。
From ミー


(お待たせしました。ユウイチくんの衣替えが済みました。引き続き本編でお楽しみ下さい)


【F-A-M-I-L-Y】(Father And Mother, I Love You)
 妻と訪れた旧宅。柱に刻まれた成長の記録を見て、これはお父さんたちが彫ってくれた物だと思い出した。
 俺の最初のお父さん、つまり本当のお父さんは、ある日突然いなくなった。どこに行ったのかお母さんに尋ねても、うやむやに交わして教えてくれない。たぶん、話したくないのだろう。俺も無理には聞こうとしなかった。このお父さんのことを、今はあんまり覚えていない。
 2番目のお父さんは動物の生態に関する雑誌を読むのが好きだった。ある日「全ての哺乳類は、一生のうちに、心臓を20億回鼓動させる。ゾウはゆっくりした脈拍なので寿命が長く、ネズミはせっかちな脈拍なので寿命が短い」という記事を読んで以来、「心拍数を少なくすれば長生きできるのではないか」と思い込んでしまい、心臓の動きを遅くするトレーニングに励んだ。苦労の末、彼の脈拍は次第に減っていった。そうしてしまいに止まってしまった。その結果死んでしまった。──魔法は存在すると言い張っていた彼は、子どものための気休めのウソを言ってたんじゃなかったんだ。
 うちの家庭がおかしくなったのは、父親が不在になったからかも知れない。俺にとっては女性ばかりの家族。家系──家族の木は、一本でも枝が抜けるとバランスが崩れる。
 俺は、平和そうにしている人々を見るのが大好きだ。幸せそうな家族──楽しそうな親子や仲の良い夫婦、そして、普通の人が顔をしかめるバカップルまで。
 世の中のすべての人が、幸せな日々を送るべきなんだ。残念ながら、子供時代の俺にはそれが出来なかったけど。俺は、妻や娘に、俺と俺の家族と同じような思いはさせたくない。
 柱のキズをさすりながら、ラストにふさわしい“もっともらしいキレイゴト”をでっちあげつつ、俺は俺の家族を全身全霊を傾けて守ろうと誓った。


【スタッフロール】
脚本  大塚晩霜
監督  大塚晩霜
編集  大塚晩霜(←コイツがいけないんです。今回の作品の完成度が低い一番の原因です。ロッテが優勝したのを良いことに遊びほうけやがって!)


【Familiar Family】(DVD映像特典:未公開シーン)
「こりゃひどいな」
「うん。おどろいちゃった」
 古い民家の和室のセットである。舞台美術係がビニール製の畳に白砂をこすりつけている。かたわらには古めかしい彩色を施した新品の花ビンと鍋。小道具倉庫から選んで持ってきた。
「見て」
 女の指差した先には一冊の台本。台本にはセリフや動きが記され、「女、悲しそうな表情で男を見つめる」などの卜書きが印刷されている。
「クソ食らえだね。こんなヒドイ脚本と演出、初めてだよ」女は悲しそうな表情で台本を見つめた。「わたし、演じきれるかなぁ…。ちょっと不安」
「本当だな。俺たちの出番は導入の数分だけ。カメオ出演? しかたない、チャチャッと終わらせてさっさと帰ろう」
「ちょっと。あなた、死んじゃうみたいよ?」
「え、なんで。ほんの数分の出演だし、そんな危険な場面じゃないぜ?」
「ここの行を読んでみて。“差別発言をした彼には責任を取って作品から降板してもらいます。かっこ銃声かっことじる。…地上から解雇しました。お星様になあれ。”ですって」
「うわあひどいな。ストーリーの流れも何もあったもんじゃない」
「本編始まる前にいったん終わっちゃうみたいだし」
「この作品をクソと呼ばずに何をクソと呼ぶ? まだ本番前だけど、失敗作になるのは目に見えてるよ」

カーット! 本物のダイナマイト使うぞこらー!


適正   (2005/11/04)
「それでは今日は皆さんに『適正テスト』を受けて頂きます。」
楽しくさえずる小鳥のように美しい声に目を覚ますと、僕は真っ白な机の置かれた、そして真っ白な壁に四方を囲まれた小さな部屋の中にいた。

30cmほどの彼女は鮮やかな若草色のスーツに身を包み、その白い机の上に立っていた。
――まるで雪中から芽吹くフキノトウのようだ――などと見たこともない光景を僕は思い描く。

白い壁と家具は、これから行われる『適正テスト』に影響を与えないよう配慮されたもので、彼女の若草色の服と表情そして声のトーンは、僕らの緊張を解すために特別に調整されたものなのだそうだ。
そう、彼女はコンピュータが作り出した仮想人格、仮想人間だ。
とはいえ、注視してもそれは僕らとなんら区別はつかない。完璧過ぎて機械的という欠点すらない。ほんの少し声のトーンにゆらぎを持たせたりして人間味を出すよう厳密なプログラムがされているらしい。

彼女はその素晴らしい声で、滔々と『適正テスト』の説明を始める。
・問題は二者択一。
・問題数は1000問。
・回答時間は1問3秒。
・途中200問毎に3分の休憩を挟む。
・全問回答必須。回答し損ねた問題数の分、追加問題を行う。

要約すればそんなところだ。
時間にして約1時間といったところだろうか。
この1時間で僕の未来が決定する。
職業だけではない。住むべき場所、生活スタイル、友人、家族、結婚相手…。

時は22世紀。
過去の人間が見たら楽園だと言うに違いない。
この世界は3台のコンピュータが全てを支配し決定している。
森羅万象全てが公平に判断され、戦争も差別も国家も過去の遺物となった。
まさに人類の英知の結晶と言って良いだろう。
そのコンピュータが考え出し、始まったのがこの『適正テスト』だ。
社会不適合者と見なされれば『教育』の延長もあるらしいが、素晴らしい『教育』を受けている僕達からは、そんな者はでるはずがない。

テストが始まった。
純白の机上に文字が書き出されていく。

第一問『あなたは赤色が好きですか?』
…NO
僕は机上のボタンを押す。

第二問『目の前に階段があります。あなたは上りますか?』
…YES
僕は机上のボタンを押す。

第三問『あなたは左右どちらの道を進みますか?』
…右
僕は机上のボタンを押す。

最初は簡単な心理テストのような質問が続く。

第二百十七問『あなたは車が好きですか?』
第三百五十二問『あなたは物語を書くことに興味がありますか?』
第六百九十問『あなたは妻を必要としますか?』
続いて具体的な好みに対する質問。

最後の百問は、果たしてそれが絵なのかどうかすらわからないものを見せられ、YES/NOを問われる抽象的なものだった。

そして答え損ねた十五問分の問題を追加で回答しテストは終了した。
机上に彼女が現れ、にこやかな笑顔とともに「おつかれさまでした」と軽く頭を下げる。
そして結果が出るまで15分ほどお待ちくださいと告げ、彼女は姿を消した。

これで僕の将来が決定するのか。
少し緊張してきた。
いったいどんな人生になるのだろうか。
様々な想像、空想が頭を駆け巡る。
しかし、もうすぐその答えが、目の前に提示されるのだ。

結果が出た。

おお、僕は画家になり、K子という女と結婚するそうだ。
絵はそこそこに売れ、どうやら死後には爆発的な人気を誇るらしい。
その他色々とあるが、まぁ割愛させて貰おう。
そろそろ忙しくなる時間だ。

これから母となるべき人の胎内に移植され、産まれ出る準備をしなければいけない。
あと二週間もすれば、幸福という名のレールが引かれた楽園に産み落とされる。
レールの通り走っていけば、幸せになれるのだ。これほど楽なことはあるまい。

さて、ではそれまで一寝入りさせてもらうとするかな。
僕は体を丸める。
200本のコードが繋ぐガラス張りの我が家の中で、僕は健やかに眠りに落ちていった。





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P助

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学



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